西村宏堂、現代美術家として初個展。「Cells - 細胞 -」が問いかける“つながり”

僧侶であり、メイクアップアーティストであり、LGBTQ活動家でもある西村宏堂さんが、現代美術家として初の個展を開きます。SELENE ART MEDIA株式会社の発表によると、約150点の作品が並ぶ展覧会「Cells - 細胞 -」が、2026年8月に伊勢丹新宿店にて入場無料で開催されます。

講演やメイクの先にあった画布

西村宏堂という名前を聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、僧衣姿でメイクを施すあの独特のビジュアルかもしれません。ニューヨークのパーソンズ美術大学を卒業し、メイクアップアーティストとして活動する一方で、2015年に浄土宗の僧侶となった人物。2021年にはTIME誌の「次世代リーダー」に選出され、2022年のNHK紅白歌合戦では審査員も務めています。著書『正々堂々 私が好きな私で生きていいんだ』は9カ国語で出版されるなど、その活動の幅はとにかく広い。

そんな西村さんが、なぜ今「現代美術」なのか。

本人は展覧会に寄せたメッセージの中で、幼少期からの孤独や葛藤、LGBTQ+当事者としての経験、僧侶として学んだ仏教の教え、国連人口基金本部やハーバード大学など世界各地での対話——それらすべてが重なり合った先に、「現代美術という表現に辿り着いた」と語っています。講演やメイクという「人と直接向き合う」表現を続けてきた人が、キャンバスの前に立つ。その転換には、言葉や化粧では届かない何かに手を伸ばそうとする切実さがにじんでいる気がしてなりません。

細胞、蓮、月——肯定を託す5つの絵

展示作品は5つのシリーズで構成されています。展覧会タイトルにもなっている「Cells(細胞)シリーズ」は、人間の身体を構成する最小単位である細胞を、互いに影響し合いながら生きる一人ひとりの象徴として描いたもの。「みんな繋がっている」というテーマが掲げられています。

仏教の極楽浄土に咲く青・黄・赤・白の蓮を多様性の象徴として描く「蓮の花シリーズ」、身分や立場に関係なくすべての人を照らす月の光をモチーフにした「月シリーズ」。さらに、幼少期の孤独から生まれた想像上の友達を描く「魚シリーズ」、異なる形のピースが互いを補い合う社会を表現する「パズルシリーズ」と続きます。

どのシリーズにも共通しているのは、「あなたはここにいていい」という肯定のメッセージです。ただ、それを声高に叫ぶのではなく、細胞や蓮や月といった自然のモチーフに託しているところに、僧侶としての思想が静かに息づいているように感じます。

「人を愛することは自分を愛すること」

西村さんは「政治・宗教・価値観の違いによる分断が深まる現代社会において、私たちは本来つながっている存在であることを思い出したい」と述べています。そして、「人を愛することは、自分を愛することなのかもしれません」とも。

この言葉を読んで、ふと考えました。私たちは日々、SNSのタイムラインで「分断」を目にしています。意見の違う誰かを遠ざけ、同じ考えの人とだけ固まる。それは楽だけれど、どこかで息苦しさも感じている——そんな人は少なくないのではないでしょうか。

「心に何か小さな変化が生まれたなら、それこそが私にとってのアート」。西村さんのこの一言が、約150点の絵の前に立ったとき、どんなふうに響くのか。新宿の百貨店で「説法」を聴くという、ちょっと不思議な夏の体験が待っています。

KODO NISHIMURA ART EXHIBITION「Cells - 細胞 -」

【会期】2026年8月5日(水)〜8月11日(火・祝)
【会場】伊勢丹新宿店 本館6階 催物場
【入場料】無料
【展示点数】約150点(展示・販売)
【トークイベント「アート×説法」】8月8日(土)・9日(日)各日定員40名(事前抽選制)
【主催】SELENE ART MEDIA株式会社

Top image: © SELENE ART MEDIA株式会社
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