万博で終わらなかった未来。「いのちの未来+」が東京で問い直す、人間とAIのこれから
万博パビリオンは、会期が終われば消える——そんな常識を覆す展示が東京でスタート。ATRいのちの未来研究所、MoN Takanawa、パルコの3者が主催する体験型展示「いのちの未来+」の概要が発表されました。
「解体される祝祭」を覆すアンドロイドたち


万博のパビリオンといえば、会期が終われば解体される一回限りの祝祭装置——というのが、これまでの常識でした。ところが石黒浩氏(大阪大学教授)が監修した「いのちの未来」は、その前提をあっさり覆してきます。
万博版で来場者を魅了したアンドロイドたちが、そのまま東京へやってくるのです。約60カ所の可動箇所を持つアバターアンドロイド「ヤマトロイド」、1000年以上先の人類の姿を体現する「モモ」——全身シリコンスキンで浮遊するように動くその存在感は、映像では絶対に伝わらない類のものでしょう。
しかも、単なる再演ではありません。タイトルに付いた「+」の意味は、来館者が「いのちの未来の選択」に向き合う新シナリオの追加。そしてもうひとつ、個人的に最も心を掴まれたのが「漱石アンドロイド2.0」の導入です。
夏目漱石のアンドロイドが最新AIで進化し、来場者と自律的に対話する。明治の文豪に、2026年を生きる私たちが問いかけ、漱石が「自分の言葉で」答えを返す。学校法人二松学舎の150周年記念制作協力によるこの試みは、「いのちの未来」というテーマそのものの体現のように思えてなりません(ただし、漱石との対話体験には別途専用チケットが必要とのことなので、その点はご注意を)。
ワークブックで持ち帰る30の問い

展示だけで終わらないのも、この企画の面白いところです。パルコ出版からは、親子で「いのちとは何か」を考えるワークブック『ドリル いのちの未来』(税込1,760円、8月上旬先行販売)と、石黒氏の研究を視覚的に書籍化した初の公式図録(税込3,300円、7月25日先行販売)が発売。
展示を見て感じた「問い」を、家に持ち帰って30の問題として反芻する。体験型展示の価値を会場の外に延長するこの設計は、万博が投げかけた「人間とは何か」という問いを一過性の感動で終わらせまいとする意志の表れでしょう。
2026年8月6日には、石黒浩氏とメディアアーティストの落合陽一氏によるトークイベントも予定されています。万博でそれぞれテーマ事業プロデューサーを務めた二人が、「人間とは何か」「いのちとは何か」を語り合う場は、それ自体がひとつの事件になりそうです。
一回性と100年先が接続される場所

会場となるMoN Takanawaは、JR東日本文化創造財団が「100年先へ文化をつなぐ」をミッションに掲げて開館した施設。万博という祝祭の「一回性」と、100年先を見据える文化施設の「持続性」。本来なら矛盾するはずの二つが、アンドロイドという物理的な存在を介して接続されている——その構図自体が、ちょっとSF的で痛快です。
AIと毎日会話し、ロボットが隣にいる未来がもう手の届くところまで来ている今、「いのちとは何か」という問いは、哲学の教科書の中ではなく、私たちの生活のど真ん中にあるのかもしれません。万博に行けなかった人も、行ったけれどあのパビリオンに入れなかった人も、この夏、東京でその問いに出会い直すことができます。
『いのちの未来+』
【会期】2026年7月25日(土)〜9月25日(金)
【会場】MoN Takanawa(Box1000)/東京都港区
【チケット(前売)】一般 平日3,500円・土日祝4,000円/U25 2,500円/中学生以下 1,500円
※30分ごとの日時指定制、3期に分けて販売
【トークイベント】2026年8月6日(木)石黒浩×落合陽一(詳細は公式サイトにて)
【公式サイト】https://montakanawa.jp/programs/future_of_life/






