いま、あらためて問う「機械と人間の関係性」ポーラ美術館にて
いま、人工知能(以下、AI)によって生活のあり方が大きく変わろうとしている。
その土台を築いたのは第一次世界大戦からの復興によって世界中で工業化が進んだ“機械時代(マシン・エイジ)”こと1920年代であり、なかでも1925年の「パリ現代産業装飾芸術国際博覧会(アール・デコ博)」は、機械や工業製品の美しさを称揚する作品が一堂に会した重要な展覧会だったという。
さて、ポーラ美術館で開催中の『モダン・タイムス・イン・パリ 1925―機械時代のアートとデザイン』は、アール・デコ博の舞台となった1920年代のパリを中心とするヨーロッパやアメリカ、そして日本における機械と人間との関係を、さまざまな作品や資料を通して見つめる企画展である。
同展は全4章から構成される。
第1章「機械と人間:近代性のユートピア」では、機械への賛美や反発をあらわしたレジェやブランクーシ、シュルレアリスムの作家らの作品にAIが人知を超えようとする現代の視点からアプローチ。
第2章「装う機械:アール・デコと博覧会の夢」では、1920年代を象徴する装飾様式のアール・デコを、産業技術や都市の発達といった、こちらもまた現代の視点からとらえる。
第3章「役に立たない機械:ダダとシュルレアリスム」では、日本におけるグラフィックデザイナーの先駆者・杉浦非水によるアール・デコ様式の影響を受けたポスターや雑誌の表紙を紹介するとともに、レジェに感化された古賀春江、機械美に魅せられた河辺昌久など前衛芸術家の作品も展示。大正末期〜昭和初期にかけての日本のモダニズムを検証する。
第4章「モダン都市東京:アール・デコと機械美の受容と展開」では、第3章同様、杉浦非水や古賀春江、河辺昌久らに焦点を当て、機械的なモチーフを採用した新時代を迎える不安と高揚感が交錯するような絵画作品を展示する。
第1章「機械と人間:近代性のユートピア」より
第2章「装う機械:アール・デコと博覧会の夢」より
第3章「役に立たない機械:ダダとシュルレアリスム」より
第4章「モダン都市東京:アール・デコと機械美の受容と展開」より
さらにエピローグの「21世紀のモダン・タイムス」では、近代化をテーマとした映像作品や近未来的な立体作品、平面でありながら3Dのような立体感や奥行きがあるレンチキュラー作品などが並び、現代のモダン・タイムスを考える。
会期は5月19日(日)まで。
人間と機械との約100年の変遷を学ぶことは、AIが広く浸透しているであろう近い将来に備えてきっと意義があるはずだ。
『モダン・タイムス・イン・パリ 1925 ― 機械時代のアートとデザイン』
【会期】2024年5月19日(日)まで ※会期中無休
【会場】ポーラ美術館 展示室1、2
【Webサイト】https://www.polamuseum.or.jp/sp/moderntimesinparis1925/