としまえん、「存在しない100周年」を西武園が祝う夏
2020年に94年の歴史に幕を下ろした「としまえん」。もし閉園していなければ、2026年はちょうど開園100周年にあたります。西武園ゆうえんちが発表したのは、その「存在しない記念日」を本気で祝うという、ちょっと信じがたい夏の企画でした。
「ほぼ」再現という誠実なあいまいさ

としまえんは、最盛期に年間400万人が訪れた東京・練馬の国民的遊園地です。閉園後、跡地には「ワーナー ブラザース スタジオツアー東京 ‐ メイキング・オブ・ハリー・ポッター」が2023年にオープンし、物理的な「としまえん」の痕跡はほぼ消えました。
そんな中、同じ西武グループに属する西武園ゆうえんち(埼玉県所沢市、運営は横浜八景島)が、自園のプールエリアを2026年7月18日から9月23日まで「ひと夏だけほぼ『としまえん』プール」として営業すると発表しました。
注目したいのは「ほぼ」という言葉の選び方です。完全再現は謳わない。元としまえんスタッフの記憶を手がかりに、夏の象徴だった大型アトラクション「ハイドロポリス」の看板やエリア内の展示を「としまえんらしく」再現するのだといいます。 記憶というのは本来あいまいなもので、そのあいまいさごと引き受ける姿勢が、むしろ誠実に映ります。
流れるプールでは、かつてのとしまえんの「音」や「匂い」まで再現するとのこと。プールの水の塩素の香り、ざわめき、水しぶきの音——五感の記憶は、写真よりもずっと深いところに残っているものかもしれません。
春日の腸内を滑り降りる夏


この企画、真面目な懐古だけでは終わりません。所沢出身でとしまえん・西武園ゆうえんち両園のゲストだったオードリー春日さんをモデルにした「春日のうん○スライダー」なる新アトラクションが登場します。入口に大きく口を開けた春日さん、出口にはお尻の看板。ホクロの位置まで忠実に再現し、まるで春日さんの腸内を流れるような体験ができるそうです。
正直、最初に読んだとき笑ってしまいました。でも、この「くだらなさ」にこそ、としまえんらしさが宿っている気がするのです。ディズニーランドのような完璧な世界観ではなく、手作り感と笑いが同居する空気。それは施設のスペックではなく、文化的なDNAとでも呼ぶべきもの。
波のプールにとしまえんの水を一杯だけ入れた「としまえん汁1.00% ほぼサーフプール」、流れるプールを逆回転させて時を戻す「逆流タイム」など、企画の一つひとつが大真面目にふざけています。
400万人の記憶はまだ営業中

子どもの頃に通った遊園地、学校帰りに寄った商店街、夏休みに泳いだ市民プール——誰にでも「もうなくなった場所」の記憶があるのではないでしょうか。
としまえんの跡地は世界的なエンターテインメント施設に生まれ変わりました。それ自体は素晴らしいことですが、かつてそこで過ごした時間の記憶は、新しい建物の中には残っていません。今回の企画が面白いのは、記憶の「復元」を物理的な場所ではなく、別の場所での体験として試みている点です。
遊園地の価値とは何だろう、とふと考えます。ジェットコースターの高さでも、入場者数でもなく、そこで誰かが笑った記憶の総量なのかもしれません。としまえんは閉園しましたが、400万人の記憶の中では、まだ営業中です。この夏、西武園のプールで「ほぼとしまえん」の水に浸かったとき、その記憶はまたひとつ、新しく更新されるのでしょう。
ひと夏だけほぼ「としまえん」プール
【期間】2026年7月18日(土)〜9月23日(水・祝)
【場所】西武園ゆうえんち プールエリア(埼玉県所沢市)
【プール営業期間】6月27日(土)〜9月23日(水・祝)※6月27日〜7月17日、9月1日以降は土日祝のみ営業
【チケット】夏季パスポート型チケットあり(プール有料席500円引きクーポン1回分付帯)。販売期間は6月22日〜7月24日18:00まで(通常価格は7月24日18:00〜8月16日)
【公式サイト】西武園ゆうえんち






