横浜で20分間見つめ合うアート体験。まちだリな「みつめあうだけ」開催
横浜市芸術文化振興財団が運営するアーツコミッション・ヨコハマ(ACY)が、アーティスト・まちだリなによる滞在制作イベント「みつめあうだけ」の開催を発表しました。誰かと向かい合い、20分間、声も身振りも使わずにただ見つめ合う。その視線の軌跡が、光の映像作品として記録されるというプロジェクトです。
意思伝達のための福祉機器を
「沈黙の対話」を映す装置に
このプロジェクトの核にあるのは、視線入力装置というテクノロジーです。
もともとはALS(筋萎縮性側索硬化症)など発声が難しい方々が、目の動きで文字を選び、意思を伝えるために開発された福祉機器。まちだリなは、この装置を使って日常的に対話をしている知人との出会いをきっかけに、視線そのものを「映像として可視化する」ためのアート制作ツールとして転用しました。
意思伝達の「補助」として設計されたものが、言葉を介さない対話の「記録装置」へと役割を変える。この文脈の転換に、まちだの作家としての一貫した姿勢が表れています。
目をそらしても、それが光になる
まちだリなは、身体の意図しない反応——眩しさで出るくしゃみ、吃音、かじかむ手——といった、効率や正確さからこぼれ落ちるものに関心を寄せてきたアーティストです。作品は国内外の展覧会や20カ国以上の映画祭で発表されています。
今回の「みつめあうだけ」でも、その思想は貫かれています。20分間の見つめ合いに「成功」も「失敗」もありません。ふと目をそらしてしまっても構わない。むしろ、その揺れや逸らしが視線の軌跡として光に変換され、投影作品の一部になります。
不器用さが否定されるのではなく、美しいものとして残る。この設計に、正直なところ驚きました。
最後に誰かの目をじっと見たのは
いつだったか
SNSのリプライは数秒、チャットの既読は即時。私たちのコミュニケーションは、どんどん速くなっています。
そのなかで「20分間、言葉なしで向かい合う」という体験は、社会の速度から見れば明らかに「遅い」。けれど、まちだはその遅延にこそ対話の本質があると考えています。視線を交わすことは、情報を伝える行為ではなく、「相手の存在を受け止め、自らの存在を差し出す営み」なのだと。
最後に誰かの目をじっと見たのは、いつだったでしょうか。画面越しではなく、同じ空間で、沈黙のまま。その問いを自分に向けたとき、この体験が持つ意味の輪郭が少しだけはっきりする気がします。

オープンスタジオ・イベント「みつめあうだけ」
【日時】2026年9月13日(日)・9月17日(木)各日 12:00〜17:00
【会場】Murasaki Penguin Project Totsuka(横浜市戸塚区戸塚町4247-21 地下1階)
【参加費】無料
【内容】投影作品の観覧(入退場自由)/20分間の見つめ合い体験(事前申込優先・当日参加も可)
【事前申込】申込フォーム
【公式サイト】まちだリな/Murasaki Penguin Project Totsuka/アーツコミッション・ヨコハマ






