AI時代に「自分の記憶」を信じられる?渋谷『記憶汚染展』で揺さぶられる90分
累計約40万人を動員した『行方不明展』や『恐怖心展』を手がけてきた株式会社闇が、新たな体験型展覧会『記憶汚染展』を渋谷で開幕させました。テーマは「記憶と現実のあやふやさ」。怖いのに目が離せない、そんな展覧会の話です。
幽霊でも殺人鬼でもない
90分かけて「汚染」されるのは
自分の記憶



この展覧会が扱うのは、幽霊でも殺人鬼でもありません。私たちの「記憶」そのものです。
会場では、多くの人が「確かにそうだった」と思い込んでいるのに実際には存在しなかった事実——いわゆるマンデラエフェクトや、AIが自信満々にでっちあげる嘘(ハルシネーションと呼ばれる現象)、そして証言と記録のあいだに横たわる不確かな痕跡を、来場者自身が体験する構成になっています。
所要時間は約90分。ただ眺めるだけの展示ではなく、自分の記憶が「汚染」されていく過程を身をもって味わう設計です。
脚本を手がけたのは、作家の品田遊さん(ダ・ヴィンチ・恐山の名でも知られています)。『行方不明展』『恐怖心展』のチームと、『視える人には見える展』『視てはいけない絵画展』のチームが合流した制作体制も、かなり力が入っています。
「記憶を疑いたい」人が20万人いた
開幕前に公開されたWEB限定コンテンツ「記憶能力に関するテスト」は、すでに20万回以上実施されたそうです。
この数字が面白いのは、「自分の記憶力を試したい」というよりも、「自分の記憶がどれだけ当てにならないか確かめたい」という欲求の表れに見えるところ。
日常生活で私たちは、自分の記憶を疑う機会がほとんどありません。でも、SNSで流れてくる情報とAIが生成するコンテンツの境界がどんどん曖昧になっている今、「自分が見たもの」への信頼が静かに揺らいでいる感覚は、多くの人が薄々感じているのではないでしょうか。
この展覧会は、その漠然とした不安に「体験」という形を与えてくれます。
外からではなく、内側から湧く恐怖
先行体験会に参加した人たちからは、「自分の記憶のどこまでが真実なのか分からなくなる」「新感覚の恐怖体験」といった声がSNSで上がっています。
ホラーやお化け屋敷の恐怖は、外からやってきます。でも『記憶汚染展』の恐怖は、自分の内側から湧き上がるもの。「確かに覚えている」と思っていたことが崩れる瞬間の居心地の悪さは、どんなジャンプスケア(突然驚かせる演出)よりもじわじわと効くのかもしれません。
私たちは毎日、記憶を頼りに生きています。昨日の会話、先週の約束、去年の夏の思い出。でも、その記憶のうちどれだけが「本物」なのか——そう問われたとき、胸を張って答えられる人は、きっとそう多くないはずです。







