35万人が待つ「全身スキャン」。Spotify創業者が変える健康診断の常識

健康診断と聞いて、ワクワクする人はどれくらいいるでしょうか。

面倒だけど仕方なく受けるもの、結果を見るのがちょっと怖いもの——。ところがいま、ある「全身スキャン」の予約に35万人以上が列をなしているというのです。

音楽の次に「体」をストリーミングする

仕掛け人は、Spotifyの共同創業者であるDaniel Ek氏。彼が2018年にスウェーデンで立ち上げたヘルステック企業「Neko Health」が、爆発的な注目を集めています。

米メディア「Inc.」の報道によれば、同社はセンサーを搭載した専用ポッドで全身をスキャンし、皮膚や心臓、循環器系など数百万のデータポイントを一度に取得。血液検査も含めて所要時間は約60分で、結果はその日のうちに医師が対面で説明してくれます。

皮膚がんや心臓病の早期兆候はもちろん、心房細動(心臓のリズムが乱れる不整脈の一種)や大動脈瘤(大動脈の壁がふくらむ症状)といった、自覚症状が出にくい疾患まで検出できるとされています。

価格は米国で499ドル(約7万5,000円)。日本の人間ドックと比べても、決して高額とは言い切れない水準です。

「我慢する医療」から「選び取る体験」へ

注目すべきは、35万人という数字が映し出す価値観の変化です。

従来の健康診断は、会社や自治体に言われて渋々受けるもの。自分から進んで予約する人は少数派でした。Neko Healthが変えたのは、医療の中身というよりも「体験の設計」ではないでしょうか。

ハードウェアからソフトウェア、クリニックの空間設計まで自社で一貫して開発する垂直統合モデルは、まさにテック企業のプロダクト思考そのもの。Spotifyが音楽を「日常に溶け込むストリーミング体験」に変えたように、健康診断を「自分に投資する体験」へと書き換えようとしています。

同社は2026年7月に7億ドル(約1,050億円)を調達し、企業評価額は約70億ドルに到達。米国初のクリニックをニューヨークに開設する準備も進めています。

「知りたい」が予防医療を動かす

日本でも、美容医療やパーソナルジムに自らお金を払う人は増えています。「自分の体を知りたい」という欲求は、もはや一部の健康マニアだけのものではありません。

35万人の行列が教えてくれるのは、予防医療に足りなかったのは技術ではなく、「受けたい」と思わせる体験だったのかもしれない、ということです。

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