格闘技女子の約8割が抱える「投げる瞬間」の不安って?

「三井メディカルジャパン」が、柔道やレスリング、ブラジリアン柔術、MMAなどの格闘技を月1回以上行う女性85人を対象に実施した調査が、ある沈黙を数字に変えました。

競技中の尿もれや尿意の変化を経験、または不安を感じている人が78%。そして、その不安が試合成績に影響していると答えた人が61%——。

攻める瞬間が最も怖い瞬間

尿もれ・尿意が起こるシーン別の回答者数を示す棒グラフ。投げる時が44人(67%)で最多、次いで組み合う・接触時が28人、マットに倒れた時の衝撃が15人
© 株式会社三井メディカルジャパン

格闘技において「投げ」は、試合を決定づける最も攻撃的な動作のひとつです。相手を制し、畳やマットに叩きつけるその瞬間に、全身の筋肉が爆発的に収縮する。ところが今回の調査では、尿もれが起こるシーンとして「投げる時」を挙げた人が67%と圧倒的に多かったのです。

「組み合う・接触時」が42%、「マットに倒れた時の衝撃」が23%と続きますが、注目すべきは、これらがすべて「攻める側」の動作でもあるということ。つまり、競技で最も力を発揮しなければならない場面が、同時に最も不安を感じる場面になっている。

調査では「特定の動きを気にするようになった」と答えた人が59%、「集中力が低下する」が52%にのぼりました。技をかける一瞬の迷いが、勝敗を分けることもある格闘技の世界で、この数字が意味するものは小さくありません。

「心理的に耐える」が対策3位

尿トラブルへの対策を示す棒グラフ。計量後も水分補給を控えるが31人(47%)、心理的に耐えるが25人(38%)、生理用ナプキンを使用するが33人など
© 株式会社三井メディカルジャパン
尿もれの悩みについての相談先を示す円グラフ。家族へ相談39%、同じ競技の選手27%、医療関係者へ相談はわずか12%
© 株式会社三井メディカルジャパン

対策として最も多かったのは「生理用ナプキンを使用する」で50%。次いで「計量後も水分補給を控える」が47%。格闘技には体重制限があるため、計量後は本来、失った水分を積極的に補給して試合に備えるべきタイミングです。それを尿もれへの不安から控えているとすれば、パフォーマンスへの影響は二重になります。

そして3番目に多かった対策が「心理的に耐える」の38%でした。医療関係者に相談した人はわずか12%。監修医師の永尾光一氏(銀座リプロ外科院長)は、骨盤底筋への繰り返しの負担は年齢に関係なく若い女性にも尿もれを引き起こし得ると指摘しています。回答者の56.5%が20代であることを考えると、これは「出産後の悩み」という一般的なイメージとはまったく異なる風景です。

相談先として最も多かったのは「家族」の39%で、「同じ競技の選手」が27%。監督やコーチに相談した人は11%にとどまりました。指導者との間にこの話題を持ち出せる関係性が、まだ十分に築かれていないのかもしれません。

選手が求めたのは「集中の環境」

骨盤底筋を支え尿トラブルを軽減するショーツへの関心を示す円グラフ。とても試してみたい17%、ちょっと試してみたい54%で計71%が関心あり
© 株式会社三井メディカルジャパン

国際的にも、女性アスリートの骨盤底機能障害はスポーツ医学の重要な議題になりつつあります。高衝撃スポーツほど有病率が高いことを示す系統的レビューも発表されており、格闘技がその最前線にあることは想像に難くありません。

三井メディカルジャパンはこれまでにゴルフ、マラソン、筋力トレーニングを行う女性にも同種の調査を実施しており、競技を横断して同じ課題が浮かび上がっています。今回の調査で骨盤底筋をサポートするショーツに71%が関心を示し、求める機能の1位が「動きやすさ」だったことは、選手たちが求めているのは「隠すための道具」ではなく「競技に集中するための環境」だということを物語っているように感じます。

「強い」とは、弱さを見せないことではなく、弱さについて語れる場所があること——。格闘技という、強さの象徴のような世界から届いたこの調査が、スポーツ全体の「当たり前」を少しずつ書き換えていく気がしてなりません。

Top image: © iStock.com / Satoshi-K
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。