LGBTQの約8割が行政・福祉サービスで困難を経験している【調査報告】

ついに「LGBT理解増進法案」が公布・施行された。

いずれにせよ、これが多様なジェンダーへの寛容性が問われてきた日本社会にとって大きな一歩であるには違いない。が、この一歩を前進とするには、性的マイノリティーといわれる人々がこれまでどんな困難と向き合ってきた(向き合っている)のかを、まず知ることが大事だろう。

ということで、NPO法人「ReBit(リビット)」の「LGBTQ医療福祉調査2023(※)」で明らかになった当事者たちの行政・福祉サービス利用に関するデータを、実際に寄せられたリアルな声とあわせて紹介したい。

※期間:2023年1月15日〜2月12日/回答者数:1138名(うち有効回答961名)

©認定NPO法人 ReBit

では、「障害・生活困窮に関する行政・福祉サービスの利用経験」から。

同アンケート調査における他の質問でLGBTQには障害や生活困窮の経験者が多いことがわかっているが、必要に迫られているにも関わらず、セクシュアルティに関する不安や困難を理由に、平均して49.6%が行政・福祉サービスを利用していないという。

©認定NPO法人 ReBit
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しかし、利用したとしても78.6%がセクシュアリティに関する困難を経験

具体的には、そもそも相談できなかったなどの「支援者の無理解による困難」が50.6%、不要な男女分けがあったなどの「包括的環境でないことによる困難」が49.4%、安心して相談できるかわからなかったなどの「安全に相談できるか明示されていないことによる困難」が70.5%であった。

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さらに、行政・福祉サービス利用時のセクシュアリティに関する困難により、問題が深刻化したと回答したのが52.8%。

その症状として上位3つに挙げられたのは「自尊心が低下したり、自分を大事にできなくなった」「相談できなくなった/しても意味がないと思った」「心身不調になったり、症状が悪化する等、命や健康に影響があった」。

だが「自殺を考えた、自殺未遂をした」人も21.8%おり、これは困難経験者の5人に1人である。

実際に寄せられたリアルな声はこうだ(一部抜粋)。

<障害に関する行政・福祉サービス>
 ・職場でのアウティング等のハラスメントにより精神障害になり退職した際に、障害福祉サービスを利用しようかとも思ったが、またトランスジェンダーであることでハラスメントを受けたらどうしようと不安で相談できなかった。そんな自分はもう働けない、生きられないと思った。(30代、トランスジェンダー男性、東京都)
 ・精神・発達障害があり就労継続支援事業所に通っていたが、作業中にLGBTQへ差別的な会話がされるたびにハラハラした。 支援員も全く知識がなく、カミングアウト後もどう私に接したらいいのか分からないようだった。その事業所に通い続けることができなくなり、病状が悪化した。(20代、レズビアン、東京都)
 ・パートナーが福祉サービスを必要としているが、私は家族とはみなされないため協力できることが限られるのがもどかしい。(40代、ゲイ、福岡県)
 
生活困窮に関する行政・福祉サービス>
 ・生活保護が必要な状況だが、親族への扶養照会をされると、名前と性別を変更したことが親族に伝わってしまうため、それが不安で利用できていない。(40代、トランスジェンダー女性、茨城県)
 ・生活保護開始時に、お金がかかるためホルモン治療をやめるように言われた。行政職員や福祉サービスの担当者もあまりにも知識や理解がなく、必死で治療の必要性を伝えても、誰一人として理解しくれず、失望した。(30代、トランスジェンダー女性・レズビアン、滋賀県)

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さて、オフィシャルサイトには障害・生活困窮経験の有無や医療サービス利用に関する詳しいデータなどが公開中。

ReBitが去年おこなったコチラの調査報告も一緒にチェックしてみて。

多少なりとも性的マイノリティーへの“理解増進”および自身の行動について考えるきっかけになるのではないだろうか。

『LGBTQ医療福祉調査2023』

https://rebitlgbt.org/news/9873

Top image: © iStock.com/recep-bg
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