「AI×音楽」の在り方。Spotifyの見解は?

画像生成をはじめ、幅広い分野で話題となっているAI。その勢いはとどまることを知らず、音楽、つまり芸術領域でも論争を巻き起こしてきた。

そんな中、音楽ストリーミング大手の「Spotify」が、この議論について口を開いた。

先月26日、英『BCC』にて、創業者のダニエル・エク氏が「AIの使用と見解」を語った記事が公開。彼は音楽にAIを使用する事例をまとめつつ、それぞれへの賛否や意見、Spotifyにおける立場を述べている。

AIは音楽にどう利用できるのか?

エク氏によると、音楽におけるAIの使用方法は、大きく3つに分類される。

まずひとつ目は「オートチューン」。

これは、AIを駆使して歌声を加工し、ロボットのような声にしてみたり、音程の外れているパートの修正などをすることができる技術で、写真の顔加工に近いものだ。エク氏は、この利用方法については肯定的な見解を示している。

ふたつ目は「声の模倣」だ。

人間の歌声を模倣し、別の楽曲を歌わせるといった例で、既に様々な批判や議論を巻き起こしてきた利用方法。たとえば「無許可でAIの音声解析を利用して、宇多田ヒカルの声で北島三郎の演歌を歌わせてみよう!」というような話だ。

こちらに関してはエク氏も否定的な見解を示しており、「許可なく彼らの声を模倣することは受け入れてはならない」と述べている。ただし、あのビートルズがこれを利用して故ジョン・レノンを含めたフルメンバーでアルバムを制作したような事例もあり、一概に悪とは言えないのが現状である。

最後は「既存のアーティストの影響を受けながらも、直接的な模倣をせず作成されたAI音楽」。

少し長いが、要は画像生成と同様、AIの学習に既存アーティストの楽曲を使うというものだ。ふたつ目との区別がやや難しく、“丸パクリでなければOK”というグレーゾーン。エク氏も、これに関してはまだ議論の余地があるとしている。 

彼の意見をまとめると、AIが「音楽制作のツール」として利用されること自体には賛成だが、「許可なく人間の声や作品を模倣すること」は受け入れられないと考えているようだ。

アーティストたちの見解

では、人間のアーティストたちは、これをどう捉えているのだろうか。

中には、これを“新たな創造のツール”とみなして積極的に取り入れ、新しい芸術の在り方を探るアーティストたちもいる。先日「自分の声の使用許可」を出したグライムスなどは、その最たる例だ。

一方で、一部のアーティストたちは、大々的にAIを楽曲制作に使用し、Spotifyをはじめとするサービスに配信することに反対の声を上げている。彼らが懸念しているのは、AIの無秩序的な利用がもたらす、人間の著作権や個性の侵害だ。

世界中のあらゆる分野でAIが台頭する中、音楽やその他の芸術分野においても、新たな制作手段を受け入れ、「AIと人間のアーティストが共存する形」を見つけることが求められている。

ちなみに、ミュージシャン/アーティストによる生成AIに対しての見解をまとめた情報としては、こんなものも。

「AIと音楽」の今後は?

AIが持つ可能性は非常に大きく、使い方次第では「人類の価値観が一変してしまうような」作品が世に送り出されるポテンシャルを秘めている。

ただ、現状において、人間の権利や主体性を侵害せずにこれを成し得るのかについては不明で、他の芸術領域司法をも巻き込んで数々の議論が行き交っている。

エク氏によれば、SpotifyではAIによる音楽制作を完全に禁止する予定はないとのことで、今後もAI楽曲はプラットフォーム上で配信され続けるだろう。

伴って、AIと人間が作る音楽をどう融合させ、発展させていくのか。そして、アーティストの活動をAIによって侵害することがないように、どのようなルール策定を行なっていくのか。

AIと人間のアーティストが共存するための制約や規制が必要とされている現状を考えると、この問題の解決にはまだまだ長い道のりが必要になりそうだ。

現代の音楽市場において、Spotifyの立ち位置は単なるアプリの一つではない。業界そのものを直接揺るがすほどの影響力だけに、エク氏の意向は音楽、そして芸術の在り方を定義する上で注目されるものだ。

SpotifyはどのようにAIと共存し、人間性を守り抜いていくのか。今後の動向から、ますます目が話せない。

音楽のアレンジにAIを使うことを認めるにしろ、それをどこまで認めていいのか、難しい課題ですね。グレーゾーンがあまりにも多い気がします。

個人的には、美空ひばりさんが現代の曲を歌ったら?みたいな音楽、聞いてみたいような気もします(笑)

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