トランプの入国禁止令にSpotifyが音楽の力で対抗する
シリア、スーダン、ソマリア、リビア、イエメン、イラン、国籍の違う6ヵ国のミュージシャンたちによる楽曲が、2017年7月6日、Spotifyにて配信スタートとなり、大きな反響を呼んでいます。このタイミングでの公開には、深い意味がありました。
注目されていなかった文化に
関心を向けてほしい
日本での扱いはあまり大きなものではありませんでしたが、去る6月29日より、米トランプ大統領による入国禁止令が、条件付きで施行されました。
前述の6人は、まさにこの大統領令によって影響を受ける人たち。そこでSpotifyは、隣国カナダのトロントに彼らを招き、アメリカ国籍のミュージシャンらとの交流の場を設け、曲づくりを呼びかけたのです。
「I'm with the banned」と銘打たれたこのプロジェクトの目的は、入国を禁止された人々が持つ考えや彼らの文化を、世界の多くの人々に知ってもらうこと。
リリースされたのは全18曲。歌詞の一部には、作詞した内容に対する脅迫を受けた過去、自分の国の考えに耐えきれなくなり逃げるようにして祖国を捨てた経験を綴ったものも。国籍だけでひとくくりにして偏見を抱くのではなく、内戦や差別に苦しんでいる人もいることを知ってほしい、そんな切実な想いをリリックにのせているように思えてなりません。
音楽配信にとどまらず
政治的な意見も発信
ところで、Spotifyが政治的な態度を明らかにしたのは、これが初めてではありません。6月のプライド月間に合わせて、LGBTQのサポートを表すプレイリストを公開したのも記憶に新しいところ。
今回のプロジェクトに際しても、力強いメッセージが込められていました。以下はリリースからの抜粋です。
「どの国やどの時代においても、多くの人と違うことを理由に仲間外れにされた人々がいます。いま、この瞬間にだって同じことが言えるのかもしれません。ですが、こういった不公平さを伝えるメッセージを音楽の中に見出すことができるのではないか、と私たちは信じているのです」
1億4,000万人以上のユーザーを抱えるSpotifyにとって、政治的な意見を表明するのはリスクになる可能性もあるはずです。それでも、マイノリティーである移民やLGBTQの人々に対する理解を深めるためのアクションに、音楽ストリーミング配信サービスにとどまらない、彼らのアイデンティティが伝わってくるように思えませんか。