一流の人が何気なくやっている「7つの気配り」
一流の人の周りには、不思議と人が集まるものです。よく見ていると、一流は何気ない気配りがとても上手なことが多いのです。拙著『一流になれる人、なれない人の見分け方』から、そんな一流の人が何気なくやっている気配りをまとめました。
01.
返事は速く、ポジティブに
一流の人ほど、こちらを喜ばせるような反応をしてくださるものです。
国際線に乗務していると、「香港でいいレストランを知らない?」といったご質問を受けることがよくありました。お客さまのご要望を伺いながら、そのときどきの評判のいいお店をご紹介します。エグゼクティブの方はわりと頻繁にお乗りになります。次にまたフライトでご一緒したときに「前に教えてもらったあそこ、行ったよ」と言っていただいたりすると、やっぱり嬉しいものです。それをきっかけに、さらに新しい情報をお伝えしたりして、そこに気持ちのいいコミュニケーションができています。
機内に限らず、日常生活の中での知り合いに対してもそうだと思います。一流の人はお返事も速い。即座に「ありがとう」というお礼のメールやお手紙をくださって、感想などが書き添えられています。そこから「この方はこういうものがお好きなようだ」と察することができて、どんどん互いの心に届く交流ができるようになっていくのです。
人の心にいい感情、ポジティブな感情を残せるかどうか、迅速にレスポンスする能力は、スケールの大きな一流人になる大事なカギなのではないでしょうか。
02.
時間がない人ほど
手紙を書いている
私の感覚では、一流の人ほど筆まめです。立場的にさぞかし多忙であろうと思われる方が、すかさずお手紙でお返事をくださる。お礼状などを秘書の方や奥様がお書きになっていることもありますが、ご本人がお書きになることの方が多い。結局、それが「行動力」なのだと思います。
多忙でも、すっと動く。時間を見つけて、さっと書く。ご本人たちはおそらくそれを戦略的には考えていないと思いますが、そういうことの積み重ねが、その人の印象になり、その人の人柄になっていくのだと思います。
いまはいつでもどこでもコンタクトを取れる時代ですが、だからこそ手紙、それも手書きの効果というものが大きくなってきている気がします。
手紙を書くというのは慣れ、つまり習慣です。書き慣れない人は、どんなことを書いたらいいのかわからないといって書こうとしないので、いっそう書けなくなるのです。あまり形式にとらわれず、伝えるべきことをきちんと伝え、そこに気持ちがこもっていればいいと思います。手紙のマナーも、自分が頻繁に手紙を書くようになると、自然と学んでいけるものです。
03.
最初から「ノー」と言って
チャンスを逃すようなことはしない
元UBS銀行東京支店のチェアマンで、その後UBSイタリアのトップにもなったヴィットリオ・ヴォルピさんという方からいただいた忠告が、今でも印象的です。
ある時、知り合いの一人に「焼き鳥屋さんに行かない?」と誘っていただいたきました。しかし、私は鶏肉があまり得意ではないので「私、鶏肉がダメなの。ごめんなさい」と言下にお断りしてしまったのです。
その席にヴィットリオさんもいて、あとで私にこう言ったのです。
「美津奈、最初に“ノー”と言ってしまったら、その人はもう二度とあなたを誘ってくれなくなるでしょう。せっかく誘ってくれたのだから、そのチャンスを逃すようなことをしてはいけない。気をつけた方がいいです。よく考えてみてください。焼き鳥屋さんには鶏肉しかないわけではないでしょう? 他のものを頼めばいいんです。“何が嫌いだからダメ”というようなことを言ってはいけません」
以来、ちょっと苦手なものでも、なるべく「ノー」と言わないように心がけるようになりました。それによって、できなかったことができるようになる、未知のものが食べられるようになることを、とても楽しめるようになりました。
“ノー”を言わなくなった人生のほうが、間違いなく楽しくなります。少なくとも私は、今の方がずっと楽しいのです。
04.
自分の時間を大切にし
人の時間を大切にする
私がトップVIPの担当になって最初に接遇させていただいた海外のVIPは、マーガレット・サッチャーさんでした。首相をお辞めになられた直後で、日本から講演の依頼があって来日されていました。
とても美しい方だったのですが、目を合わせ、お話がはずむ時間はほんの一瞬でした。私が食事の説明をさせていただいた際も、「私はフルーツとサラダとチーズ、これだけで結構です」ときっぱり言われました。
秘書の女性に出す指示もシンプルで、一言で終わり、という感じです。無駄なことを省くということは、周りの人に対しても単刀直入、無駄がないということです。
仕事におけるボスという存在であれば、無駄を省いた簡潔な指示のもとに、素早い決断をしていただけると、仕事は非常にしやすいだろうなと思いました。自分の時間を大切にしているのと同時に、相手の時間も大切にすることにつながるからです。
立場が上になるほど、サッチャーさん的な気配りの資質が必要になるのではないでしょうか。
05.
短い言葉で
人が喜ぶことを言う
トップVIP担当として、歴代総理のチャーター機に乗務することも多々ありました。人のハートをキャッチする魅力を持っていらしたのは、やはり小泉純一郎元総理でしょうか。短い言葉ですぐに人を喜ばせることができる方です。
たとえば、機内でご用意していた新聞各紙をお持ちすると、二、三紙手に取られてお読みになります。どれをお取りになったのかをチェックしておき、のちほどそれ以外の新聞をお持ちすると、先ほど読まれたものは除いてあるということをさっと見てとって、「ほう、すごいね、君」と言われました。
すかさず言葉にしてくださったわけです。ちょっとしたことですが、こちらも嬉しいものです。観察力、反射神経に長けておられるのでしょう。人をよく見ていなければ、ああいう絶妙なタイミングで言葉はかけられない、そういった人の喜ばせ方を知っている人なのだと思います。
誰だって、自分が喜ぶことを言ってくれる人の周りにいたいと思うもの。一流が一流たる所以は、こんなところにもあるのでしょうね。
06.
あなただから気づけること
あなただから出来ること
私は、CAにいちばん必要なものとは、人に喜んでいただきたい、楽しんでいただきたいと思うサービス精神だと考えていました。
以前、自動車の整備士一級の資格を取るための専門学校でこんな話をしたことがあります。
車だとかバイクをなおしていればそれで仕事ができている、と思っていたら大間違いです。その先には、それを使うユーザーがいます。修理する車やバイクを介して、お客さまとコミュニケーションを取っている、ということを考えながら整備をする。たとえば、こういう故障が起きるということは、こういう乗り方をしているからではないかな、こういう乗り方をする人はどんな性格かな、そういったことをいろいろ想像してみてください。そういう視点を持つと、「そうだとしたら、こういうふうになおしたらユーザーの人に喜んでもらえるんじゃないかな」ということが考えられるようになります。そうすると、他の人とはひと味違うコミュニケーションがとれます。ただ壊れたところを修理するだけではなく、あなただから気づけること、あなただからできることという付加価値がつけられます。そして、相手から「ぜひ、またこの人になおしてほしい」と思ってもらえるようになります。ユーザーと直接オーラルコミュニケーションをとらなくても、バイクや車を通じて対話をしているということになるのですね。
どんな業種、業界においても、「サービス精神あふれるコミュニケーション」は、必ず他者とあきらかに違う、あなたの価値となるのです。
『一流になれる人、なれない人の見分け方』
コンテンツ提供元:里岡美津奈
人材育成コンサルタント。1986年全日本空輸株式会社(ANA)に入社。在職中、VIP特別機搭乗を務め、皇室、各国元首脳の接遇で高い評価を得る。2010年に退職。現在は人材育成コンサルタントとして、一般企業や病院でコミュニケーションスキルアップの指導にあたっている。