トップCAが教える、「さりげない接遇」の8つのヒント
あなたは「接遇」という言葉を理解していますか? 自分と接点を持つ人すべてに対する態度のことです。私たちは常に人と接して生きていますから、接遇術は社会で生きていくうえで大きな武器になるのです。私はトップCAとして第一線を駆け抜けてきました。そこで会得した接遇の極意を紹介しましょう。
01.
「接客」ではなく「接遇」
同僚にもおもてなしの心で
「接客」は、お客様に対する接し方だけを指しますが、「接遇」は自分と接点を持つ人すべてに対する態度を示します。私たちがもてなす相手はお客様だけではありません。一緒に働く人たちにも、「おもてなし」の気持ちを持って接します。
一緒に働く仲間に「おもてなしの気持ち」を持ち、お互い気持ちよく働けるようになれば、コミュニケーションのよくとれた、明るい雰囲気になります。それはおのずとお客様にも伝わり、サービスにも表れて、結果的により喜んでいただけるのです。
02.
接遇は団体戦!
個性を生かせるチームが強い
私は後輩CAにあまり厳しい言い方をしたり、怒ったりしません。できるだけ自分から笑顔で話しかけるよう努力しています。生き生きと働き、最高のパフォーマンスをしてほしいからです。
さまざまな個性を持った後輩と出会ううち、多少の欠点は長所の裏返し、と思うようになりました。接遇はチームワークが重要です。均一なCAが集まるよりも、いろいろな個性を持ったCAが集まったほうがサービスに奥行きが出ます。個性的な人には、「他の人が見えていない面が見える」という長所があるのです。
ですから、仲間に何か欠点や課題点を見つけたときは、頭ごなしに注意せず、「気付き」をくすぐる。少しでも褒めるべき点を見つけたら、積極的に褒める。それぞれの個性を生かせるチームこそ、いいパフォーマンスができるのです。
03.
内面の価値に限界はない
「自分ブランド」を磨く
接遇は、形に残らない仕事です。しかし、制服やサービスの内容などが同条件の仕事でも、人によって確実に受け取る側の評価に差が出てしまうものでもあります。
接遇する者の「価値」の一部には、身だしなみやメイクなど、外見的な要素も少なからず含まれます。しかし、最も大切な「価値」は何かというと、その人の内面です。お客様の気持ちを考える共感力。よりよいサービスを考える創造力。短い時間で印象に残る会話をするための知識。ボキャブラリー、ユーモア、好奇心。それらすべてが「価値」になります。努力次第で限界なく積み上げていけるのです。
よりよい接遇をするためには、自分自身の価値を高めていくこと、つまり「自分をブランド化」することが大切だと思います。「接遇」というのは、自分自身をどこまでも突き詰めていける、奥の深い仕事なのです。
04.
無理に接しない
大切なのは「さりげなさ」
いい接遇とは、どのようなものでしょう。先回りして、お客様が希望を言葉に出される前に提供するのが正しい、そんなふうに考える方も少なくないと思います。しかし、必ずしもそれは最善ではありません。
たとえばご高齢の方や、体の不自由な方。お手洗いに行かれる際、手伝ってほしいと思っていらっしゃるのか、それとも自分でできることは自分でやりたいと思っていらっしゃるのか、よく見極める必要があります。自分でやろうと思っているのにCAが手を出してしまえば、それは大きなお世話です。「いつでもお手伝いできますよ」という気持ちをあらかじめお伝えし、何かご要望があればすぐ対応できる用意をしておけばいいことです。
「いい接遇」は、「さりげない」こと。お客様に、思いつくあらゆるサービスをして差し上げるより、「知らず知らずの間に心地よく過ごせていた」というご感想を持っていただけるほうが、いい接遇だと思うのです。そのためには「無理に接しない」のも、接遇のひとつです。
05.
お客様の不満を敏感に察知
先回りして解消を
無理に接しないことも接遇。しかし、先回りしなければいけないことがあります。それは、お客様の「不満」について。
特に日本人のお客様は欧米の方に比べてシャイな部分がありますし、自分からサービスを要求するより「察してほしい」と思われる方が多いため、本当に満足していただいているかどうかの判断が難しいのです。
「不満に思っているお客様がいらっしゃるかもしれない」状況で、ご不満を言われてから注意するのでは、遅すぎます。求められる顧客満足のレベルは常に、サービスする側が思うよりずっと高いのだと覚悟しておかなくてはいけません。
06.
クレームは
「うまく対応しよう」と思わない
CAは直接お客様と接する仕事ですから、厳しいご意見を受けることも少なくありません。興奮しておられる場合もあれば、お話が支離滅裂なこともあります。しかし、どのような内容でも私は、必ず根気よくお話をうかがうようにしています。
自分が意見を言いたいとき、どのような人に対応してほしいでしょうか?いかにも「『クレーム処理』には慣れてますよ」という感じの人が出てきたら、かえって反感を持ったり、腹立たしく思う気がするのです。それより何より、自分が思っていることを理解してほしいと思うでしょう。器用な対応よりも、自分の話を本心から理解しようとしてくれる人のほうが大事です。
「うまく対応しよう」とは思わないほうがいいのかもしれません。とにかく根気よくお話をうかがい、何がお客様の気持ちに引っかかったのかをよくうかがう。気になっていたことを話してしまわれると、お怒りが鎮まるお客様も多いものです。
07.
第一印象は
やりなおしがきかない
接遇は相手によって臨機応変に。しかし、例外なく大事にしなければならない大前提があります。それは「第一印象をよくする」ということ。
第一印象で、人は他人をおおよそ判断してしまいます。そして、第一印象をやりなおすことは二度とできません。
人の印象は最初の15秒で決まるそうです。他人を「感覚」でしかとらえられない短い時間です。「感覚」というのは、視覚、聴覚、嗅覚。つまり、「見た目」「音」「臭い」。
ヘアメイクや服装はすぐに変えられますが、立ち居振る舞いや話し方、立てる物音は一朝一夕には身につかないので、努力して磨いていかなければなりません。そして「臭い」は自分では気付きにくいので、親しい人に注意してもらうといいでしょう。
08.
滑らかなしゃべりより
正確な伝達を
接遇に「しゃべり」は欠かせません。CAの仕事で言えば、アナウンスがあります。内容やタイミングについてのマニュアルはありますが、誰がどんな声で、どんなトーンでアナウンスするかによって、お客様の感じ方はずいぶん変わります。
例えば、英語のアナウンス。CAのなかには、英語らしい発音やイントネーションを強調して「滑らかに」「カッコよく」聞かせようとする人がいます。たしかに英語が堪能ではあるのですが、聞いている側からすると「くせ」ばかりが気になって、かんじんの内容が耳に入ってこなかったりするのです。
日本語でも同じ。内容が耳に入ってこないのでは、失格です。情報をわかりやすく正確に伝えること。これこそ接遇の基本です。
『スーパーCAの仕事術』
コンテンツ提供元:里岡美津奈
人材育成コンサルタント。1986年全日本空輸株式会社(ANA)に入社。在職中、VIP特別機搭乗を務め、皇室、各国元首脳の接遇で高い評価を得る。2010年に退職。現在は人材育成コンサルタントとして、一般企業や病院でコミュニケーションスキルアップの指導にあたっている。