元ANAトップCAに学ぶ、人に好かれる「7つの会話術」
職場の気難しい上司、クレームが多い常連のお客様…。誰しも話しかけづらい人、話しかけるのに気が重い人はいますよね。しかし、仕事とあればそうも言ってはいられません。上手にポイントを押さえて、会話上手になりましょう。
ここでは、拙著『「また会いたい!」と言われる女(ひと)の気くばりのルール』から、相手を気づかいながら、上手に会話をするためのポイントをピックアップしました。
これでもうやっかいなお客様も上司も怖くありません。
01.
やっぱり基本はあいさつから
いつもハッキリ爽やかに
職場と同じで、飛行機でもフライトによってメンバーはいろいろ。話しづらい雰囲気の人も、厳しい性格の人もいます。ですが、まずははっきりと、自分からあいさつをしましょう。それだけで雰囲気が明るくなります。
ただ、せっかくのあいさつも、相手に伝わらなければ意味がありません。どうせ声をかけるなら、はっきりと聞き取れる爽やかなあいさつを心がけましょう。自分から積極的にあいさつし、なごやかなムードを作りましょう。
02.
空気の読みすぎはNG
“いつものペース”を保つ
あまりにも空気が読めないのは問題ですが、空気を読みすぎるのもいい結果にはつながらないものです。気むずかしそうなお客様や、トラブルメーカー風のお客様にも、分けへだてなく接するのがプロフェッショナルです。
あるフライトで、手荷物を手放そうとされないお客様がいらっしゃいました。担当のCAが最初は丁寧に担当しましたが、離陸時間が迫っているのでタイムリミットだと思い、チーフパーサーだった私から「お客様、お荷物分の座席を別にお取りしましょうか」とにこやかに、しかし毅然とした態度で申し上げました。
すると急に「スミマセン」と態度が変わり、別人のように神妙な顔になりました。過剰に反応して、腫れものに触るような態度はかえってよくありません。普通のペースで対応したほうがお互いに気持がいいもの。その場の空気を穏やかにすることを心がけましょう。
03.
あえて沈黙をつくることも大事
会話するときは聞き上手を心がけましょう。そのためには沈黙を恐れないことが大切です。当たり前のようですが、自分が黙らなければ相手は話すことができません。
また、相手と視線を合わせて話すように意識してください。これは日本人にとってはなかなか難しいことだと思います。ですが、グローバル社会では目を見て話さない人は信用されません。笑顔で相手を見つめる練習をしましょう。
共感の言葉を入れながら、相づちを打つと、お話を興味深くうかがっている姿勢をアピールできますよ。
①目線を合わせて話す②自分の意見をはさまず、相づちを打つ③話しの内容に応じた表情を浮かべる
この3つを心掛けるだけで、お客様は安心して気持ちよくお話してくれるはずです。
04.
トラブルには
ウィットの利いた言葉で対応
ある時、お酒に酔ったお客様が、これみよがしに機内にあるはずのないいかがわしいもの(ご想像にお任せします)を座席のポケットに差していたことがありました。私は無言で近づいて、「お客様、こちらのお手荷物、おしまいくださいませ。それともお降りになりますか」と真顔で丁寧にお伝えしました。すると、お連れの方が「す、すみません」と言ってカバンの中に収納してくださいました。「ご協力いただき、ありがとうございます」とにっこり笑って一礼し、一件落着です。
毅然とした態度で、言葉づかいはあくまで丁寧に。インテリジェンスとウィットの効いた対応で上手に切り抜けましょう。
05.
こだわりポイントを
「発掘」するのが褒め上手
その方のこだわりポイントに気づき、褒めることは会話のきっかけになります。褒められて悪い気がする人はいませんし、それが自分がこだわっているポイントならなおのことうれしいものです。また、あまり人が気づかない部分を発見してほめることも効果があります。
笑顔が素敵な人なら、あえて「手の表情がとても豊かですね」というように、普段あまりほめられないようなことをほめてみましょう。ファッションアイテムでも、よく見ないとわからない小物など、ちょっとしたこだわりポイントに気づいてお伝えすると、思いのほか喜ばれます。
観察力を駆使して、さりげなく気を使っている部分を見つけ出し、話題にしましょう。
06.
ムード作りには
意外とダジャレが効果的!
年配の男性にはいわゆる「おやじギャグ」と言われるダジャレを連発する方がいらっしゃいます。若い人の中には敬遠する人も少なくありませんが、私は頭の体操だと思い、楽しみにしていました。
ダジャレは単なる言葉遊びではなく、なかなか意味が深いもの。多彩な情報のストックがないと出てこない表現もあり、意外と高度なテクニックなのです。なにより、ユーモアには場をなごませる力があります。
天皇皇后両陛下のフライトにおともした時のことです。「飛島」という言葉が聞き取れず、「とりしまでございますか?」と聞き直してしまいました。皇后陛下は「ジャンプの飛び島ですよ」と言って、手でトビウオがジャンプするようなしぐさをされ、にこやかに微笑まれました。ウィットに富み、相手に一発で理解させる、なんと素敵な対応でしょう。
まじめに丁寧に対応することだけが優れたおもてなしなのではありません。リラックスした雰囲気を演出するのにユーモアは大きな力を発揮します。こちらから切り出す必要はありませんが、お客様の言葉には敏感に反応して、楽しいムードを作るよう努力してみてください。
07.
成功談はつまらない
失敗談こそ話の潤滑油
誰でも成功したエピソードのほうが気持ちよく話せるものですが、失敗談は話の潤滑油になります。私も業務に精通するにつれ、指導する側の立場に立っていましたが、新人の時は、顔から火が出そうな失敗をたくさんしていました。
例えば、あるフライトの時です。お客様から「あなただけエライCAさんなのかしら?」と話しかけられました。私は当時まだ新人です。「あなただけ靴が違うから…」足元に目を落とすと華やかな花のモチーフが…。なんと私物のパンプスを履いたまま搭乗していたのです!当時は全員が、会社から支給されたシンプルな紺色のパンプスを履いていました。あわててギャレーに飛び込み、花をむしりとったのを記憶しています。
後輩たちにこういう話しをすると、場が盛り上がり、「新人はみんな同じなんですね」と打ち解けてくれます。時には過去のちょっと恥ずかしいトラブルも盛り込み、場をなごませましょう。
『「また会いたい!」と言われる女(ひと)の気くばりのルール』
コンテンツ提供元:里岡美津奈
1986年全日本空輸株式会社(ANA)に入社。在職中、VIP特別機搭乗を務め、皇室、各国元首脳の接遇で高い評価を得る。2010年に退職。現在は人材育成コンサルタントとして、一般企業や病院でコミュニケーションスキルアップの指導にあたっている。