ANA・伝説のトップCAが教える、身だしなみの「7つの基本」
私はもともと、特別ずば抜けたものを持っている人間ではありません。トップVIP担当に選ばれた当初、なぜ自分だったのか不思議で、上司に聞いてみたことがあります。そこで言われた理由のひとつは、身だしなみがいつも整っている、ということでした。
ここでは、拙著『伝説のトップCAが明かす一流になれる人、なれない人の見分け方』から、私がいつも心掛けている身だしなみの基本を紹介します。
01.
おしゃれは自分のため
身だしなみは人のため
身だしなみを整えることは、ビジネスマナーの基本。では、おしゃれとみだしなみはどう違うのか、あなたははっきり認識できていますか。
おしゃれとは、自分のためにするものです。それが人から褒められようが貶されようが、いまの自分は「これがいい、これが好き」と思ってやるのがおしゃれです。
これに対して、身だしなみとは、人に不快感を与えないように身なりを整えること。人の目にどう映るのか、相手にどういう印象を与えるのか、常に他者の目を意識しなくてはならないのが身だしなみです。
だから大事なのはまず「清潔感」。次に大事なのは「手入れが行き届いていること」です。さらに「自分の体型に合っている」ことや「TPOをわきまえている」ことも大切です。こういう点が満たされていると、好感を持たれます。
場をわきまえていて、誠実な自分をアピールするのが身だしなみ。自分自身がどう見えているかを意識できない人は、仕事をしていても気配りができないのではないかと思わせます。せっかく仕事をするなら、やはり気づける人、意識の高い人と仕事をしたいと思いませんか。
02.
「第一印象はやりなおせない」ことを
もっと意識する
“You never get a second chance to make a first impression”
これは私がCA時代に先輩から教えられた言葉です。第一印象はやり直せない。最初にチャンスをゲットしなければ、次の機会はやってこないのです。
人は中身だ、見栄えなんか大した問題じゃない。これは正論です。実際、人は中身です。ハートです。しかし、その中身を知ってもらうには、まず見栄えが大事なのです。どんなに中身に自信があっても、不潔で仏頂面をした人と親しくなりたいと思う人はいません。人はまず、見た目の印象で判断します。
だからこそ、身だしなみの徹底が意味を持ちます。身だしなみとはファッションや外見だけではありません。立ち居振る舞いまで含めた総合的な自己表現だと認識しましょう。
03.
自分に合った
サイズのものを身に付ける
自分に似合うものをきちんと知るということでは、サイズが合っているかということも大事なチェックポイントです。意外とサイズが合っていないものを着ている人を多く見かけます。
とくに、ちょっと大きめくらいだと安心して着てしまうのです。小さめだと窮屈で、見た目にもわかりやすいのですが、少しゆったりしている程度なら「まあ、いいか」と思ってしまう。
新しく服を買いに行ったときには、同じ品のワンサイズ下のもの、ワンサイズ上のものを試着して、そのフィット感を確認してみてはいかがでしょう。ジャストフィットするものは着心地もよく、見た目もいちばんすっきりして見えます。
少し太っても大丈夫なように、ちょっと大き目を選ぶというようなこともしないほうがいいでしょう。いまの自分をよりよく見せるためのベストチョイスをするべきだと思いませんか?
04.
人と同じものではなく
自分の価値観で服を選ぶ
ブランド好きな人は多いですが、いちばんつまらないと私が思うのは、「どこどこのブランドだからいい」という刷り込み、思い込みです。
身につけるものも、自分のモノサシで善し悪しを判断する。そういう感覚、姿勢を養っていくことが大切です。それがその人のセンスになっていくのです。
それには場数を踏むことが必要です。カッティングひとつでも、見え方、着心地は全く違います。同じサイズでもブランドによっては全く違って見えるものです。これを着るとスマートに見えるというものもあれば、しゃれていて素敵だけど、自分の体型をよく見せてくれないものもあるわけです。
私が最近、没個性的でつまらないなあ、と感じるのは、就活中の学生さんの格好です。就活マニュアルで勧めているのでしょうが、みんな一様に黒っぽい無地のスーツを着ています。自分に似合う色、たとえばネイビーだとかチャコールグレーだとか、顔を引き立ててくれる色のスーツで勝負をした方が有利なのではないか。少なくとも私が面接官だったら、そんな視点からもチェックするような気がします。
人と同じで安心してはいませんか?
05.
「いつかあの人のように」
というお手本を持つ
私には子どものころからずっと憧れている叔母がいました。日頃から水泳で鍛えたからだに、バレンティノのスーツを着て、ハイヒールでリズミカルに歩いていました。その姿がとても格好いい。アクセサリーは「森暁雄」というオートクチュールのジュエリーデザイナーの方のものを愛好していて、その方の作品は個性的なので、ともするとつけている人が負けてしまうのですが、叔母は全然負けていなくて、いつも素敵につけていました。
私の頭の中には常に彼女の姿があって、ああなるにはどうしたらいいかということを考え、イメージして自己管理をしてきました。
では、今私がバレンティノのスーツをいつも着ているかといえば、そんなことはありませんし、森暁雄さんのジュエリーもまだ一つか二つしか手にすることができていません。でも、向かっていく方向がはっきりしていると、それだけイメージが具体的になります。
仮に一生なれなくてもいいのです。自分をプロデュースしていく上では、何かそういうロールモデルとなる存在がいるといいと思います。何もかもその人を真似しなくてもいいのです。その姿の何を自分はいいと思うのか、そのエッセンスをお手本にしてみましょう。
06.
他人の意見を受け入れることで
センスを磨く
お手本を見つける前に、そもそも自分に何が似合うのか、どういうスタイルが自分にふさわしいのかわからないという人もいるでしょう。そういう人は、まずいろいろ質問したり、アドバイスしてもらえる人を見つけましょう。
顔見知りの洋服屋さんや、最近はファッションに関する相談に乗ってくれるコンシェルジュ的なサービスもあります。
自分の感覚からすると「えっ、これ?」と思うようなセレクトをされても、相手はその道のプロなのですから、プロの選択肢を受け入れて、まずは試着してみましょう。自分ひとりで洋服選びをしているときとは違うかたちで、自分に似合うものに出会える可能性があります。
もちろんときには失敗もあるでしょうが、センスというものは、まずはいろいろなものを受け入れてみることで磨かれていくのです。
07.
一流はやりすぎない
バランス感覚を大切にする
本当に一流といわれる人の身だしなみの共通点は、「さりげない」ことです。神経が行き届いているのはわかる。けれど、特別に目立ちはしない。一流の人は、控えめにしていても自然と人の注目を集めてしまうもの。悪目立ちするような格好は決してしません。それが品格となって人の目に映っているのだと思います。
おしゃれすぎると、「この人、ファッションのことばかり考えているのかな」と思われてしまい、人間的に軽く見られることがあります。自分のスタイルとして貫いているものがあるのはそれはそれでいいのですが、いつも目先の流行を追っているのは中身が透けて見えてしまうということでもあります。
さりげなくいきましょう。やりすぎないバランス感覚こそが、身だしなみのポイントなのです。
『伝説のトップCAが明かす一流になれる人、なれない人の見分け方』
コンテンツ提供元:里岡美津奈
人材育成コンサルタント。1986年全日本空輸株式会社(ANA)に入社。在職中、VIP特別機搭乗を務め、皇室、各国元首脳の接遇で高い評価を得る。2010年に退職。現在は人材育成コンサルタントとして、一般企業や病院でコミュニケーションスキルアップの指導にあたっている。