おもてなしのプロに学ぶ、気くばりの11の基本
CAの仕事ではたくさんのお客様にお会いします。接客に正解はありませんが、相手の方の気持ちを考え、人や場に合った気くばりをすることはとても大切。それはサービスの現場だけに求められるものではありません。気くばりができる人はどんな仕事もうまくこなせる人なのです。
ここでは、拙著『「また会いたい!」と言われる女(ひと)の気くばりのルール』から、その具体的な方法を紹介します。きっと様々な場面で役に立つはずですよ。
01.
周りにいる全ての人が
おもてなしの対象
気くばりとは、自身の言動に心を添え、相手の立場に立って物事を考えて、配慮しながら行動することです。金銭的なやりとりが発生する目の前のお客様だけでなく、自分の周りにいるすべての人がおもてなしの対象となるのです。
02.
自分の身だしなみへの
配慮も怠らずに
あなたの身だしなみは、きちんと整っていますか。サービスをする人は、自分から出るものすべてが商品になります。プロフェッショナルは自分を商品だと自覚し、合格ラインをいつもクリアしているものです。まずは自分を客観的に見て、身だしなみ、声、雰囲気、立ち居振る舞いなど、第一印象をよくする努力をしましょう。
肌や体型もまた同じです。自分のコンディションをよく把握し、メンテナンスを怠らないように。
03.
外部の評価を求め過ぎない
人は誰しも他人から評価されたいと思っています。しかし、評価されるためのおもてなしは、親切の押し売りでしかありません。相手のニーズをよく見極めて、客観的に状況判断する習慣をつけましょう。
一人のお客様に必要以上に時間をかけて対応すると、他のお客様への対応がおろそかになってしまいます。仲間と協力して、多くのお客様に心地よくお過ごしいただくことに心を配りましょう。
04.
間違いは遠回しに指摘する
ルール違反をしたお客様がいたとしても、私はダイレクトに注意をしません。「恥をかかされた」と不愉快な気分にさせてしまいかねませんからね。
例えば、機内での荷物の移動をお願いしたい場合。最初から「足元のお荷物を上の物入れにお入れしてもよろしいでしょうか?」とお声がけするのはあまりよいアプローチではありません。
まずは笑顔で「本日はご搭乗ありがとうございます。こちらの担当をさせていただく○○と申します」とごあいさつ。それから、ふと気づいたように「お客様、よろしければお荷物を上にお入れしましょうか?」とつなげるのです。そうすることで印象が全然違ってきます。
ルールを引き合いに出して強制するのは最後の手段。できるだけお客様のプライドを傷つけないよう心がけましょう。
05.
大切なのは、
今日より明日をよくする気持ち
これはANAのモットーです。CAの仕事は基本的にルーティンワークの連続。しかし、油断していると思わぬ大事故にもなりかねません。二重三重のチェックが必要です。
同様にお客様に対するおもてなしも、「このぐらいでいい」と満足してしまわず、もっといい方法はないかと考え、心をこめることでグレードアップしていきます。今日より明日をよくしていこうという気持ちが、気くばりにも欠かせないのです。
06.
自分自身に余裕を持つ
気くばりができるのは自分自身に余裕がある時です。自分の業務をきちんとこなし、気持ちにも時間にもゆとりが生まれて初めて、気くばりができるのです。
先輩のCAで気くばりの達人がいました。彼女のようになりたいと観察していると、仕事を終えたあと、翌日のフライトの準備を完璧にしてから帰宅していることがわかったのです。当然、彼女は当日の朝準備を始める人よりも余裕がありますから、同僚の仕事を手伝ったり、後輩のフォローもできます。お客様をお迎えする時の余裕も全然違います。
このようなちょっとした余裕を持つことが、気くばりには大切なのです。
07.
健康管理には細心の注意を
体調のコントロールはプロフェッショナルであるための基本。気力と体力が伴ってこそ、心からの笑顔でお客様をお迎えすることができるのです。
自己流の「セルフコンディションチェックリスト」を作成して、自分の体のコンディションを把握し、常にベストの体調を保てるよう努力しましょう。
08.
表情だけでも笑顔でいれば
心は後から付いてくる
お客様を歓迎する気持ちを伝えるのに一番効果的なのは「笑顔」です。相手を見つめて微笑むだけでも十分、歓迎する気持ちは伝わります。
人間ですから、毎日心から微笑むことは難しいものですが、それでも仕事のときは、自分の気持ちとは切り離して、笑顔を心がけるようにしましょう。
笑顔は「作る」ものではなく「出す」もの。微笑んでいれば心は後からついてきます。
09.
知識は「広く浅く」でOK
好奇心旺盛な聞き上手に
CAという仕事はさまざまなお客様とお話しする機会があります。そのときに大切なのは、興味を持って話を聞くこと。お客様はこちらが提供する話題よりも、会話が弾む相手を求めているのです。
日頃からアンテナを広く張って、テレビ、新聞、雑誌、本などからさまざまな情報を収集する習慣を付けましょう。深く理解するよりも、広く浅く知るようにしましょう。お客様から話題が出た時になんのことを言っているのか、だいたいの見当がつくレベルで十分です。
「詳しくはありませんが、教えてください」といった質問であれば、お話に興味を持ったことが伝わり、喜んでお話くださることが多いです。相手の方に興味を持って、自分の引き出しを増やしましょう。
10.
感情の波を顔に出さない
どんな時でも笑顔で
感情の波を感じさせないことは、相手への大切な気くばりです。
人間である以上、体調を崩すことも、悩み事を抱えていることもあるでしょう。しかし、心の状態を管理して質の高いサービスを提供できるのがプロフェッショナルです。自分のマネジメントができない人は、相手に左右されやすく、逆に相手のことも振り回しがち。
プライベートの状況を引きずらず、どんな時でも心を平静に保ち、にこやかに振る舞えるように努力しましょう。
11.
アピールは不要
「さりげない対応」を心がける
おもてなしは、お客様に認識してもらう程度で合格です。ことさらアピールしたり、リクエストされていないことまでするのは行き過ぎ。
お客様の状況や表情を観察しながら、感じ取ることが大切なのです。最初からサービスモード全開でいくと、お客様の気分を乱して怒られてしまったり、うるさい接遇だったという印象を与えてしまいます。強弱を調整しながらさりげない対応を目指しましょう。
『「また会いたい!」と言われる女(ひと)の気くばりのルール』
コンテンツ提供元:里岡美津奈
人材育成コンサルタント。1986年全日本空輸株式会社(ANA)に入社。在職中、VIP特別機搭乗を務め、皇室、各国元首脳の接遇で高い評価を得る。2010年に退職。現在は人材育成コンサルタントとして、一般企業や病院でコミュニケーションスキルアップの指導にあたっている。