「エンタメ」と「おもてなし」の精神がつくりだした唯一無二の「サラダ」
何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。
それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。
アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?
シーザーサラダの日
レタスの一種にロメインレタスというのがありますよね。エーゲ海に浮かぶコス島が原産のこのレタスは、玉レタスのように結球しない、リーフレタスの仲間。
焼いたり炒めたりしても葉脈のシャキシャキの食感がおいしいこのレタスですが、そのほとんどの活用法は、なんといってもシーザーサラダでしょう。
今日、7月4日は「シーザーサラダの日」だそうです。
ロメインレタスにパルメザンチーズ、クルトンなどの具材でつくられるシンプルなサラダはアレンジ性能も抜群で、グリルしたチキンや野菜、エビなんかをトッピングするだけでボリュームある一品へと昇華します。
このシーザーサラダ、古代ローマの皇帝(ジュリアス・シーザー)の名にちなんで命名されたなんて思ってません?
答えはNO。
イタリアから遠く離れた、メキシコの都市ティファナで誕生したシーザーサラダについて、今朝はちょっと深掘りしてみましょう。
現在の原型となるシーザーサラダを考案したのは、ティファナでレストラン「Caesar's Place」を経営していたイタリア系移民のCaesar CardiniとAlex兄弟。「シーザー」とは彼らの名前だったんですね。
で、シーザー兄弟によるこのオリジナルサラダが誕生したのは、1924年7月4日のことだとか。
じつは、この時代アメリカでは禁酒法が施行されていて、アメリカと国境を接する街ティファナには、お酒とおいしい食事を求めてたくさんのアメリカ人で賑わっていたんだそう。なかには、ハリウッドで働く映画関係者、芸能関係者も多くいたとか。
さて、7月4日といえばアメリカの独立記念日です。
お祝いムード一色のアメリカに多くの食材が供給され、品不足に陥っていた「Caesar's Place」。それでも、わざわざレストランを訪ねてきてくれるハリウッドからのお客たちに、兄弟はありあわせの食材をかき集めて、彼らの前でライブでサラダを作り上げるという演出を思いつきました。
シャキシャキのロメインレタスをテーブルでちぎり、クルトン、かるく火を通した卵(コドルド・エッグ)、パルメザンチーズを加え目の前でそれらを和えて提供したそうです。
目の前で繰り広げられる見たこともない演出と初めて食べる味に心奪われたハリウッドセレブたち。まさしくアカデミー賞クラスのサラダ誕生の瞬間でした。
こうしてシーザー兄弟のサラダ(シーザーサラダ)は一躍有名となり、アメリカから世界へと羽ばたいていくこととなったのです。
1940年代にはアメリカ初のグルメ誌『Gourumet Magazine』が、「今をときめく美食のハイライト」と賞すれば、53年にはパリの国際美食家学会が「この半世紀アメリカ大陸から生まれた最高のレシピ」とまで評価。
これだけ見ても、いかにシーザーサラダの登場がセンセーショナルだったかがわかりますよね。
食のエンターテインメント性とおもてなしの心が融合した、唯一無二のサラダのはじめてものがたりでした。