むし歯予防のフッ素が残りにくくなる?歯磨き粉に潜む意外なトレードオフ

歯磨き粉を選ぶとき、フッ素配合かどうかを気にする人は多いかもしれません。

では、同じ歯磨き粉に入っている研磨剤のほうはどうでしょうか。白さやステイン除去をうたうこの成分が、フッ素の働きに影響を与えている可能性を示す研究が発表されました。

研磨剤が多いほど
フッ素が口に残りにくい

研磨剤の配合濃度(0%・10%・20%・30%)ごとに、すすぎ1〜3回目で歯から検出されたフッ化物濃度を比較した棒グラフ
© ウエルテック株式会社

広島大学大学院医系科学研究科の野村良太教授らと、予防歯科製品を手がけるウエルテック株式会社の共同研究グループが、2026年9月にこの成果を発表しました。論文は学術誌「Dentistry Journal」に掲載されています。

研究は3段階で行われました。まず、健康な成人7名に研磨剤入りと研磨剤なしの市販歯磨き粉を計5種類使ってもらい、磨いたあとの口の中にどれだけフッ素が残っているかを時間ごとに測定しました。

その結果、研磨剤を含まない歯磨き粉を使ったときが、磨いてから5分以降のすべての測定時点で、口の中のフッ素濃度がもっとも高い傾向を示しました。

さらに、同じ処方の歯磨き粉で研磨剤の量だけを0%・10%・20%・30%と変えた比較実験でも、研磨剤0%のものが磨いて10分後以降、ほかの濃度より高いフッ素濃度を保ちました。人工の歯の材料を使った実験でも同様の傾向が確認されています。

「白さ」と
「むし歯予防」のトレードオフ

これらの結果から、研磨剤が歯の表面に付着したフッ素を物理的にこすり落としている可能性が示されました。フッ素はむし歯を防ぐために、磨いたあともある程度の濃度で口の中にとどまることが大切だとされています。研磨剤がその残留を妨げているとすれば、白さを求める成分とむし歯予防の成分が、同じチューブの中でぶつかり合っていることになります。

ただし、研究グループは研磨剤を含まない歯磨き粉が一律に優れているわけではないと明記しています。研磨剤には歯の着色汚れを落としたり、歯垢を効率よく除去したりする役割があり、目的に応じた使い分けが大切だとしています。

毎日の歯磨きに
「選ぶ基準」がひとつ増える

今回の研究は被験者7名という少人数で行われた探索的なもので、実際にむし歯の発生率がどれだけ変わるかまでは検証されていません。また、ウエルテックが自社の研磨剤無配合製品「ジェルコートF」を提供して行った産学連携研究である点も踏まえておく必要があります。

それでも、毎日2回、3回と繰り返す歯磨きの中に、知らないうちにトレードオフが潜んでいたかもしれないという視点は新鮮ではないでしょうか。フッ素配合かどうかだけでなく、研磨剤が入っているかどうかも、歯磨き粉を選ぶときのひとつの判断材料になりそうです。

Top image: © iStock.com / busracavus
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