右向きで寝るクセ、歩き方にも表れていた。研究で見えた「寝姿勢」と体の意外な関係
花王ヒューマンヘルスケア研究所が、睡眠中の姿勢——いわゆる「寝姿勢」のクセが、眠りの質だけでなく、起きているときの歩行姿勢とも連動している可能性を示す研究成果を発表しました。寝具でも睡眠時間でもなく、「自分がどちら向きで寝ているか」が鍵になるかもしれない、という話です。
寝返りは多いのに深く眠れない
横向き寝の「片側偏り」という盲点

この研究は、30〜50代の日本人男女196名を対象に、心拍計に搭載された3軸加速度センサーで睡眠中の体の向き・体動・自律神経の活動を1週間にわたって連続測定したもの。2026年6月に開催された第22回日本疲労学会総会・学術集会で発表されました。
まず興味深いのは、5夜以上のデータが取れた98名を分析したところ、多くの人が毎晩ほぼ同じ姿勢で眠っていたという事実です。仰向け派は毎晩仰向け、右向き派は毎晩右向き。寝姿勢には、自分では気づきにくい「クセ」がしっかり刻まれていたわけです。
そして、横向きで寝る割合が多い人ほど寝返りの回数が増え、浅い睡眠——体動量や心拍のゆらぎが相対的に大きい状態——が多く出現する傾向がありました。さらに注目すべきは、睡眠時間の50%以上を横向きで過ごす人のうち、左右どちらか一方に偏って寝ている人は、偏りが少ない人に比べて、睡眠のもっとも深まる時間帯(睡眠中央時刻の前後90分)の副交感神経活動が低かったこと。副交感神経が優位になるほど体はリラックスし、深い睡眠に入りやすくなるとされています。つまり、片側ばかり向いて寝るクセが、眠りの「深さ」そのものを削っている可能性があるのです。
右を上にして寝る人は
歩くときも右に回旋していた
ここからが、この研究のもっとも意外なところ。花王が独自に開発したWalk Coordinator(ウォークコーディネーター)という技術——スマートフォンをお腹に抱えて8歩歩くだけで、歩行中の骨格や関節のバランス(身体アライメント)を解析できる仕組み——を使い、寝姿勢と日中の歩行姿勢の関係を調べたのです。
結果、横向き姿勢の割合が高い人ほど、歩行時の身体アライメントのゆがみが大きい傾向にありました。そしてもっとも具体的だったのが、睡眠中に右側を上にして寝る時間が長い人は、歩行時にも右側への回旋が強く出ていたという発見です。
夜の寝姿勢と昼の歩き方が、鏡のように対応している。これは「睡眠の質は夜だけの問題」という従来の常識を揺さぶる視点ではないでしょうか。
高価な寝具の前に、
まず「どちら向きで寝落ちするか」
日本リカバリー協会が全国10万人を対象に行った調査「日本の疲労状況2025」によると、20〜70代の約8割が疲労感を自覚しており、特に20〜40代の現役世代で疲労傾向が高いと報告されています。「ちゃんと寝ているはずなのに疲れが取れない」——そんな実感を持つ人は少なくないはずです。
これまで睡眠改善といえば、寝室の温度や照明、寝具の硬さ、入眠前のルーティンなど、「夜の環境をどう整えるか」が中心でした。けれどこの研究が示唆しているのは、昼間の歩き方のクセが夜の寝姿勢に現れ、偏った寝姿勢が副交感神経の働きを妨げ、睡眠の質を下げる——そんな24時間の循環が、私たちの体の中で静かに回っているかもしれないということ。
高価なマットレスを買い替える前に、まず今夜、自分がどちら向きで眠りに落ちるか、少しだけ意識してみる。それだけで、疲れとの付き合い方が変わる最初の一歩になるかもしれません。






