「隠す」から「魅せる」へ。パリのランウェイで変わる医療装具の常識
お腹に装着した医療用の袋を、あえて服の外に見せて歩く姿を想像したことがあるでしょうか。
病気や事故で人工肛門などを造設したオストメイトと呼ばれる人々にとって、日常を支えるストーマ装具は、長らく人目を避けて隠すものでした。その当たり前を覆す試みが、フランス・パリで形になりました。
「隠すもの」だった医療装具を、
自分らしさを語る表現へ
2026年10月6日、パリでオストメイトのためのファッションショー「STOMA Néo-ART Project」が開かれました。
主催したのは、一般社団法人日本福祉医療ファッション協会です。誰もがおしゃれを楽しめる世界を目指し、装具を中心としたオストメイトにしかできないトータルファッションを提案しました。
オストメイトは外見からは分かりにくく、排泄というデリケートな事情から周囲に打ち明けにくい現実があります。そのため、社会的な理解が進みにくい課題を抱えてきました。
そこで生まれたのが、「隠す」から「魅せる」への転換です。医療器具を隠すべき対象ではなく、自分の個性を表現するアイテムへと捉え直す挑戦でした。
肌への優しさと美しさを両立する、
老舗メーカーの技術

ランウェイを歩くモデルのために特別な装具を製作したのが、国産唯一のストーマ装具メーカーであるアルケア株式会社です。
1965年に日本初のストーマ装具を開発して以来、同社は60年以上にわたり当事者の肌と暮らしに向き合ってきました。今回の舞台でも、その長年の知見が生かされています。
東京都墨田区にある研究所で、モデルのストーマのサイズや普段使用している装具を直接聞き取りました。密閉性や柔軟性を保ちながら、鮮やかなデザインを貼り付けるための試行錯誤が重ねられました。
試作品を手にしたモデルの小菅キャスリン綾子さんは、肌への配慮に安心感を覚えたと語ります。「それ何?と盛り上がることができたら、隠すものというイメージも一気に変わるはず」と期待を寄せました。
同社で開発を担当した羽賀悠太氏によると、一過性のイベントに終わらせず、今後は個々の希望に寄り添ったデザイン装具の提供につなげたいとのことです。
身体を守るための医療ケア用品が、これからは着る人の誇りや会話を生み出す存在へ変わっていくのではないでしょうか。






