アメリカではなく、日本の話!先進企業のユニークな人事評価制度
企業で働いていれば、ついて回るのが給料と評価。かつては年功序列がほとんどだった企業でも、時代の流れとともに新しい制度を導入しつつあります。労働の対価として求められるのは、必ずしも給料だけではなくなってきているのかもしれません。
自著『あたらしい働き方』から、近年増え始めた企業のあたらしい給与・評価制度をご紹介します。
01.
高い給料よりも
フレキシブルな働き方
あたらしい働き方を取り入れている会社には、ひとつの傾向がありました。それは、「高い給料にこだわっている会社は意外に少ない」ということ。
自由な働き方をさまざまに模索しているITコンサルティング会社のホワイトストラタスも、同業の平均と比べれば、給料は低いほう。あたらしく、未来を目指している会社なので、まだペイは低いということもありますが、給料が多くなくてもそれ以上の魅力が会社にあることは間違いありません。
例えば、フレキシブルな働き方を認めてもらえることも魅力のひとつでしょう。伝統的な大企業というのはフレキシブルな働き方をなかなか認めてくれません。自分にとって子供と過ごす時間やたっぷりとしたバケーションのほうが、高い給料よりも魅力的だ、と認識できたなら、どちらを選択するべきかは明白です。
02.
ボーナスは全員一律
社内での競争は不要
01.では「あたらしい働き方を取り入れている会社は、高い給料にこだわっていないところが多い」と言いました。しかし、その前提として、あたらしい働き方を求めている人たちは、給料に関してはそれほど大きなこだわりを持っていないのかもしれません。そういう動きに気付き、大胆な仕組みを取り入れている会社もあります。
ボーナスが全社員一律、階層が同じならば給与も全員同じ、という制度をとっているのが、日本企業のスタートトゥデイ。
これでは競争心理が働かなくなり、モチベーションが保てないのではないか、とも思えます。ところが、これはむしろ社員に競争をさせないようにするために生まれた制度なのだそう。
最近では能力主義の浸透で、会社内の競争が厳しくなっている会社も多いでしょう。しかし、本来競争すべきは社内の同僚ではない。競争相手は、社外の競合なのです。
03.
社員が納得する
評価の仕組みは、指名制
最近多いのが、単純に上司が査定するのではなく、部下や同僚も自分を評価する360度評価を持っている会社。
しかし、360度評価の導入は難しいのが現実。人間関係に左右されて、正しい評価がなされないからです。
そこで、大手企業向けERPパッケージソフトメーカー、ワークスアプリケーションズでは、ただ360度評価を導入するだけでなく、「自分が評価してもらう人を指名する」という仕組みを付け加えています。
自分が誰に評価してもらうべきなのか考え、指名する。自分が選んだ人から厳しい評価が出てくれば、それを受け入れるしかない。そのため、評価に関する不平はほとんどないのだそうです。
「こんなに頑張っているのに、自分は評価されない」といった評価への不満は出やすいもの。社員が納得できる評価の仕組みを作ることも、仕事へのモチベーションを上げる重要なファクターなのです。
04.
報酬はチーム内の
評価で決まる
面白法人、としても有名なカヤックでは、職種ごとに実力ランキングが作られています。たとえば20人いる職種ならば、1番実力があると思う人に20点をつけ、20番目であれば1点。社員全員が行います。リーダーの点数を少し強めに、新人社員の点数は少し弱めに調整して、すべての点数を足したランキングが、報酬の基準になるのです。
報酬を決めるランキング以外にもカヤックでは様々な評価システムが作られていますが、なんと、誰がどんな評価をしたのかはオープンになっているのだそうです。
カヤックでは、厳しい評価は愛情である、という考え方が根付いており、評価する側も評価される。全社員が評価に参加し、なおかつ適性に評価を行うための、独自の仕組みを作り上げているのです。
05.
雇われるのではなく
プラットフォームとしての会社
給料をもらって生活するということは、会社に依存してしまう生き方を作ってしまう恐れがあります。
Livertyの代表を務める家入氏は、20歳を過ぎてからビジネスを起こし、当時の史上最年少の上場記録を作ったこともある人物。彼は雇用することにずっと違和感を持っていたといいます。
そこで思いついたのが、組織に依存することなく、お金が稼げるプラットフォームでした。基本的に出入りは自由。ゆるいつながりの人間が集まって、意見をぶつけあいながら何かを始める。定期的な給料は発生しませんが、自分で起こしたものから収益を得ることができるのです。
現在、10以上のユニークなサービスが生まれています。儲かっているものもあれば儲かっていないものもあるようですが、そこに参加している人たちが協力し合い、経営知識のある人が教えたりもして、起業塾のような場にもなっています。
06.
人事が作らない
人事制度って、一体ナンダ?
そもそも、ユニークな制度のある会社は、どうやって制度を作っているのでしょうか。ホテル・ウェディング・レストラン・MICE&パーティー事業のポータルサイト、Plan・Do・Seeでは、なんと人事制度を人事が作らないのだそうです。
「現場のメンバーが、人事制度を作っています。こんな制度だったら自分たちはうれしいね、とか、公平だね、とか、いろんな議論をする。いいマネージャーや活躍しているメンバーがいれば、どうすればそういうスターが生まれるのかを考えて、社員がベースを作る。人事はそれに付き添って、ディスカッションしながら最終的にまとめていくお手伝いをするような役割なんです」
人事部門の担当者も、専任ではなく現場からどんどん入れ替わっていきます。だから発想が柔軟になる。ルールは一度作ったら終わりではなく、5年前に作ったルールが時代に合わなくなってきていれば、どんどん作り替えていきます。
仕組みやルールを守ることが、組織の目的ではありません。成果が出せて、社員が心地よく働けるための仕組みやルールであればいい。そんな風に考える会社もあるのです。
『あたらしい働き方』
コンテンツ提供元:本田直之