「不安情報社会」の波に呑まれないための方法

この国の多くの企業は人々の不安を煽ることで利益をあげ、経営を維持してきた。その影響からか、不安や悩みを「真に受けている人」があまりにも多すぎると私は感じる。ここでは、「不安情報社会」の現状と、その波に呑まれないための対処法を紹介しよう。

老後に1億円も必要だって
誰が決めた?

私は、講演会やセミナーを開くことで、たくさんの読者や仲間と接してきた。そして強烈に感じたのは、「いろいろな不安を抱えている人がこんなに多いのか!」ということだった。愕然とした。マジでヤバいと思った。そのような人たちの大半は、セミナーに申し込んだり、ネットの塾に入ったり、教材を買ったりと、答えの出ないところに迷い込んで、さらに悩みを深めてしまっている場合がほとんどだ。

私が常に言い続けてきたのは、「不安なんて幻想だ」ということ。どうして頭を痛めているのか、エネルギーを使うのか、何におびえているのかと、ずっと言ってきた。しかし、問題はそう単純じゃない。冷静に考えてみると、ある要因が浮かび上がってきた。

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それは、社会全体が「不安情報だらけ」だということ。インターネットでは、「老後には1億円は貯めないと、まともな生活ができません」など、とにかく不安を煽る内容の情報が多いのだ。これはファッションでも同じ。「この服着たらダサいよね」とか「彼女ができなかったら人間としてダメだよね」など。はっきりいって大きなお世話である。では、なぜこのような状況になってしまったのか?

戦後、一丸となって成長してきたこの国は、世界でも類のないほど豊かになった。国民のほとんどが中流意識を持ち、物質的にも恵まれた環境が整っている。何も買えないのではなく、もうほとんどを所有し、実は欲しいものなんて何もない。

不安な情報を流さない限り、誰も何も買わない。必要なものは、もはや手に入ってしまっている。何も買われないと企業は発展しないので、企業側は不安な情報を流すことで購買意欲を煽る方法を練る。それが、今私たちが生きている社会だ。

人生や夢さえも選択できない
「不感症人間」を製造

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私たちの大半が、自分の人生や生き方や抱く夢を決められない状況にいるなら、それは誰かの「好き」「嫌い」を自分の意志で選択しているように思い込んでいるだけなのかもしれない。だから、なんとなく生きづらい、生きている気がしない、一生懸命に生きる気力が湧いてこない…という事態が起こる。

これは誰か個人のせいというわけではなく、学校教育を中心とした社会のシステムが、長い時間をかけて感情を押し殺して生きる人間を製造してしまった結果かもしれない。自分自身の感情を抑える、周りから押しつけられたキャラクターを演じなければいけない…この両方によって感覚が麻痺してしまい、素直に演じることができない「不感症人間」にされてしまうのだ。

精神世界や現実逃避に走るのは
「暇」だから!?

なぜ誰もが現実逃避することができるのだろうか。簡単にいえば、「暇」だからだ。どういう意味で暇かというと、「生きるため」に暇だということだ。

日本で暮らしているほとんどの人は、死への恐怖がない環境で生きている。餓死する恐怖もないし、空爆にさらされるような恐怖もない。時々、凶悪犯罪は起きるが、外国に比べたら超安全な国。こういう環境において、私たちは「リアル」に死を意識することができない。

でも、「死」がないと「生」を意識することは難しい。あまりにも「死」を日常で感じることができないために、「生」を感じることもできなくなってしまった。「死」や「生」は、とても身体的なものだ。もはや、身体的な感覚すらも麻痺してしまうくらい現実から離れている人が多いのが今のこの国の現実なのだ。だから精神世界や夢という現実逃避に走る人が後を絶たない。

「不安情報社会」の
餌食にならないために

ここで、私たちがこの社会の中を生きていく方法を2 つ提示してみたい。ひとつは、「不安情報だらけだという前提で生きること」。あらゆる情報に対して信じないと頑に思うのではなく、自分にとって欲しいものなのか、必要なものなのかを考えること。あくまで世の中の不安を煽るような情報というのは、意図があって働いていると把握すべきだ。

もうひとつは単純なことだ。「目の前のことに集中しろ。今この瞬間に、正直に生きろ!」これしかない。これができなければ、絶対にあらゆる点でうまくいかない。「自分は運が悪い、火消し人生だ」と自分のことを卑下する人は、心ここにあらずで、いつも不安な情報に煽られながら、起きもしない将来の不安を考えたり、過去の出来事にとらわれたりしている。実はそのような人こそ、「不安情報社会」の格好の餌食となっているのだ。

人生においては自分の思いや感情を正直にさらけ出し、目の前にいる人と真剣に向き合いながら、お互いが共感し合うことで、瞬間にいい関係が生まれたり、価値が生まれたりするのではないか。これは人生において重要なポイントである。

超一流の二流をめざせ!
コンテンツ提供元:サンマーク出版

長倉顕太/Kenta Nagakura

プロデューサー、コンテンツマーケター。編集者としてベストセラーを連発。10年間で手がけた書籍の販売部数は1000万部以上に及ぶ。現在は独立し、コンテンツ(書籍、電子書籍、オウンドメディア)のプロデュースならびに、これらを活用したマーケティングを個人や企業にコンサルティング。無名の新人をプロデュースして、ベストセラー著者へと導く手腕が高く評価されている。

TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。