考える力のない人が、仕事で陥りがちな「4つの落とし穴」
「人間は考える葦である」と書いたのは、17世紀のフランスの思想家パスカルだった。要するに、人間は葦のようにか弱いが、思考する能力をもつ偉大な存在だということを語っている。それほどまでに、人間にとって考えることは大事なのだ。
現代社会においては、その思考力がより求められている印象を受けるが、自分で考えるのが苦手な人も少なくはない。今回は、書籍『バカに見える人の習慣』(樋口裕一・著)より、考える力のない人がつい仕事でおかしてしまいがちな間違いについて紹介しよう。
01.
自分の体験を普遍化する
「パリは気候がよくて、治安もよい最高の都市だ。私が行った3日間、ずっと晴れていて気温もちょうどよく、一度もトラブルに遭わなかったから」。これでは、たったの1回の例で「パリは危険な都市だ」ということにもなりかねない。少ないデータに基づいているという自覚があれば、それでもよいが、このタイプの人はそれを普遍的な真実であると思い込んでしまう。
しかし、言うまでもないことだが、パリには天気の良い日も悪い日もあるし、犯罪に遭う人も遭わない人もいる。ある県の出身者にも様々なタイプの人がいて、一律化するのは難しい。もちろん、ある程度の傾向はあるにせよ、それを証明するためには、もっと大きなデータが必要だ。ところが、このタイプの人はごく少ないデータで、少しも不足を感じないのだ。
02.
物事の判断基準は
好きか嫌いか
仕事において、嫌いな人とも行動しないわけにはいかない。職場に腹立たしい人がいるというのは、ごく当然のことだ。むしろ、そのような人がいない職場で働いていたら、奇跡的に幸運だと思うべきだろう。職場に嫌いな人がいないにしても、少なくとも取引先や客には嫌いな人がいるだろう。嫌いだからイヤだ、と言っていたのでは仕事にならない。
それなのに、このタイプの人は嫌いな人とは口をきこうとしない。近づこうともしない。そうすれば自分も困ったことになると分かっているのに、感情を優先するのだ。
03.
「とりあえず」の行動が多い
すべてにおいて「とりあえず」の方法をとる、「とりあえず」目の前の現象をなくすことだけを考えるのがこのタイプの特徴だ。
口うるさい上司がいるとする。本来であれば、その上司の言うことが正論かどうか、その言葉を聞くべきかどうかを考えて、納得がいけば自分を変える必要があるだろうし、納得がいかなければ、何らかの形で話をする必要があるだろう。
だが、このタイプの人は、とりあえずその上司と顔を合わせないことを考える。あるいは少なくとも、時間を後にのばすことを考える。いつまでも逃げようとする。
04.
基本的に行き当たりばったり
行き当たりばったりの人間は、周囲の様々な声に影響され、想像力をかきたてられて不安になったり、興味を抱いたりして、方針を変えていく。「あそこのエレベーターが壊れていたら大変なことになるので、対策が必要だ」、「あそこに数人配置すると、もしかすると注目する人が増えてうまくいくかもしれない」などといったことをその場で思いつき、想像力を刺激されて、それさえやればうまくいくような気がする。そして、思いつきで実行しようとする。
もちろん、その場その場の思いつきが大成功をもたらすこともある。だが、それが混乱を引き起こすことのほうが多い。そもそもここに書いたようなことは、前もってその場所を訪れて想像し、健全な想像力を働かせて、前日までに準備をしておくべきことなのだ。