仕事はがむしゃらに、でも自分自身を犠牲にしない。女性リーダーがもつ「しなやかさ」の作り方
仕事にはフルコミットする、でも結婚や出産といったプライベートは犠牲にしない。そんな理想的な生き方を実践している女性たちに共通するのが「しなやかさ」というキーワード。 それは、柔軟でありながらもブレない芯をもっていること。身につけるためにはどうしたらいいのか。
3月15日(火)、Panasonic Let'snote Premium EditionとTABI LABOが開催した「しなやかさの作り方〜らしく生きる女性たちのストーリー〜」では、さまざまな分野で活躍する女性リーダーを招き、語ってもらいました。
「しなやかさ」は
素の自分と向き合って
はじめて手に入る
登壇者は、アクセンチュアジャパン執行役員・堀江章子さん、株式会HASUNA代表取締役社長・白木夏子さん、株式会社サイバーエージェント・クラウドファンディング取締役・坊垣佳奈さんの3人。そして、司会進行役であるモデレーターは、フォーブス ジャパン副編集長・谷本有香さんが務めました。
(登壇者のプロフィールは、記事の最後に)
トークセッション第一部のテーマは「私がしなやかさを身につけるまで」。それぞれに一言で表現してもらいました。
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白木 私は、「しなやかさ」とは「強さ」だと思います。2009年にジュエリーブランド「HASUNA」を立ち上げて、今年で8年目なのですが、ありがたいことに、企業でマネジメントをしていたり、自身で事業を立ち上げたりといった、社会の最前線で活躍されている女性たちに選んでいただけるブランドになりました。
そして、そんな女性たちを間近で見て感じたのが、彼女たちは一様に「強さ」を持っているということです。というのも、「HASUNA」はフェアトレードによってジュエリーの原産国やその地域で働く人たちにとって本当にいいことをしようとしているブランド。そういった背景を知ったうえで、自分が身に付けるものを選ぶというのはポリシーや生き方という「強さ」を持っているということだと思います。それも、岩のようなかたくなな強さではなく、しなっても元に戻るバネのような強さが「しなやかさ」なのかなと思います。 坊垣 私にとっての「しなやかさ」は「多様性を受け入れること」です。サイバーエージェントに新卒で入社してから10年、ネット業界は変化が激しいといわれるように、日々めまぐるしく環境が変わっていきました。とくに私は、これまで4つの事業の立ち上げに関わってきたので、環境の変化は日常茶飯事。その経験から、自分自身が柔軟になった方が、いろいろなことがうまくいくと学びました。
入社してすぐのころは、「こうでなくてはいけない」という思いが強くてとても頑固でした。正直なところ、今でも自分が「しなやかさ」を身につけられているかというと自信がないんですが、月日が経つごとに、多様性を受け入れられるようになってきた気がします。 それから、マネジメントをする立場になって、柔軟であることの大切さがより強く感じられるようになりました。サイバーエージェントでは新卒採用を積極的に行っているので、自分よりかなり年下のメンバーと仕事をすることも多いんですよ。そのとき、自分のやり方一辺倒だと無駄な衝突を生むだけ。だから私は、自分がそれぞれのメンバーに合わせるようにしています。自分が変わらないと、周りは変えられないと思うので。
堀江 私は「決めつけないこと」が「しなやかさ」だとさせてもらいました。新卒でアクセンチュアに入社してから23年。坊垣さんがおっしゃっていたように、私も入社したてのころは「こうじゃなくちゃダメ」と意固地になっている部分が大きかったと思います。でも実は、そういうときほど失敗しやすい。思わぬ落とし穴に落ちたり、出鼻をくじかれたり……。環境や状況の変化に対応できないと、何事もやり遂げられないと学んできたので、「決めつけない」ことが大切だなと。
コンサルタントというと、なにごともロジカルにこなしていると思われがちですが、それはあくまで結果論。過程はすべてがロジックどおりに進むとは限りません。だから、臨機応変に最善を尽くしていかなければならないんです。ただ、起こったことにロジカルな理由をつけるのは得意ですが(笑) 谷本 みなさんそれぞれに「しなやかさ」のコンセプトをお持ちですが、お話を伺っていると、共通する部分も多いような気がします。やはり「しなやかさ」とは、女性ならではの要素なのでしょうか。それとももしかしたら、男女問わず必要なものなのかもしれません。みなさんは、これまでのキャリアのなかで女性であってよかったこと、もしくは女性だからこそ悔しい思いをしたという経験はありますか。
堀江 とくに金融系などお客様は、上層部に女性がいることはほとんどないので、めずらしがって覚えてもらえるというのがよかったかもしれません。でも逆に、女性に責任のある仕事を預けることに抵抗がある人が多いので「あの人で大丈夫?」と言われて嫌な思いをしたこともありました。いまは、ベンチャーや外資の女性活躍の現状を見て、解消されつつあるんですけどね。
実際、男であろうと女であろうと、古いものに固執していたら成功できないですよね。いろいろな業界で日々変化が起こっているので、男女問わず「しなやかさ」は大切だと思います。
坊垣 ネット業界は比較的新しいぶん、女性の活用は自然なことで、あまり「女性だから」というのを意識したことはないですね。ただ、やっぱり男女の考え方や思考法は違うなと思います。女性は感性が強いぶん、メンバーの不調にいち早く気づけたり、言葉を選んだ声かけができたり……、マネジメントに活かせる部分は大きいです。
個人的な意見ですが、男性が競争社会でナンバーワンを目指しているのに対して、女性は必要とされたいとか、自分らしくありたいとかオンリーワンになりたいという気持ちが強いような気がします。そういう違いをきちんと頭にいれておくと、チームがうまくまわるんです。
白木 私は、起業するときに女性起業家向けの融資を受けられたりはしました、でも、起業家としては「女性だから」ということはあまりないですね。商品を買っていただけるお客様に対しては、同じ女性という立場だからこそ、本当にほしいと思ってもらえるものを作れるんだと思いますが。 ただ実は「女性でよかったな」と思える瞬間があって……。私は年に何度か、パキスタンやペルー、コロンビアなどを訪れて、鉱山で働く女性たちに実際に会いに行くんです。彼女たちは、女性だからという理由できちんとした教育が受けられなかったり、理不尽な差別を受けていたりします。そんな彼女たちが「同じ女性のあなたが、一人で会社を起こして、一人でこんな遠いところまで足を運んでいるんだと思うと勇気が湧く」と。女性だからこそ、彼女たちの力になれているんだと思うと、本当にうれしかったですね。
谷本 ひとりの働くひととして、そして時には女性として、いろいろな経験を通して「しなやかさ」を身につけてきたみなさんですが、なにか、これまでの人生でターニングポイントになったと感じているできごとがあれば教えていただきたいのですが。
坊垣 私の場合はそれこそ、毎日がターニングポイントといえるかもしれません。これまで多くの環境の変化に対応し続けてきたので。変化することは怖いことでもありますが、最近はチャンスだと思えるようになってきましたね。
やっぱり、お互いが相手に変わってほしいと思ってしまうのが人間だと思うんです。だから私は自分から歩み寄るようにしています。マネジメントのやり方も、本人にどうしてほしいか聞くんです。その方がお互い楽なので。
それから、自分が自然体でいた方が相手も心をひらいてくれますね。ダメな部分もさらけ出していくというか……。その方がいろいろなことがスムーズに進みます。
白木 私も月日を重ねるごとに素の自分をさらけ出せるようになってきました。若いときは、「社長とはこうあるべき」という思いにとらわれていたので……。私が慌てると、スタッフみんなが不安になる、だからいつも落ち着いていなきゃと思っていました。
でも昨年、親友に「あなたは能面みたい」と言われてしまったんです。怒ることもないけど、思い切り笑うこともないって。それで、これまでずっと自分の感情にストッパーをかけていたことに気付いてハッとしました。だから、これからは自分を制限せずに、すべてをさらけ出そうと決めたんです。 それから、子どもや夫と全面的にぶつかり合うようになりました(笑)。ストッパーをかけなくなったら、とくに怒りの感情が湧き出てくるようになって。以前の私ならそういうマイナスの感情には蓋をしていたけれど、今はそれが自分の本当気持ちなんだと受け止めて開放するようにしています。自分自身に嘘をつかないことが、周囲の人に誠実でいることにつながると思うし。ありのままの自分と向き合うことが「しなやかさ」につながるのかもしれません。
堀江 いま、いろいろと思い巡らせていたのですが……、私にとってのターニングポイントは、たくさんの女性との出会いだったのかもしれないと思いました。グローバルな会社なので、海外の著名な女性にお会いすることが多かったんです。彼女たちは決まって「あなたは、どうなりたいの?」と聞いてくれる。しかも「みんなの成功が私の成功だから」なんてアドバイスまでしてくれるんです。
そのとき、私ぜんぜんなにも考えてなかったってことに気付いて。それで、自分は何をしたいの? そのために必要なことはなに? 自分に足りないものは?と考えるようになりました。そうやって、自分自身と向き合って考えを巡らせる時間が「しなやかさ」を保つためには必要なのかもしれないなと思います。
谷本 これまで、素を出すことや自分と向き合うことが「しなやかさ」を身につけるうえで必要というお話をしていただきましたが……これって、実はすごいこと。これまで、さまざまな男性のリーダーたちに会ってきましたが、個人的に彼らはプライドの生き物だと思っています。だから、感情をむき出しにしてもいいじゃないか、弱さをさらけ出してもいいじゃないかと、そう言えるリーダーはすごい。それこそが女性の強さにつながっているのかもしれませんね。
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三者三様の人生を歩んできた彼女たち。でもそれぞれが、ありのままの自分と向き合うこと、そしてそれを臆することなくさらけ出すことの大切さを知っているというのは感慨深い共通点です。
マイナスな気持ちも
エネルギーに変えられる
「しなやかさ」
そして、トークセッション第二部では、登壇者たちが「しなやかさ」を手に入れるまでに乗り越えてきた挫折や失敗についての話に。 谷本 さまざまな経験を通して「しなやかさ」を身につけられてきたみなさんですが、これまで挫折や失敗をした経験はありますか。
白木 挫折というか……起業をするときに、いろいろ悔しい思いをしました。ちょうどリーマンショックの後だったんですが、融資を受けるとき、バタバタとジュエリーの会社が潰れていくなかで身の丈に合っていないと嫌味を言われることがありました。それから、ジュエリー業界ってブラックボックスになっている部分が多くて、フェアトレードなんてありえない業界だったんです。だから、業界の人にとっては鼻持ちならない存在だったと思います。アドバイスをもらいに行って鼻で笑われることもありました。 いま振り返ると、嫌なことを言ってきたひとたちはみんな揃いも揃っておじさんだった!おじさんは凝り固まってて「しなやか」じゃないですね(笑)。
ただ、このとき悔しい思いをしたからこそ頑張れたのかなと思います。自分の考えた事業は社会的にも意味のあることだし、ビジネスとしてもちゃんと成り立つんだって、絶対証明してみせる!と、怒りのエネルギーを転換してこれまでやってきたように思います。さっき言ったように表にはまったく出してこなかったんですが。
それから、大学生のとき訪れたインドの村で、ボロボロになりながら鉱山で働く女性や子どもたちを目の当たりにしたときの強い感情も、大きなエネルギーになりました。今思うと、これもどこにぶつけたらいいかわからないような怒りの感情だったのかもしれません。この人たちを、自分がなんとかしなきゃいけない。それが自分の使命だという強い感情は常に持っていました。
坊垣 私は、挫折しそうになったとき、あります。10年前、会社がまだそんなにうまくいっていなかったころの話です。今と比べたら、知名度もほとんどないし、社員もかなり少ない。そんななか入社1年目で会社の立ち上げをやったんです。3年目の先輩が社長で、2年目の先輩2人が上司という環境で。正直誰も会社の立ち上げなんてやったことないから、わからないことだらけなんです。だから、とにかくがむしゃらに働いていて、朝4時に退社して、朝8時に出勤みたいな生活でした。
そのときは、自分の時間なんて一切なくて、身体もボロボロ。本当に辛くて、挫折しかけました。 どうしてそんな状態でも頑張れたかというと、負けず嫌いだったのはもちろん、とにかく自分のやるべきことを見つけなきゃと思っていたから。それから、父に相談したとき「いつでも辞めたらいい」という言葉。その言葉のおかげで開き直れたからもう一歩踏ん張れたんだと思います。
堀江 私の場合は、まさに女性であることが挫折につながってしまいました。アクセンチュアはグローバルな企業とはいっても、女性の管理職が多いかというと……当時は今ほどではありませんでした。だから、日本人の女性をマネジング・ディレクターに昇進させることへの周囲の戸惑いは少なからずあったようです。
そのうえ、私が昇進すると聞きつけた男性の同僚から嫉妬をぶつけられたこともありました。ここはさめざめ泣いている場面じゃない!と思いつつ、私が悪いことをしたわけじゃないのに、どうして責められなきゃいけないの?ってすごく嫌でした。このできごとはのちのちまで引きずりましたね。 上司には「忘れたほうがいい」と言われました。そのときは「忘れられるか!」と思ったんですが、もしかしたらそう言ってもらってよかったかもしれません。忘れていいんだと思えたから次に進めたというか。今なら、もっと違った対応もできると思いますし、女性が増えたことで社風も全然違うものになっています。ただ、それから、自分の言動には注意を払うようになりました。自分にそのつもりがなくても、誰かを不快にさせてるかもしれないので。
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理想的なライフスタイルを送っている彼女たちも、数々の挫折や失敗を乗り越えて今の「しなやかさ」を手に入れたようです。
柔軟なのに、芯がある。
それが女性の「しなやかさ」
実は、今回このイベントに参加した女性たちもさまざまな分野でリーダーとして活躍している人ばかり。そんな参加者からの質問に登壇した3人が答える一幕がありました。
Q: 何かを成し遂げるうえで感じる恐怖との向き合い方は?
白木 私は業界に一石を投じるようなことをやっているので、バッシングや嫌がらせが怖かったですね。でもある人に、恐怖は絶対に消すことができない生物の本能的なものだと聞いてから考えが変わりました。野生動物だって、サバンナで恐怖と戦いながら生きているんですよ。だから、まずはその恐怖を受け入れて客観視する。そして、成功している自分の姿を想像する。この3ステップを繰り返すようにしています。
坊垣 年々肝が座ってきている気がしているんですが(笑)。私は不安や恐怖って、目の前のことにはあまり感じないのかなと思っていて。見えない未来に対して抱くものなんですよね。でも、それって時間の無駄だなと思えるようになりました。わからない未来を不安に思ったり怖がったりするんじゃなくて、とにかく目の前のやるべきことを精一杯やるだけじゃないですかね。
堀江 私は、不安や恐怖より「どうやって乗り越えようか」という気持ちがまさることが多いですね。この間テレビで、宮﨑駿さんがある作品を制作したとき、主人公の髪型を始めに決めたというのを目にしました。そのとき、大きなことを成し遂げるにしても、小さなことからひとつずつ設計してくしかないんだなと。だから、恐怖を感じることがあってもグズグズせずに「面白い」と思って取り組んだ方がいいと思います。 恐怖心との向き合い方には、それぞれのこれまでの経験が大きく反映されているようです。
続いてこんな質問も。
Q: 「しなやか」でありつつも譲れないポリシーやこだわりはありますか?
白木 昨年までは、毎年1年の目標を決めるのがこだわりでした。でも、ありのままの自分をさらけ出すと決めてから、徹底的になにも決めずに、とにかく流れに任せることにしたんです。ワクワクすることだけをやるというのが今のポリシーですかね。
坊垣 私は、もともとやりたいことがあまりなくて、インターネット業界に入ったのも、若いうちから意思決定ができるという環境で選んだから。でも今は、インターネットで世の中をいい方向に進められるような事業をやりたいと思っています。
堀江 コンサルタントの仕事は必ずお客様がいるものです。だから、お客様に無理をさせない、そして嘘をつかない、ずるいことはしない、チームみんなが仲良くできるようにする……と幼稚園や小学校で言われるような根本的なことを大切にしていきたいなと思います。
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環境の変化に柔軟に対応しながら、揺るがない芯を持っておくことが「しなやかさ」を身につけるうえで重要なことなのかもしれません。 そして、トークセッションのあとは参加者が4人一組になってワークショップを行いました。イベントで学んだことや、自分がもっている「しなやかさ」、いまぶつかっている壁をどうやって乗り越えてけばいいか……など各グループで自由にディスカッション。どのグループもすぐに打ち解けたようで、にぎやかな話し声が会場中に響いていました。
イベント参加者が発見した、その人にとっての「しなやかさ」を一部、ご紹介します!
“しなやかさ”は、経験がつくるもの
順応する力×強さ
人より少し、腰を低くすること
変わっていい、やめていいという気持ちを持つこと
みなさん思い思いの形で、ヒントを持ち帰っていただいたようです。
「しなやか」な女性たちの
生き方を自分の指針に
仕事を頑張るうえで、男女の違いは関係ない。そう思ってはいても、なんとなく違和感をおぼえたり、ふと無理をしている自分に気付いたりすることがあります。そんなとき、挫折や失敗を経て「しなやかさ」を身につけた女性たちの生き方が、頼れる指針になってくれるかもしれません。
前述の通り、このイベントはPanasonicのモバイルPCレッツノートの最高峰モデル「レッツノート プレミアムエディション」が仕事もプライベートもしなやかに生きる女性をサポートする活動の一環として開催されました。Panasonic Storeの特設サイト「Let’s talk Business! WOMEN ─自分らしく、しなやかに生きるために─」では、他にもさまざまな分野で活躍している女性たちの仕事への想いやライフスタイルを垣間見ることができますよ。
【イベント登壇者プロフィール】
Sponsored by Panasonic Store / Let’snote Premium Edition