「誰かから愛されることだけが、人生の最終ゴール」という、危険なウワサ

自らを「マスカラ・レズビアン」と呼び、アイメイクばっちりで女性らしい服装を楽しむZara Barrieさん。包み隠さないストレートな語り口で大人気の彼女は「Elite Daily」で恋愛相談も受け付けています。

今回は、とある「人生のウワサ」について。友人・オリヴィアとの経験談を交えながら「女性のあり方」を語ります。

人生の危険なウワサ
「愛を見つけなきゃいけない」

私がこれからするのは、ものすごくうざったい、女の子の人生を破壊する可能性のある、危険なウワサのお話よ。

それはね、「誰かから愛されることこそ、人生の最終目標であるべき」っていう考え方のこと。

私は、これは違うの。「愛を見つけること」が最終目標じゃなくて、「自分自身を見つけること」が最終目標であるべきだから。

誤解しないほしいんだけど、恋に落ちることは心ときめく素晴らしい体験よ。私だって恋に落ちたことがある。それはしびれるような、恐ろしい黒魔術のようなものだったわ。

でも、恋だけがあなたの心を深く動かすような体験というわけじゃない。

私たちは自分の心の穴を埋めるために他の誰かを探すことに時間をどんどん使ってしまい、自分を苦しめてしまう。本当は、自分の穴を埋める方法を学ぶべきなのに。

自分を完璧にするためには他の人を見つけなきゃいけないんだって思うと、そこにものすごいエネルギーを注ぎ込んじゃったり…。その結果、自分が人生で一番大切にすべきだったはずの絆をないがしろにしちゃうことだってあるの。

オリヴィアの話をさせて

10年ほど前、私とオリヴィアは同じ劇の中にキャスティングされていた。彼女は、愛にとらわれていたのよ。

私は「彼女タイプ」みたいな言葉は好きじゃないんだけど、でも、もし「彼女タイプ」っていうものがあるとしたら、オリヴィアはそういう人。

オリヴィアはすべてにおいて私と違うの。お酒は控えめだし、難しい料理だってできる。

私はレースのストッキングを揺らして、高価なデザイナー服とか、冬の寒空の下でもお腹が見えるような短いシャツを着るわけ。でも、オリヴィアは上院議員の妻みたいな格好。クルーネックのワンピースを着て、顔の半分はあるんじゃないかってくらいの大きなお団子で髪の毛を全部まとめてるの。

彼女はパール、私はコスチューム・ジュエリーって感じね。

彼ってば完璧なの。
ひとつだけ問題があるけど…

ある日、リハーサルにやってきたオリヴィアは浮かれていて、足取りは妖精のように軽かったわ。

「一体、何があったの?宝くじでも当たったの?」って私が聞くと、彼女は優雅に長い四肢を劇場の床に伸ばしたわ。

彼女の中で電気のスイッチがついたかのように、「うん、そうなの」って言った。

もう何も聞く必要はなかったわ。彼女は「男」っていう生物に出会ったの。

リハーサルのあと、ふたりでトライベッカのちょっと怪しげなバーに行って、私は白ワイン、彼女はゆったりと赤ワインを飲んだ。

「彼ってとっても素敵なの。自分のクリエイティブデザインの会社を持ってるのよ」

まるで彼が大統領でもあるかのように、彼女は胸を張って言ったわ。

「先週出会ったんだけど、稲妻が走ったわ。彼こそ運命の人よ。とにかく完璧なの。私が人生を賭けて求めてきた人だわ。私はもう恋に落ちているし、彼も同じ気持ちよ。ひとつだけ問題があるんだけど…」

と、すっきりとした小さな顔におかしな笑顔を浮かべて、彼女は声を落とした。

 「なんなの?」私はろれつが回ってなかった。いつになく、酔っ払っていたのね。

「彼はミシガンに住んでいるのよ、ザラ」

オリヴィアはため息をついて、こう言ったわ。

「私ミシガンに行こうと思うの」

私は血圧が上がってくるのを感じた。「あなた女優なのよ?ミシガンに行って何しようっていうの?」

「彼の仕事はそこが拠点なのよ」

オリヴィアは彼女の長くて細い腕を組んだ。

そのとき私はようやく20歳になった頃だったけど、急激に燃え上がるロマンスって未来につながらなくて、まったく論理的じゃないと思った。

そして、彼女は行っちゃったの、あの寒いミシガンに。振り返りもせずに。

ニューヨークに戻ってきた
オリヴィア

それからはFacebookの投稿以外、彼女から連絡はなかった。

彼女と新しい恋人の写真、彼女の恋人と彼の友だちの写真、彼女の恋人と彼の子どもたちの写真…。どれも私には退屈なもので、彼女が私のNewsfeedにあがってこなくなったことにも気付かなかった。私にはやるべきことがあったし、そのあと5年間はオリヴィアのことが私の心をよぎることはなかった。

でも、そんなある日、最悪だったオーディションから帰る途中のアッパー・ウエスト・サイドで、耳慣れた声が私の名前を呼ぶのが聞こえたの。オリヴィアだったわ。彼女はセントラル・パーク・ウエストのシックなレストランで席を待っていて、私が通りかかるのを見かけたの。

「今日、このあと飲みましょうよ」

そう嘆願する彼女は、毛穴から絶望がにじみ出ているかのようだった。

「ええ、もちろん…」私は予定があったんだけど、それでもこの子は気持ちが不安定になっていて、話を聞いてくれる人が必要なんだって思ったの。(女の子が精神的に不安定になっているサインを出しているときは、他の予定を全部キャンセルして、その子と一緒にいてあげるべきよね)

その夜、彼女の話を聞いたわ。オリヴィアは自分の人生のすべてをニューヨークに置いて、引っ越して、仕事も辞めて、女優業も辞めて、自分の存在のすべてを恋人に捧げたの。

だけど結局、彼女の完璧で大切な恋人は、それまでの9ヶ月間、黒髪で巨乳の元カノと浮気してたんだって。だからオリヴィアは、夢破れた街へと帰ってきたの。心にぽっかりと穴が開いて、ひとり孤独を感じ、将来を不安に思いながら、席を待っていたの。

重く、苦い涙が彼女の骨ばった顔をつたったわ。

「これから、どうしたらいいのかわからない」

と泣いた彼女の黒いマスカラが、マティーニの上に落ちていった。オリヴィアは趣味もなければ、面白いと思えるものだって何もなかった。

彼女の涙が、孤独への恐怖を物語っていたわ。ひとりっきりのアパートに帰るのが怖くて、誰かの元を去るのが嫌だったのね。

彼女はホームシックだって言ってたんだけど、それはきっと心のホームシック。彼女がどこへ行ったってつきまとうものなんだと思う。ニュージャージーのお母さんのところに行ったって、ううん、むしろそのほうがもっとホームシックになるわ。

私は、オリヴィアがいつもホームシックを感じているんだって気づいた。だって、彼女は自分自身のことを知らないんだもの。

オリヴィアの失敗を
繰り返さないで

彼女は、自分の存在すべてを賭けて愛を探してしまった。だけど、自分のことを知らなかった。彼女は、自分のことを愛していなかったのよ。

自分のことを知らなければ、人生はとっても寂しい体験になる。だって、あなたは一生「知らない人」と過ごすことになるんだから。

しばらくして、オリヴィアはまた別の人を見つけて、その人のことを考えるようになった。彼女にとって男性は、自分から目をそらして別のものに集中するための道具みたいなものなの。

女性はときに自分自身に注意を向けることが難しくなる。だって、幼い頃から他の人のためになるように、って教え込まれているんだもの。

すべてのことはみんなのために、っていうのが女性の役割といってもいいわ。両親のために完璧な娘でいること。道行く人々のために美しくあること。地下鉄で男に広いスペースをとってあげるために痩せておくこと。そして、両親に会うときには柔軟性を持っておくこと。

両親の夢じゃなくて、自分の夢を追い求めたら自己中だって言われるし、自分のスタイルや美を追い求めようとしたら信用してもらえなくなる。くつろいでいたら「男っぽい」って言われちゃう。恋人をつくらずに、自分で人生の選択をしようとしたら、ものすごくおかしい人だって思われちゃう。

女の最終目標は、みんなのためにあらゆるものになること。とくに自分の「生涯の」パートナーのためにね。

そして時にはオリヴィアのように、誰かに出会って、自分自身がすり減る恐怖を感じ、他の誰かのために自分が失われていくのを感じるの。そして、これもまたオリヴィアのように、私たちが出会う人たちは心変わりをして、私たちを置き去りにする。

そしたら、突然私たちはひとりになっちゃう。見知らぬ人。つまり、自分だけが残るの。

大事なことは、人間は予想がつかないってこと。私はそう思ってずっと主張しているんだけど、年をとるにつれて、そのことをもっと実感しているわ。

あなたの人生は
「どんな恋人を見つけたか」で
決まるわけじゃない

よく聞いてほしいことがあるの。私たちの幸福、充実、人生は他の誰かによって決まるものじゃない。その理由は2つあるわ。

1つ目。
他の誰かは、いつだって私たちを置き去りにする可能性があるの。裏切ることだってあるし、心変わりすることもあれば、死んでしまうこともある。あなたがどれだけ愛していたって、置いていかれたときのことは考えておかなければいけないわ。恋人はいつかいなくなるかもしれないけど、そのときに必ず自分は残るんだから。自分のことは好きでいられたほうがいいでしょう?

2つ目。
自分自身のことを愛せなければ、決して真実の愛を見つけることはできないわ。改めて言うのもおかしいくらいよく言われているセリフだけど、これって本当のことよ。

 

オリヴィアは、相手の男のことを愛してなかった。彼女は彼を利用していたの。薬とかお酒とかと一緒で、自分に向き合わないようにするために、自分のことを深く知らずに済むために、自分から逃げるために、彼を利用したの。

自分と向き合うのは怖いときもあるけれど、そうしないと真実の愛なんて見つからないわ。鏡に向き合って、そこに映った欠陥だらけの自分を受け入れて、自立して、誰かがあなたのことを「かわいい」って言ってくれなくても大丈夫になるまで、真実の愛は見つからない。

なぜなら「真実の愛」は、自分の心のスキマを埋めるために他人を求めているうちは、決して手に入らないものだから。

もしあなたが自分自身と深い関係性を築くことができたなら、同じように自分自身と深い関係を築いている人を引き寄せることになるわ。そうなったら、もう何があっても大丈夫。予想外なことがあっても、最高の親友がずっとそばにいてくれる。

その親友よりいい人なんて、どこにもいないわ。最高の親友。それは、あなた自身よ。

Licensed material used with permission by Elite Daily
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。