「あきらめたらそこで試合終了だよ」 安西先生の言葉に隠された人をやる気にさせる方法
1990年に連載を開始した、大ヒット漫画『スラムダンク』。当時、日本中にバスケブームを巻き起こすきっかけにもなりました。
そんなスラムダンクの登場人物たちは、多くの名言を残しています。遠越段さんの著書『人を動かす! 安西先生の言葉 「スラムダンク」に学んで成功しよう!』では、安西先生のコーチングレベルの高さが、スラムダンクのエピソードとともにまとめられています。その愛が溢れる行動や言葉は、日常生活においても参考になることばかりです。
強みを生かし、長所を伸ばす
三井寿は、安西先生の言葉に助けられた登場人物のひとり。
彼は、湘北高校に入学してバスケットボール部に入りますが、ケガをして辞めてしまいます。のちに三井は心の弱さから、不良たちと一緒にバスケットボール部に嫌がらせをし、部員に暴力を振るうようになりました。
そこに現れたのが、安西先生。三井には中学時代に安西先生からもらっていた言葉がありました。
「最後まで…希望を捨てちゃいかん あきらめたらそこで試合終了だよ」
この言葉が、三井を再び湘北高校バスケットボール部に呼び戻すことになります。
部員たちを見てみると、スタミナに不安はあるけど3ポイントの名手である三井、背は低いけどスピードでは誰にも負けない宮城、初心者でも人並み外れたパワーやジャンプ力を持つ桜木など、それぞれに長所と短所があります。
安西先生は、その愛ある言葉とコーチングによって強みを生かし、短所を意味のないものにしていきます。その誠実な人格と、そこにいる者たちを愛する気持ちが、彼らを強くしていったのかもしれません。
自らも信念と決断力を持つ
組織のメンバーの強み、長所を活かすことは、全体の力を強固にするために必要なことです。
湘北高校が県予選のトーナメントを順調に勝ち進んでいる頃、主人公の桜木花道は自信を失いかけていました。なんと4試合連続で退場処分となっていたのです。
しかし安西先生は、桜木のプレーを否定的に見ていませんでした。彼の積極的な動きや強い闘争心からくる現象として見ていたからです。あとは経験ときっかけで成長するだろうと感じていました。
そして大事な翔陽高校戦。試合前、安西先生は「リバウンドは君が制するんですよ」と桜木に伝えました。この信頼こそが、桜木の才能をどんどん引き出すことになります。桜木のリバウンド力が、高さを誇る翔陽高校と互角の戦いをもたらせたのです。
それを見た安西先生は「リバウンダーとしての素質を開花させ始めましたね彼は…」とこぼします。
この成功の兆しを見逃さず、認めて、信じて、追求させることを決断し、実行するのが安西流コーチングの優れたところなのでしょう。
心を鍛え、
内面の成長をはかることを促す
インターハイ県予選の決勝リーグ。初戦は海南大付属高校でした。高頭監督は湘北のペースを乱れさせようと、桜木に対して160cm・42㎏と小柄な宮益をマークにつけます。思うように動けなくなった桜木を見た安西先生は、彼をベンチに下げました。抵抗した桜木でしたが、安西先生は「問答無用 交替です これ以上弱点をさらす前に」と決して譲りませんでした。
せっかくの才能も、弱点だけを攻められたら伸びるものも伸びないし、自信や誇りも失いかねません。桜木自身も弱点や欠点を知ったことだし、次に修正すればいいと考えたのでしょう。
安西先生は、内面の成長を図るときだと感じた場面で再び投入するつもりでした。そしてその時がやってきました。主将の赤木が足を痛め、治療のため交代したのです。
出場を命じられた桜木。赤木の気持ちを推しはかった彼は「ゴリが帰ってくるまで絶対これ以上点差は開かせん!!」と言ってコートに立ちました。
安西は感動し「少し大人になったかな…桜木君…」と内面の成長を喜びました。
桜木はこの試合でバスケットマンとして、人として、大きく成長したのでした。