「合成なし」と聞いても信じられないほど、ファンタジーな写真たち
まずはこちらの、シュールレアリスムの絵画のような、ファンタジックな世界を表現した写真をご覧ください。
森の中に突如現れる部屋のような空間。ドアからはシマウマが顔を出し、ヴィクトリア調を思わせるドレスを身につけた女性は、ウサギを抱いて物憂げな表情をしています。
いろいろなイメージをつなぎ合わせたかのようなこの写真。どうやって撮ったのか不思議に思う人もいるでしょう。ちょっと詳しい人なら「ははあ、別々に撮った素材をフォトショップで合成したんでしょ?」と思うかもしれませんね。
でも実はこの写真、合成を使わず、全て実際にセットを組んで撮影したものなんです。
合成なしで
夢の世界を作り出す
写真家のAdrien Broomさんは、ファンタジックな光景を、合成に頼らず撮影するアーティスト。Broomさんはこうした作品を作り始めたきっかけを次のように語っています。
「もともと私は、コンピューターアニメーションを勉強していました。でもどうしてもCGで作られた物語には感情移入できなかった。現実に形のあるセットを組み立て始めてから、ようやく『これだ』と思えるようになったんです」
CGでなんでも
できちゃうからこそ
輝くリアリティ
フォトショップを含むCG技術はこの10年で目覚ましい発展を遂げ、全く存在しないような世界観を描くことも容易になりました。写真の修正はモデルを別人にしてしまうほどですし、その粋を凝らしたハリウッドの大作映画などでは、現実のセットなのかCGなのか、もはや観客にも見分けがつかないことが当たり前にさえなっています。
Broomさんは、そんな時代だからこそ、本当に存在するセットでしか表現できないリアリティを追求しているそうです。
子供の頃に持っていた
夢と可能性を取り戻す
Broomさんは、次のようにも語っています。
「私はいつも、子供の頃に誰もが持っていた、夢と可能性を取り戻す手助けがしたいと思っているんです。想像力は、魂の散らす火花のようなもの。それはやがて炎となって、素晴らしいものを生み出す。でも大人になるにつれて、そんな遊び心は失われていってしまう。
私のイメージが作り出した小さな欠片が火花となって、見た人それぞれの心の中で、それぞれの物語が紡がれる。それこそ私が求めていることなのです」
それでは、彼女が生み出すファンタジーの世界を、心ゆくまでお楽しみください。