160年前のカメラで撮ったポートレートが、不完全で美しい。
「写ルンです」が、サブカル好きにリバイバルブームを起こしている。インスタントカメラの「チェキ」も、おしゃれアイテムとして人気だ。ローファイなメディアは、偶然を演出しながら、アナログなムードを醸してくれる。
ここでは、さらにもっともっと古い湿板写真でポートレイトを撮るフォトグラファー、ジレ・クレメントの作品を紹介しよう。
ガラス板にとどめられた
ポートレイト
![](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/57378/571e33998fa8afd0ded7984e1b6844e68b3c725e.jpg)
ジレの使うカメラは、400×500mmのガラスに像を固定する「アンブロタイプ」のもの。レンズは1918年製で、第1次世界大戦で使われたものだ。その性能は著しく低いため、露光時間は多く、ライティングにも大光量を必要とする。
写真技術は、ライティングの技術そのものだとも言える。先人たちが作り上げてきた照明システムは、肌を柔らかく、なめらかなグラデーションにすることを可能にしてきた。
カメラ自体は160年前のものだが、ライティングのゴージャスさは、まさしく現代のもの。見ての通り、この写真が160年前のカメラで撮ったものだと分かる人はあまりいないはず。
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大光量、長大な露光時間がガラス板に像を焼き付ける
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ガラス板に臭化銀と卵白を加えて、感光剤とするのが「アンブロタイプ」とのこと。ネガに現像されるため、黒い背景に透過させて鑑賞する。本人との対比が、芸術的だ。
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![](https://d3jks39y9qw246.cloudfront.net/medium/57385/45124b306718abd6067e72423fdf74133e649850.jpg)
人はみな、ユニークだ
「私はポートレイトアーティストで、自分のテーマや、被写体のストーリー、彼らの芸術にインスパイアされている。みんなユニークだから、私だけが写真を制作していると思ったことはないよ。写真は、カメラを挟んだ二人の人間のコラボレーションによる産物だ。そのコラボレーションがうまくいったとき、私は単なるファシリテーターのような気持ちになるんだ」
と、ジレは言う。
撮影された写真は、どれもパーフェクトと言えるライティング技術の元で撮影されているが、純粋なポートレイトフォトグラファーとしての生き様も、写真に表れているかのようだ。