160年前のカメラで撮ったポートレートが、不完全で美しい。

「写ルンです」が、サブカル好きにリバイバルブームを起こしている。インスタントカメラの「チェキ」も、おしゃれアイテムとして人気だ。ローファイなメディアは、偶然を演出しながら、アナログなムードを醸してくれる。

ここでは、さらにもっともっと古い湿板写真でポートレイトを撮るフォトグラファー、ジレ・クレメントの作品を紹介しよう。

ガラス板にとどめられた
ポートレイト

ジレの使うカメラは、400×500mmのガラスに像を固定する「アンブロタイプ」のもの。レンズは1918年製で、第1次世界大戦で使われたものだ。その性能は著しく低いため、露光時間は多く、ライティングにも大光量を必要とする。

写真技術は、ライティングの技術そのものだとも言える。先人たちが作り上げてきた照明システムは、肌を柔らかく、なめらかなグラデーションにすることを可能にしてきた。

カメラ自体は160年前のものだが、ライティングのゴージャスさは、まさしく現代のもの。見ての通り、この写真が160年前のカメラで撮ったものだと分かる人はあまりいないはず。

 

大光量、長大な露光時間がガラス板に像を焼き付ける

ガラス板に臭化銀と卵白を加えて、感光剤とするのが「アンブロタイプ」とのこと。ネガに現像されるため、黒い背景に透過させて鑑賞する。本人との対比が、芸術的だ。

人はみな、ユニークだ

「私はポートレイトアーティストで、自分のテーマや、被写体のストーリー、彼らの芸術にインスパイアされている。みんなユニークだから、私だけが写真を制作していると思ったことはないよ。写真は、カメラを挟んだ二人の人間のコラボレーションによる産物だ。そのコラボレーションがうまくいったとき、私は単なるファシリテーターのような気持ちになるんだ」

と、ジレは言う。

撮影された写真は、どれもパーフェクトと言えるライティング技術の元で撮影されているが、純粋なポートレイトフォトグラファーとしての生き様も、写真に表れているかのようだ。

Licensed material used with permission by GILES CLEMENT
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。