心が震える「サッカー選手の後ろ姿」写真展
一度足を運んだ者として断言できる。
サッカーファンなら、感情を揺さぶられないはずがない写真展だ。
アスリートの情動は、その背中に。
東京ミッドタウンのフジフイルム スクエアにて開催されている「BACK-GROUND」は、2010年からドイツを拠点に撮影を続けてきたフォトグラファー・千葉格氏の初となる個展。選手の「背中」にフォーカスした異色の写真展だ。
「表情がはっきりと写し出されて輝く写真はたくさんあるが、そこに存在する感情が限定されてしまう。感情を想像する余地が残されているからこそ、後ろ姿はおもしろい」と氏は言う。
しかも、それぞれの写真に
「ストーリー」が綴られる
WEBはおろか、雑誌でもお目にかかれない迫力と色鮮やかさを放つ写真は、それだけで足を運ぶ価値がある。ただし、この写真展のすごみは、それぞれの写真に文章が添えられていることにある。このシナジーがとんでもない。
写真を眺めてから文章を読む。そして再び写真に目をやると、初見のときとはまったく違うメッセージが伝わってくるから不思議だ。
「あくまでも写真が主役」と言わんばかりの繊細で奥ゆかしいキャプションは、DAZNのセリエA解説でもおなじみ、スポーツライターの細江克弥氏によるもの。
ちなみに、ここで綴られるストーリーは“説明”でもなければ、“正解の解釈”というわけでもない。あくまでも“こんな物語もあるかもしれない”という一例にすぎない。
見るものが自由に思いを巡らせていい。
個人的にもっとも刺さったのがこの作品。2014 FIFAワールドカップ ブラジル大会の準決勝。相手はドイツ。ホスト国を待ち受けていた運命は……この記事を読んでいるようなサッカーファンなら知っての通り。
大勢のフォトグラファーが“向こう”に集結するなか、整列したセレソンの背中を捉えた一枚には「自分の写真の価値を常に考えている」という千葉氏のスタンスがよく表れていると思う。シンプルに、こんなアングルは見たことない。
さて、あなたがこの写真に感じるのは、王国の威信か。はたまた強烈なプレッシャーか——。
どのようなストーリーが綴られているかは、ぜひ会場で確かめてほしい。
【写真家たちの新しい物語】
千葉格 報道写真展「BACK-GROUND」文・細江克弥
期間:2月6日(木)まで
時間:10時~19時(最終日16時まで・入館終了10分前まで)
会場:東京都港区赤坂9-7-3 富士フイルムフォトサロン 東京 スペース2
入場料:無料
作品点数:全紙・全倍サイズ、カラー、約40点
主催:富士フイルム株式会社