履かなくなったデニムを「画材」にするというアイデア

ブラスト、シェービング、ケミカル、ヒゲ、加工方法や色落ちの違いで幾重にも表情を変えるのがデニムジーンズの魅力。そのデニムを画材に使って、唯一無二のアートワークを体現するアーティストがいた。

とてもデニムだけでつくられているとは思えない。

デニムのもつ表情を
そのまま画材にする

ロンドン在住のアーティストIan Berryは、一つとして同じ色味のないデニムの山から、濃淡を合わせて裁ちバサミで断片を切り出していく。いわゆる“切り絵”をデニムのグラデーションを用いて仕上げていくのが、彼独特の技法だ。

もう履かなくなったものを友人たちから譲り受けたり、古着屋をめぐったり、探している色に出会えないときは、新品のデニムをわざわざ購入することもあるという。そんな彼のアートワークを知ったアパレルメーカー「PEPEJEANS LONDON」が、ここ数年はリサイクルされたデニムの提供を名乗り出てくれたそう。

ベルトポケットから裾のステッチ、ベルトまで、それぞれのパーツを巧みに生かし、インディゴブルーの濃淡とともに作品に抑揚をつけていくIan。

では、彼の作品を一つひとつ見ていこう。

デニムと等しく
“味”のある作品

無数の履き手の記憶を
ひとつの作品に留める

いったい、作品を仕上げるのにどのくらいの時間を要するのだろう。Ianに尋ねてみた。

──ものにもよるけど、数週間かそれ以上。たとえばこのランドリーの床をつくりあげるだけでも3週間を費やしているんだ。洗濯機のドアのリングだけでも、1つ仕上げるのに丸1日とかね。もう散々切りっぱなしにしたデニムの山から、その色に合ったものを見つけ出し、断片を切り出していく。自分でやっていながらイライラする作業さ。

そして、どうしても聞きたいこの質問を最後にしてみた。なぜデニムだったのか、と。

──履き心地が良くて、いつも自分でいられるデニムがとにかく昔から大好きだったんだ。ある日、久しぶりに実家に戻ると、自室で山のようにうず高く積み上げられたデニムを見たとき、その1本1本に当時の自分が重なって、大切なメモリーであることに気づいたんだ。たとえもう履かなかったとしても、そのまま捨ててしまうなんてもったいなくてね。

作品は公式サイトでチェックを。

Licensed material used with permission by Ian Berry
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。