故郷の治安改善を「ヨーヨー」に託した男
この動画の舞台は、アメリカのメリーランド州ボルチモア。2015年に同国で2番目に治安が悪いとランク付けされてしまった街だ。
当時アメリカに住んでいた僕は、いたるところで起こる暴動の様子を毎日のようにニュースで見ていた。アフリカ系アメリカ人が「逮捕された時に負った傷」が原因で死亡したことについての「警察への抗議」ではあるのだが、パトカーが炎上するなど、物騒な雰囲気を感じたのは確か。ボルチモア出身の友人曰く「学校を含めた公共サービスは、昔から崩壊寸前だった」らしい。自然と就職は難しくなり、犯罪やドラッグに手を染めてしまう若者が増えたことが治安の悪化につながっているのだそう。
そこで、こうした状況を一歩ずつ変えていこうと立ち上がったのがCoffin Nachtmahrさん。なんと「ヨーヨー」によって。
まずは、彼の生い立ちから
彼がCoffin Nachtmahrさん。
実は、幼い頃から「口ごもってしまう話し方」だったそうで、周囲にバカにされてきた過去がある。
「小さい頃から周りとは違ったんだ。他のやつはみんな俺を笑ったりしてた。だけど、そんなことは絶対に間違ってると思ってた」
ヨーヨーは、高校1年生の時に始めたらしい。
「初めてインターネットで『BOMB SQUAD』(ヨーヨーのパフォーマンスグループ)を見たときは、驚いてすぐに買いに出かけたよ。ここから俺の人生は変わったね」
「ヨーヨーは、人との会話に導いてくれるものかな。多分、これがないと俺は機能しないと思うよ。
ダンスみたいなものとも言える。俺、ヨーヨー、音楽が一緒になってはじめて自分を表現できるんだ」
「出会って以来、周りのことを気にする必要がなくなったんだ。結局、他人の評価なんて関係ないだろ?」
治安の悪い地元に
貢献できること
そんな彼のパフォーマンスに魅了されたというのは、Satrian Montgomeryさん。
「11歳の時に兄貴が死んで以来、感情を表に出せなくなった。そんな時に彼のヨーヨーを見て、『どうなってるんだ!?秘密を教えてくれ』って思ったよ。
彼にヨーヨーをもらってやってみたら、今までのことを忘れたかのように夢中になれたんだ。街に漂うネガティブな雰囲気とかをすべて吹き飛ばしてくれた」
Coffinさんもこう言う。
「もし日常に満足してないなら、何か別のことをしなきゃいけない。なんでもイイと思うんだ。心の底から楽しめるものならね」
「今はスマホやタブレットがあって便利だけど、ある意味で不便だとも思う。多分、人は本能的に話さなきゃいけないんだよ。それを邪魔してる。
だから、俺はこれを広めて、みんなに『喜び』と『会話』を届けるよ。
ヨーヨーは小さいものかもしれない。でも、何かを変えられる力を持っていると思う。何かをするきっかけを作ってくれる可能性もある。
ただのおもちゃでシンプルなんだけど、考え方によっては複雑で、違う働きもできるかもしれないんだ」
彼には自分の思うように話せないという悩みがあったが、それを助けてくれたのがヨーヨーだった。このおもちゃには「何かを変えられる力」がある。そのことをよく理解しているからこそ、同郷の仲間たちにも変化のきっかけを与えようとしているのだ。
※本記事では、一部誤りがあったため訂正を加えております(2017/05/16 10:00)