本をまったく読まない僕が「飢えたケモノのように一気読みした」本。
赤羽にあるR&B喫茶『CAFE B-3』のマスター
#FAVORITE 02.
山田風太郎
『明治小説全集 地の果ての獄 上・下』
■ 読み始めたきっかけは?
柴田:雑誌で “無人島に持っていきたいレコード” 特集があって、そこで音楽評論家の大鷹俊一さんが、レコードと一緒に持っていきたい小説としてこの作品をあげていて。あの方の文章が好きだったし、あの方が好きなものも好きだったので(笑)、立ち読みしてみたんです。そしたらもうその瞬間に面白くて。本をまったく読まない僕が、飢えた獣のように一気に読んだのがこれです。20代前半とかだったかな。
■ 立ち読みした瞬間に....。内容が気になります。
柴田:タイトルにあるように、明治時代にスポットをあてている物語なんです。それまでの日本の文化がひっくり返って、社会構造も大きく変わった時代で。
いわゆる、社会の中で勝者と敗者に分かれた部分もあるし、異文化も入ってくる。雑多な中で絡まる人間の情念を、上手いことエンターテインメントに絡めていて。人の世の儚さ、怨念とか情念、男と女の愛憎劇もあり。登場人物も、実在する人物と、まさかの山田風太郎が創作した人物が絡むんですよ(笑)。
スリルもあって
スピード感がすごい!
■ 実在した人物と創作された人物が絡み合うって、新しいです。
柴田:しかも、ポイントで自分が知っているような歴史的な事件とかもちゃんと挟まってくるところも関心を持てるところ。実際の人物と風太郎が創作した人物が絡みあって、西南戦争が起きたり。人生観とか情念を独自のフィルターを通して、本当にうまく表現しているなって。それをちゃんと、面白おかしくエンターテインメントにしているのがすごい。
■ 楽しみながら歴史の理解も深められると。
柴田:話はめちゃくちゃだし(笑)、キャラクター設定とかは作者の創作なんですけど、その落ちとしてはちゃんとみんなが知っている事件があって。そこで読んでいる方は流れを理解して納得できますよね。あと、スピード感がすごい! 次から次に新しい人物がでてきて、スリルもあって。
フィクションとノンフィクションを上手い具合に絡めていて、これも前回語ったことですが、リアルとファンタジーのバランスが絶妙だなと思います。その間で交わる群像劇、やっぱり好きですね。
『偉人たちの、偉業じゃない(!)エピソードたち』
本当のエピソードなんですけど、たとえば伊東博文が、じつは女の人が大好きで遊郭通いがすごくて...とか、福沢諭吉はお調子者で...とか、偉人たちのあまり公にならない部分にスポットをあてて、笑わせてくれます。偉業のみならず、外伝も知ることができるのもこの本のおもしろさ!