暗闇から生まれた「黒備前」にみる、後世にどうしても残しておきたいこと。
食器といえば白。少し前まで漠然とそんなイメージを抱いていたけれど、最近は少しちがう。Instagramで見かける美しい食卓、ふらっと入ったカフェで出てきた心おどるスイーツ…。いわゆるフォトジェニックさを目の当たりにするときに、たびたび登場してくる黒い器。
今回は、その黒い器のなかでもより一層引き立て役を買って出てくれそうな深~い逸品を紹介する。
ちょうどいい
「黒」加減。
この器、その名も「黒(koku)」。なんとも言えない「黒」に引き込まれそうだが、それもそのはず、ベースはあの備前焼なんだとか。もちろん、備前焼作家が手がけている。
プレート、ボウル、カップがそろっている。どんな料理のときでも活躍してくれそうだ。
「黒」を味方につけるだけで
こんなにもカラーが引き立つなんて。
「黒」にかかれば、どんな料理も途端にパキっと引き立つ。素材が活き活きと見える、絶妙な風合いが魅力的だ。
ほら、和食も洋食も「黒」がそっと支えてくれている。
古き良き「あの時の日本」に
思いを馳せる
「黒(koku)」の生みの親は、有馬温泉御所坊からはじまったプロジェクト。
コンセプトはずばり、「陰翳礼讃(いんえいらいさん)」。「陰翳礼讃」とは、近代日本文学界を代表する谷崎潤一郎の隋筆のタイトルだ。彼はその中で以下のように論じている。
思うに西洋人の云う「東洋の神秘」とはかくの如き暗がりが持つ不気味な静けさをさすのであろう。
西洋人にとって、暗がりに美を見出す日本人特有の感性はなかなか不思議なもののようだ。そして「陰翳礼讃」を強いてひと言で表すとするならば「陰を敬い、そこに美しさを見出す」というところだろうか。
このプロジェクトは、その世界観を音楽や香り、器、映像、写真を使って表現している。活動を通して、今では感じられにくくなった日本人の感性や文化を再確認する機会を創造している。
もちろん「黒(koku)」も
例外ではない。
「黒(koku)」もコンセプトにのっとって〝暗闇を切り出して生まれた器〟だ。器そのものが美しいのは大前提で、それでもってそっと陰部分に徹し料理と一体となって美しさを演出してくれる。
ぜひ、この「黒(koku)」をきっかけに、うちに秘める日本人的な感性を思い出してみてほしい。