フランス人にも飲んでほしい、岡山県新見市・tettaの“パンダワイン”

世界で最も影響力があるといわれている土壌学者、クロード・ブルギニョンによると、フランスのワインがおいしい理由は土壌にあるといいます。

「ぶどうは、黒海とカスピ海に挟まれたコーカサス地方の植物だ。コーカサス山脈は石灰質であり、だからぶどうは石灰質をもっとも好む。石灰質土壌は世界の7%を占めるだけだが、フランスは国土の55%が石灰質、アメリカはたったの3%しかない。全体としてフランスのワインの質が優れているのはこういった理由からだ」

という風に。

石灰質の土壌は世界でも珍しい土壌ですが、日本にも数カ所存在します。そのうちのひとつが岡山県の北西部にある新見市。この街の石灰質土壌の可能性を確信した人たちが、同市哲多町にあるワイナリー「domaine tetta(ドメーヌ・テッタ)」に集結。自社農園で育てたぶどうを使ったワイン造りにチャレンジしています。

“地元の景色を取り戻したい”
情熱から始まったプロジェクト

© Eiji Honda

domaine tettaのスタートは2009年のこと。哲多町は石灰質土壌に加え、一年を通して寒暖差が大きく、ぶどうを栽培するにはこの上ない環境。……にも関わらず、2009年当時は畑のほとんどが耕作放棄地でした。

そこで立ち上がったのがdomaine tettaの代表・高橋さん。
地元を「なんとかしたい」の一心で会社を設立。哲多町の土地を活かすにはワインであると考え、ワイン造りを行うことを決意します。

© Senichiro Nogami

本気でぶどうと向き合うスタッフ、
錚々たる顔ぶれのパトロン達

© ONESTORY
domaine tettaの代表・高橋さん(真ん中)

「ワインをきっかけにしてこの哲多町に人々が集い、様々なチャレンジが生まれる場所を造りたい」

という想いのもと、2016年にはワイナリーが完成。そして、2017年にはぶどうの栽培から醸造、熟成、瓶詰めまでのすべてを自分たちで手がけた待望のファーストヴィンテージワインをリリース!

プロジェクトは着々と前進してきましたが、ここに至るまでに様々な経歴を持つ人達がdomaine tettaに加わっています。

例えば、大学、大学院で農業を学んだ人や本場フランスでぶどうの栽培と醸造の修業を積んだ人、ワインの仕事をするために脱サラして移住してきた人など……。domaine tettaの仲間達はみんな「ここで、世界に通用するワインを造りたい」いう熱い想いをもって集まってきた人ばかり。そんなスタッフ全員が、ぶどうの健全な生育を第一に考え、日々ぶどうに関わっています。だからこそ、ワインはどれもぶどう本来のポテンシャルを活かしたものばかりです。

© Senichiro Nogami

さらに、ワイナリーの建築デザインディレクション/インテリアデザインを手がけたのは、岡山出身で世界で活躍するインテリアデザイナーのWonderwall片山正通氏。

© Nogami
地下のセラー前には、スイスを代表する現代美術作家ウーゴ・ロンディノーネの「the no」が展示されている

また、ワイナリーの地下には同じく岡山出身のストライプインターナショナルの代表・石川康晴氏がコレクションしている現代アートが展示されています。彼らも、高橋さんの郷土愛や情熱に動かされてプロジェクトに加わったメンバー。一緒になってdomaine tettaの成長と夢を追いかけています。

© Eiji Honda
石灰岩採掘トンネルを利用した天然のワインカーブも注目されている

domaine tettaといえばパンダ?
ラベルにも注目

© Yoko Inoue

ラベルのデザインは、日本を代表するデザイナーである平林奈緒美氏が手がけています。高橋さんやスタッフさん達の似顔絵が描かれたもの、文字だけのものなど複数パターンありますが、どれも平林氏がdomaine tettaを訪れて感じたものが表現されているんだとか。

© Yoko Inoue

そんななかでも、ひときわ目を引くのが、domaine tettaのキャラクターでもあるパンダです。“上野でもなく和歌山でもなく、岡山でなぜパンダ?”というところですが、このパンダは敷地内の畑に不法投棄されていたパンダの置物を描いたもの。普通なら処分してしまいそうですが、domaine tettaでは、畑から出てきたパンダをエントランスに配し、“守り神”として大切にしているそう。このストーリーからは、domaine tettaの人達の、土地への感謝、想いのようなものが垣間見えます。

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2018年5月には
ワイナリーカフェがオープン!

© Yoko Inoue

2018年5月にワイナリー内にオープンしたカフェでは、地元の豊かな食材やdomaine tettaのネットワークを駆使して集めた全国の厳選食材を使った料理とともに、おいしいワインを存分に楽むことができます。ここはまさに、domaine tettaのワインをいただくには最高の場所。“この地でできたワインを、ぶどう畑が一望できる一番贅沢な場所で、美味しい食事とともに”というdomaine tettaの想いを体現した場所になっています。

哲多から世界のtettaへ

ぶどうが育ち、ワイナリーが完成し、カフェができ、人が集う。かつて耕作放棄地だった場所は、様々なチャレンジにより大きく生まれ変わっています。きっと今後も進化するdomaine tettaのワインが、日本人のみならず、フランス人をはじめ世界中の人に愛される日もそう遠くはないかもしれません。

「domaine tetta」
住所:岡山県新見市哲多町矢戸3136
TEL:0867-96-3658
café営業時間:11:00~16:00(ランチタイムは11:00~14:00)
定休日:月曜日、火曜日 ※祝日の場合は営業
※2019年1月2日(水)はカフェが冬季休業
公式HP:http://tetta.jp/
※ワイナリー見学は行っていません。 café営業日は、caféからワイナリー内をガラス越しに見ることが可能

Top image: © Yoko Inoue
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。