京都手帖は、手帖どころのさわぎじゃない。

私が編集のキャリアをスタートしたのは、京都だった。
2年間、編集プロダクションで京都のガイドブックを編集・執筆していた。だからこそわかる。

この『京都手帖』、ほんと、すごい。
情報量がガイドブック並、というか、編集者さんがやっている作業としてはガイドブックと一緒です。間違いありません。

京都広域MAP、鉄道路線図、バス路線図、葵祭・祇園祭・時代祭のルートMAP。さらには、主要な社寺の拝観データ、文化施設のデータは300件以上。週間カレンダーはイベントカレンダーの役割も果たしていて、いつどこで何が行われているかわかる。定番の京土産や、京文化についてのコラムもしっかり掲載されている。

これだけの情報量をすべて校正に出し、修正する作業……経験しているからこそ声を大にして言いますけど、苦行のような作業なんですよ。それをちゃんとやっている。信頼できる。本当にすごい。

「じゃあ手帖としての機能はどうなの?」と言われると、週間カレンダーだけではなく、ちゃんと月間カレンダーもあります。しかも、各月の図案、間違いなくかわいいです。

12月は、たい焼き!

そのほか、メモとして使えるフリースペースもしっかりあって、手帳としての機能は問題ないと見ました。

そのわりに、総重量258g。MARK’Sが出しているEDiTのB6サイズが290gだから、それより軽い。これ、重くなりすぎないように紙もいい具合に軽いの選んでいるんですよ、きっと。すごい。

そうすごいすごいと言い続けても、「編集者目線で紹介するな!」という声が聞こえてきそうなのでそろそろやめます。というか、これもう12年目ですしね。12年これやってるのもやっぱりすごいですよ。あ、また言ってしまいました。

でも、わかっています。

そう、京都に興味のない人、シンプルなスケジュール帳がいい人がこの手帖を手にとらないことくらい。でもそういう人には、旅行などの際、ガイドブック代わりに購入することをおすすめします。

なぜなら——あくまで個人的な意見ですが、これがあれば京都観光は問題ない気がするのです。

最新の情報なら、紙よりネットのほうが断然強いでしょう。わざわざ紙のガイドブックを買う必要はあまりありません。一方、基本情報を網羅し、それをパッと一覧したいとき、ネットは非常に使いづらいものです。しかもなかには信憑性のない情報もある。社寺の拝観時間、春夏と秋冬で異なるところ、結構あるんですよ。でもそういうのがちゃんと書かれていないところがあるって、私は知っている!(経験談)

その点、これはもはや京都手帖というより京都辞書の域。信頼できる情報が網羅されているし、もちろん見やすくまとめられています。だから、700円くらいで2泊3日しか使わないガイドブック買うくらいなら、1200円出して京都手帖買ってください。これ1冊とネットがあれば、それぞれを使い分けながら十分快適に旅行ができるし、コラムも読み応えがあるから、旅行後もちゃんと手元に価値が残ります。

ちなみに表紙は2パターン(そしてそれぞれリバーシブル)。
ひとつは、京都府下の販売店で手に入れることができる「京都限定版」。もうひとつは「全国版」。図版は、竹中木版 竹笹堂によるデザイン。私は竹笹堂ファンなので、この木版画の柄を使用した表紙には、ついついコレクター魂が燃えてしまいます。

「京都限定版」も「全国版」も中身は同じなんですけども、そういう特別感も普通の手帖とは違うでしょ。だからやっぱり、すごいんです。

Photo by Nao Shimizu
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。