中国人も苦戦する無理ゲー「ART OF TAOBAO」に挑戦した話……。
本日11月11日は、中国では1並びの「独身の日」です。毎年EC各ショップではこれにあやかってセールを行います。とくに中国最大のショッピングサイト『淘宝(タオバオ)』は、大セールの日。
現地中国人にとって、そして、1年の半分を北京で暮らす私にとって、決戦の日とでもいいましょうか。
買う方、売る方、に加えて、届ける方も大戦争。毎年、この日を挟んで中国国内の宅配便は大混乱の様相です。遅延、紛失、間違いが大発生。今年もどんなことになるのか、セールが怖いような楽しみなような……。
日本でも知名度の高い『タオバオ』ですが、欲しい商品が決まっている場合はともかく、ふらりとサイトを開いただけでは目当てのものをお得に手に入れるのは至難の技なんです。
『タオバオ』で目当ての買い物をすることが、どれぐらい難しいか? これは私の実体験です。
写真もコメントも同じ。
なのに値段は3倍も違う!
昨年、寒くなってきたのでダウンコートを買ってみようと『タオバオ』を開いた私。
2016年の中国のトレンドは、ロングでオーバーサイズ気味、顔まわりにビッグファーのついたダウンでした。しかもカラーファーが可愛い! ということで快調に検索し、とあるアイテムにたどり着きました。
しかし、まったく同じアイテムを扱っているお店が後から後から出てきます。商品写真は韓国のInstagramから流用したものが多く、どれも同じ。お客さんのコメントまで同じで、どのお店がどのお店をコピーしてこうなったのか。もはやオリジナルはどこにあるのかさっぱりわかりません。
なのに、値段はバラバラ。3倍もの開きがあります。
中国語にさほど明るくない私は、翻訳サイトを使いながらの不自由なネットショッピング。この時点で、オリジナルを買える自信は限りなくゼロに近づいたので、失敗しても惜しくない価格設定のお店に狙いを定めました。
どんどん不安になる
「安心してください!」。
価格設定を安くしたものの、顔まわりのエコファーがポイントですから、粗悪なファーやボリュームのないものは嫌。というわけで、ファーの説明を詳しくチェック。
きつねの写真とともに、我こそはリアルファーを使っています! と言いたげなショップもあれば、他店と比べてピンクの発色が美しいことをアピールするショップも。
そもそも同じ商品なんだから、品質は同じじゃないとおかしいでしょ!
どのショップにも“安心してください!”と記載されていて、不安を増長します。
なかでもおかしかったのは、韓国から輸入してるアイテムのはずなのに、中国人のおじさんがCADの前に座ってパターンをひいている写真を掲載しているショップです。キャプションには、“今夜は徹夜で精密な作業をします!”とあり、真面目な仕事っぷりをアピール……。この写真、好評なのか複数のショップが流用しています。
いやいや、決定的に怪しいんですけど!!
そんなこんなで検索に疲れてきた頃、何やら直輸入オリジナル商品ですと書いてあるショップを発見。翻訳サイトで確認してみると“この秋、韓国ファッションの最先端をあなたに届けます。リッチでボリューミーなファーと最新のシルエットは注目の的。絶対に手に入れたいお洒落な逸品”という紹介内容。自信溢れるショップからのオススメコメントです。
おおお、コレコレ。こういうのが見たかった。
しかし、その次の行には、こんな一言が。
“でも、あなたはこの冬、ちょっとお金がないですね!”
ええええええっ? なにそれ?どういう意味???
あまりの混乱と疲労に、中国人の友人にリンクを送ったところ。“う〜ん、私にもわからない”との返信。
ここまで、すでに一週間も『タオバオ』とにらめっこです。
次第に、思考力も判断力も鈍り始め、“えーと、最初にチェックしたのどれだっけ?”みたいになってきたところで、最後は運を天に任せてエイヤッしかない! と、結局当てずっぽうに購入ボタンをポチッ。
全然違うってわけじゃないんだけど、美しい商品写真とはどこか似て非なるシルエットのダウンが送られて来ました……。
まあ、いいか。もう疲れたし。たしかに安いし。
『ART OF WAR』ならぬ、
『ART OF TAOBAO』。
こんなエピソードはいくらでもあります。
商品写真と発色が違うなんて言うのは日常茶飯事。ピンクのシャツを注文したらブルーが届いた。シャツを洗ったら2サイズも縮んだ。友達は三輪車を買ったら、やけに前の方に長くて、子どもの手が届かなかったそうです。
買い物の達人である友達によると、“言い忘れたけど、『タオバオ』は最近お店が増えすぎて何が何だかわからないよ。偽物ですとは書かないし。『タオバオ』で安いものには何か理由があるしね。いいものを探すのは本当に難しい」とのこと。
それ、早く教えてくださいよ……。
もちろん、そんな『タオバオ』にも攻略法はあるようです。
コメント欄を必読し、同じ雰囲気の他商品を一気に見せてくれるボタンをクリックし、さらにお店の年数と評価もチェック。同じ商品を何人が購入したかという数字も指針になります。
いや、しかし、です。
これらを実践したとしても完璧、というわけではありません。中国語が完璧ではない自分のような人間はもちろん、中国人もかなり苦戦している模様。
『タオバオ』は、年々お店の数と利用者が増加し、売る方も買う方も戦国時代。芸術的に難解なwebページを解読して戦いに勝つそのテクニックは、春秋時代の兵法家、孫氏による『兵法・the art of war』の現代版『ART OF TAOBAO』と呼ぶべき高等テクニックなのです。
もちろん、しっかりとした商品を売るお店や正規輸入代理店のお店もたくさんあります。いいものを良心的価格で売っているお店に行き着くことも多いですので悪しからず!