「一生ものの心のキズ」を公開するWEBサイトに、あつい涙。
今までに自分たちが味わった「苦しみ」を絵や詩で表現して集めた『Forward Together』というサイトがある。これは、トランスジェンダーであることにより差別を受けた人々が立ち上げたもの。暴行され、命を落とした人も少なくないと彼らは語っている。
なぜ彼らは、“心のキズ”を公開するのか。
アートで訴えるのは、
悲しみだけじゃない
まずは、下にある一枚の絵と詩を見て欲しい。これは、性差別により身も心も傷つけられた人たちの話。
「Prayer」
──Mark Aguharに捧げる
私は風呂場の床にひざまずき、祖先の血が私の体を包み込む。
私は、ある男に殺された。
夕暮れ時の影のように、私の体はバラバラになった。
あなたはトランスジェンダーの女性を見たことがある?
刺され、殴られ、撃たれ、首を絞められ、水を無理やり飲まされ、火をつけられた女性がいた。
ついに、私の番がきた。
(中略)
セクシーな女の子、売春婦、キャリアウーマン、男装した女性や、何かのハンディキャップを抱える人や、性同一性障害者。
みんな私の家族。
木の葉が静かに舞う、私が会ったことのない女性たち。
Ava、Kiwi、Jaquarrius、Jamie Leeに、Ciara、 Chyna、Gwynevereも。
私が名前を呼んだことのない人たち。でも、彼女達の名前を知り、これからは大切にしてゆくだろう。
だから、さよならは言わない。
私達はクジラの歌を歌い、お腹がよじれるほどの笑いを分かち合う。
私達のノドは、失われた言葉の山脈。
私達が、互いの手のひらの線や肌のシワ、髪のうねりまでも知ることができるように。
これは、私達の最後の祈り。
今、祝福を受けた私達は、境界線を越えて広がってゆく。
今、あなたはここにいるのだ。
「itany in which you are still here」
xoài phạmさんの詩はフィックションじゃない。多くの人々が悲しみの涙を流した辛い出来事をアートにして表現したもの。絶望だけではなく私はあたたかさも感じたんだ。
どうして、Forward Togetherをつくったのかサイト運営者に聞いてみたところ、こう答えてくれた。
このプロジェクトの目的は、今を生きているトランスジェンダーの人々を支持するため。これまでに亡くなった人たちの「死」をただ嘆いて、「悲しみ」を広めるための活動ではありません。Forward Togetherのアーティストの一人であるMicah Bazantもこう言っています。
「私達は、人の心と考えを変える“アートの力”を生み出しているのです。トランスジェンダーの人々が世界中で運動をはじめ、つながっていく。単にインスピレーションを与え合うためのものに終わらず、アーティストの彼ら自身が実体験を世界に伝える。ストーリーを共有するためのサイトなのです。私達は、政治的なことであっても、アートは欠かせないものと思っています。だって、アートは私達にとって絆を結びつけるものなのですから」