試される島、沖縄の「西表島」で夜のジャングルへ
沖縄の西表島は、第二次世界大戦の頃までマラリアが蔓延する島であった。1961年に根絶してマラリア問題が解決したあとも、口にすれば死を招く植物はいまだに多いし、ハブはそこいら中に生息する。
—— 西表島は、試される島なのだ。
しかしこの島の野生を楽しむことは、この島でしかできないがために、多くのネイチャーラバーが中毒にかかる。もしかすると、そんな野生の魅力こそが一番の毒なのかもしれない。
会えないからこそ価値がある
イリオモテヤマネコ
沖縄本島にほど近い……そんなイメージがある西表島は、実際には台湾の隣島といってもいいほどの位置にある。実に那覇からは430km! 一方で台湾までは190kmしかないのだ。
東京からは、羽田〜石垣島の直行便を使っても、そこから先はバスと小さな高速船を乗り継いでいかねばならない。早朝に東京を出ても、西表島につくのは夕方になってしまう。
「ホテルニラカナイ西表島」に着いたなら、まずは「ヤマネコの学校」で西表島をざっと知るのがオススメだ。
実際、イリオモテヤマネコに会うことはかなり難しい。このヤマネコの学校でも教えてもらえるが、現存するヤマネコはおおよそ100体前後だと言われている。かつてはヤマネコは猫の一種だと島民に思われていたそうで、特別に手厚く保護されていなかったようだけど、今ではイリオモテヤマネコに西表島がいかに振り回されているか、を知るたびに苦笑してしまう。
とくに交通事故死で激減したとされるイリオモテヤマネコを救うべく、現在県道の下にはヤマネコ用のトンネルが100本ほどある。1匹1本を超える。ヤマネコだけではなく自然を守るためだけど、西表島では犬猫を飼うためにはマイクロチップをつけなければいけない。厳しく飼育が制限されているため、野良犬・猫は皆無だ。
とにかく、夜行性で頭数も少ないイリオモテヤマネコは、会えたらラッキー。島に住み込んでいるガイドさんでも年に3回ほどしか遭遇しないそう。
西表島で
夜のジャングルを冒険する
夜は静寂に包まれるかと思いきや、生き物のうごめく音や風の音で満ちている。これもヤマネコを守るためだが、西表島には街灯がほとんど無いため、漆黒の闇だ。森の音と闇が織りなすジャングルの夜は、とても神秘的。
ジャングルはサバイバルシーンなどで登場することも多いが、事実、西表島のジャングルでは毎年遭難者が出ている。とくにマングローブの森は方向感覚を狂わせ、高い湿度が体力を奪っていく。
その分、ガイドがついている “アクティビティ” として夜のジャングルに入っていくことは、当然ながらとても安全。
夏なら、多くの虫や動物に遭遇できる。
ちなみに、長靴は必須。ニラカナイ西表島のアクティビティならレンタル可。
ビーチの朝のストレッチも
ある意味、毒だ
「ニラカナイ西表島」のプライベートビーチ感は、少し現実離れしたものだ。ホテルのプール脇を通り抜けると、真っ青なビーチが拡がる。
朝散歩をしていると、自宅のある東京には帰りたくなくなってくる。
朝日とともにストレッチをするアクティビティは無料。夜のジャングルを歩いてこわばってしまった体がほぐされていく。
ここまで「試される島」「毒」などと少々刺激的に語ってしまったけれど、西表島は、健康的な生活を手に入れるための場所でもあるのだ。
そんな表裏一体の表情が「西表島中毒」を生み出すのかもしれない。
住所:沖縄県八重山郡竹富町上原2-2
TEL:0980-85-7111