西表島の自然と文化を次世代へ継承するプロジェクト「Us 4 IRIOMOTE」

「東洋のガラパゴス」とも呼ばれる沖縄県西表島。ここにしか生息しないイリオモテヤマネコや日本最大の面積を誇るマングローブ林など、世界でも希少な生態系を有しています。

この豊かな自然を体験しようと、2018年には約30万人が訪れた西表島。島の人口は約2400人なので、約125倍の観光客が訪れる人気の観光地です。世界自然遺産に登録される可能性もあることから、更なる観光客の増加が見込まれ、この小さな島が受け入れられる許容範囲を超えてしまうことが懸念されています。

誰かに責任を押しつけるのではなく
自分の行動を考え直す必要性

西表島の豊かな自然と文化を次世代に継承するために、私たちツーリスト、一人ひとりにもできることがあるのでは?そんな思いで、2019年4月に「Us 4 IRIOMOTE(アス・フォー・イリオモテ)」というプロジェクトが本格始動しました。

「Us 4 IRIOMOTE」が活動の軸とするのは、4つのキーワード <知ろう・守ろう・話そう・残そう>。

©2019 TABI LABO

まず、知ってほしいことのひとつ。それは、プラスチックゴミの問題。世界中で海洋ゴミが問題となっていますが、西表島も例外ではありません。

ゴミは海岸だけでなくマングローブ林の中にも流れ着いています。エコツアーに詳しく、20年以上に渡りビーチクリーン活動を行なっている「西表島バナナハウス」のガイドである森本孝房さんはこう語ります。

「潮の満ち引きで林に入ってしまうわけですけど、処分が大変なんですよね。まだ海岸だったら拾いやすいです。でも、林の奥に入ってしまったゴミを拾い集めて集積所に運ぶのは本当に大変。しかも、それにはお金がかかるわけです」

回収したゴミは産業廃棄物となるので、専門業者にお金を払って処理を委託しなければいけません。加えて、ゴミ処理場のある石垣島まで運搬する必要もあります。

「Us 4 IRIOMOTE」のパートナーである「NPO法人 西表島エコツーリズム協会」の徳岡春美さんはこんなことも教えてくれました。

「西表島が運搬費などの費用を負担して、トン袋(ゴミを運ぶための丈夫な袋)を送っています。1袋のゴミを処分するのにかかるお金は8000円くらいです」

同団体によると、トン袋100袋分のゴミを処理するのに約136万円もかかるそうです。

©2019 TABI LABO

「政府の補助金もあるんですけどね。それでも負担は大きいです」と徳岡さんは続けます。

「島に流れ着いているゴミの多くは中国と台湾からです。こう言ってしまうと攻撃的になる人もいるのですが、日本だって同じことをしています。日本製のペットボトルなどがハワイで見つかっているんです」

大切なのは誰かに責任を押し付けるのではなく、自分たちの行動を考え直すことなのかもしれません。

イリオモテヤマネコとヒルギ染め
西表島の暮らしを守り、継承する

「Us 4 IRIOMOTE」は、生態系や伝統を守る活動も行っています。

その対象となっているのが西表島の固有種であるイリオモテヤマネコです。環境省は絶滅危惧IA類(ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高いもの)にランク付けし、絶滅危惧種に指定しています。

「Us 4 IRIOMOTE」のパートナー団体である「やまねこパトロール」の髙山雄介さんが、現状を語ってくれました。

「いろんな情報がありますが、イリオモテヤマネコは100頭くらい生息していると言われています。これは種の存続がギリギリのラインで、非常に危ない状況です」

近年、イリオモテヤマネコが自動車にはねられてしまう事故が増えています。2018年は過去最悪の9件となっています。

「まず、自動車のスピードの出しすぎが問題です。また、イリオモテヤマネコは自動車にはねられたヘビをエサにするために道路に出てきてしまうんですね。僕たちはパトロールをして、スピードを測定しながら注意喚起をすると同時に、道端ではねられた小動物の死骸の撤去も行なっています」

注意喚起には、地元の小学生が作った看板も。地域ぐるみでの活動です。

©仲程長治

イリオモテヤマネコだけでなく、西表島に代々伝わる「ヒルギ染め」も守り、継承すべき対象です。

「西表島ではヤエヤマヒルギを使うのが伝統で、これはずっと昔から受け継がれています。自然と寄り添って生きてきたんですね。色の出方は、太陽の光によって変わってきます。つまり、西表島以外では同じ色は出せないんですよ」

こう語るのは西表島で「紅露工房」を営む石垣昭子さん。その染物は、ニューヨークのMoMA(ニューヨーク近代美術館)でのイベントで展示されたこともあるとか。

世界に誇れる文化が西表島にある――国内でもそれを知る人は少ないはずです。

©2019 TABI LABO

「泥染めは泥につけて、色を変えるんだよ。これを何回も何回も繰り返す。そんで、海につけるんだ」

「紅露工房」の石垣金星さんはそう教えてくれました。イリオモテヤマネコをはじめとする希少な動植物だけでなく、この島で脈々と受け継がれる伝統的な文化もまた守るべきものなのです。

みんなで課題を話し、
みんなで自然を残す

「Us 4 IRIOMOTE」が軸とする4つのキーワードの残りは<話そう・残そう>。これまでに紹介してきた西表島の課題について話し合い、世界に誇れる自然を未来に残すのがひとつの目標です。

「西表島バナナハウス」の森本さんと「NPO法人 西表島エコツーリズム協会」の徳岡さんが、こうした話をする上で大切なことを言っていました。

「西表島が世界遺産になるのはいいんですよ。でも、その前にやらなければいけないことがあるんです」(森本さん)

「問題はたくさんあります。でも、正しい方法で解決しなければ意味はありません」(徳岡さん)

「Us 4 IRIOMOTE」は、一人ひとりにできることを考えてもらい、自発的に行動をしてもらうためのプロジェクト。そのために、課題を知ることから始めるべきなのかもしれません。

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