西表島の自然と文化を次世代へ継承するプロジェクト「Us 4 IRIOMOTE」

KEENがリードするプロジェクト

©仲程長治

「Us 4 IRIOMOTE」はアウトドア・フットウェアブランド「KEEN(キーン)」が発足メンバーとなって牽引しているプロジェクトです。

2019年4月12日より販売されている「UNEEK EVO(ユニーク エヴォ)」のデザインモチーフはイリオモテヤマネコ。その売り上げの10%は「Us 4 IRIOMOTE」の活動に活用されます。

最後に「KEEN」がどういった経緯でプロジェクトを発足することになったのか?どんな思いを込めているのか?ということを紹介します。

キーン・ジャパン合同会社のジェネラルマネージャーである竹田尚志さんにお話を伺いました。

もしも西表島に行くなら
相当な覚悟を持ってほしい

©2019 TABI LABO

──率直にお聞きしますが、何が西表島に必要だとお考えですか?

 

もっとも改善が必要なのは、我々......私も東京に住んでいますけど、西表島に住んでいない人なんですよ。心構えや行動を変えるのが大切ですね。

 

──観光客のあり方が変わるべき、と?

 

そう。環境保護活動というのは、現地で暮らしている人にこんなことをしちゃいけないとか、こうするべきだと言うわけですけど、そうではなくて……。

地元の人たちには彼らの生活があって、今までの500年以上も受け継がれている暮らしがあって、その中で生まれて、守られてきた秩序があります。

そして、今回課題になっているのがオーバーユース。なんで自然が破壊されているのだろう?と考えると、許容範囲を超える多くの人がその場所に行くからなんですよ。

 

──西表島に訪れる観光客の増加が、自然を破壊する一因になっているんですね。

 

そうですね。もしも行くなら、訪れる地域に関する情報を前もってよく調べ、規則を守ることは大前提で、さらに何か、地域や自然にとって良いことをして帰ってきてほしい。例えば、ボランティア活動をしてみるとか。

 

──なぜKEENはこうしたCSR活動に力を入れているのですか?

 

オレゴン州ポートランドに本社があるKEENは2003年にできたアウトドア・フットウェアブランドです。その次の年に、スマトラ島沖地震が起きているんですね。その光景を見た創業者Rory Fuerstがすごく心を痛めてしまって。当時、マーケティング予算が約1億円くらいあったんですけど、それを全て災害支援活動に使ったんです。

これがブランドとしての社会貢献の始まりで、それからは会社を大きくして儲けるだけでなく、社会に恩返しをするとか環境保護をすることを経営の大きな柱にしています。

 

──その指針があったからこそ、西表島に目をつけることに。

 

2017年に石垣島と西表島に撮影に行く機会がありまして、自然を守っている方とお話をしたんです。ゴミ問題や世界遺産認定による入島者数の激増などの懸念をお聞きしたところ、素直に「ほっといちゃいけないな」と思いました。

そこからリサーチをして、どういうカタチでプロジェクトを立ち上げるのがいいのかを1年半くらいかけて考えて、やっと「Us 4 IRIOMOTE」のスタートポイントに立てました。

 

──「Us 4 IRIOMOTE」では何を伝えたいですか?

 

西表島は多様な動植物が生息し、絶滅危惧種も多く抱える島です。それはとても繊細なバランスの上に成り立っている生態系だということを意味します。地球にとって非常に貴重だということを多くの人に知ってもらいたい。日本人だけではなく、外国の方も同じです。とにかく知ってほしい。

で、頭の片隅に情報があったら、簡単に自然に悪いことをしなくなると思うんです。逆に、何も知識がないから野次馬っぽくイリオモテヤマネコを見たいと考えてしまう。ツアーが、ヤマネコに与えるストレスや人馴れによる交通事故の増加のことを知ったら、見に行こうと思いませんよね。

イリオモテヤマネコはこの島で奇跡的に数万年を生きぬいた。そういう奇跡的な動物がいるんだと心の中で楽しんでいただく。それがベストですね。

西表島について検索をするだけでもいいかもしれません。少しでも興味を持ってほしい。「Us 4 IRIOMOTE」は、そのきっかけになるような活動をしていきます。

©2019 TABI LABO

「西表島バナナハウス」の森本孝房さん

©仲程長治

「NPO法人 西表島エコツーリズム協会」の徳岡春美さん

©仲程長治

「やまねこパトロール」の髙山雄介さん

©仲程長治

「紅露工房」の石垣昭子さん

©2019 TABI LABO

「紅露工房」の石垣金星さん

Top image: © 2019 TABI LABO
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。