突き立てられるのは牙?それとも注射針?予防接種は「ドラキュラの城」で
1897年にブラム・ストーカーが発表したホラー小説『ドラキュラ』。
鋭い牙で吸血することで、不死の肉体を保つドラキュラ伯爵の根城として描かれたのは、ルーマニア中部・トランシルヴァニアにそびえ立つ、架空の古城だった。
しかし、モデルとなった城の正体が気になるのが、読者のサガというもの。
同じくトランシルヴァニアに位置する中世の要塞「ブラン城」が、場所や見た目、建築様式、作者が遺したエピソードなどから最有力候補とされ、「ドラキュラの城」として長く愛されてきた。
© castelulbran/Instagram
そんなブラン城を舞台に、牙の代わりに、新型コロナウイルスワクチンの注射針で刺されるイベントが開催中。
城のほど近くに建てられたセンターでは、5月の毎週末に「ファイザー社」「BioNTech社」共同開発のワクチン接種を無料で、しかも予約不要で受けることができる。
キャンペーンの背景と詳細について、マーケティング責任者のAlexandru Priscu氏は「AP通信」の取材にこう語った。
「私たちは、人々に(ワクチンの)針を刺す別の方法を見せたかったのです。
勇気を出してワクチンを接種した人には、『ワクチン接種証明書』が授与されます。この証明書は、牙の生えた医療従事者が注射器を振り回している姿で描かれています。
このほかに、52個の中世の拷問器具がある(城内部の)拷問部屋に無料で入れるという特典もあります」
© BranDraculasCastle/Facebook
Priscu氏によると、国内の約400人のワクチン接種後、海外からも「不気味な雰囲気の中で接種を受けたい」という要望が何件も寄せられたのだとか。
現在100万人以上の感染者を抱え、6月1日までに500万人へのワクチン接種完了を目指すルーマニア政府を、100年を超えても人々を魅了する、ドラキュラ伯爵の“新たな牙”が後押ししている。
Top image: © Emily Marie Wilson/Shutterstock.com