本格フレンチレストランから生まれたのは、懐かしき昭和の味「ナポリタン」

何気ない一日に思えるような日が、世界のどこかでは特別な記念日だったり、大切な一日だったりするものです。

それを知ることが、もしかしたら何かの役に立つかもしれない。何かを始めるきっかけを与えてくれるかもしれない……。

アナタの何気ない今日という一日に、新しい意味や価値を与えてくれる。そんな世界のどこかの「今日」を探訪してみませんか?

ホテルニューグランド開業

日本のホテル黎明期に創業し、戦前・戦後を通して西洋のホテルスタイルを具現化した、日本のクラシックホテル。そのひとつが、港町・横浜に1927年12月1日に開業した「ホテルニューグランド」です。

そのホテルとタイトルにある「ナポリタン」。両者には切っても切れない深〜い縁があるのをご存知ですか?

大正12年の関東大震災で壊滅的打撃を受けた横浜市の復興のシンボルとして誕生した新生ホテル。その目玉のひとつが、「最新式設備とフレンチ・スタイルの料理」をキャッチフレーズに特に力を注いだというレストランでした。

パリの名門ホテルで腕を振るっていたサリー・ワイルを総料理長にすえ、さらには元帝国ホテル第4代総料理長だった内藤藤太郎をその補佐につけるなど、万全の布陣で望みました。

その甲斐あり、本格フレンチは好評を博しホテルニューグランドの厨房からは多くの名シェフが輩出されることに。そして、くだんのナポリタンもまた、この厨房から生まれた料理なんです。

考案者は、2代目総料理長の入江茂忠。

終戦後、アメリカの占領下にあった時代、ホテルニューグランドはGHQの宿舎として7年に渡り接収されていました。そこで米兵が茹でたスパゲッティに塩、コショウ、トマトケチャップだけで味付けしてランチや夕飯に食べていたそうです。

彼らの粗食を見かねた入江は、炒めたハム、玉ねぎ、マッシュルームをトマトソース(ケチャップの代わりにトマトピューレ)で和え、これをスパゲッティにからめ、パセリ、パルメザンチーズをふりかけたパスタを完成させた。

すでにこのときから、茹でたパスタを一度冷まして柔らかくするという、あのアルデンテの真逆の発想まで確立されていたそうだから、これこそナポリタン発祥の味ということになるんでしょう。

「スパゲッティ ナポリタン」と名付けられたこのメニューは、今でも本館1階のコーヒーハウス「ザ・カフェ」にて、当時のままの味を楽しむことができますよ。

ところで、日本生まれの和製パスタがなぜに「ナポリタン」と呼ばれるのか?

諸説ありますが、トマトソースを使ったパスタの発祥がナポリであることから。このナポリのトマトソースを使った調理法がフランスに伝わり、フランスでもパスタとからめて食されるようになったとき「スパゲッティ・ナポリテーヌ(Spaghetti Napolitaine)」と呼ばれていたからだとか。

Top image: © iStock.com/Wako Megumi
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