「ふつうの味」の飲食店の楽しみ方。

あなたが飲食店で満足したと感じるのは、どんな店に行ったときだろうか?

某口コミサイトでは「料理や酒の味、雰囲気、サービス、コスパ」などが評価軸になっているが、飲食店の評価軸ってもっと他にもあるんじゃないだろうか。

そう思ったのは、ある本を読んだことがきっかけ。

「インスタ映えする料理」や「絶品グルメ」がもてはやされる時代に、あえて「普通の味」であることをよしとするグルメ本。その名も『町中華とはなんだ』(立東舎)である。

「町中華」ってなに?

まずは「町中華」という言葉について。「町中華」は食のカテゴリーではあるけれど、町中華か否かを分ける明確な基準はない。本書から抜粋して紹介すると、以下のように書かれている。

昭和以前から営業し、気楽に入れて1000円以内で満腹になれる庶民的な中華店。単品料理主体や、ラーメンなどに特化した専門店と異なり、麺類、飯類、定食など多彩な味を提供する。カレーやカツ丼、オムライスを備える店も。大規模チェーン店と違ってマニュアルは存在せず、店主の人柄や味の傾向もはっきりあらわれる。(本書より/北尾トロ)

「まずさ」は個性である。

本書では、北尾トロ、下関マグロ、竜超という三人のライターが「町中華探検隊」と名乗って町中華を食べ歩き、その記録や研究を行っていく。普通のグルメ本であれば、美味しい店だけを紹介しそうなものだが、まずい店についても言及してしまうのがこの本の面白いところ。

うまくない。というか、かなりまずい。さほど難しい料理じゃないはずなのに、どうしてこんな仕上がりになっちゃうんだろう。言っちゃ悪いが、ボクが作った方がはるかにマシだぞ。おまけに、その店の料理はどれも安くない。ぶっちゃけ"お高め"の部類である。同じ料理が、大手チェーン店に行けばずっと安く食べられるし、はるかにうまい。(中略)

常識で考えれば、寿命の長い店と言うのは"うまい"か"安い"のどちらかである。でもボクらの入った店は、その両方が落第レベルなのにしぶとく生き残っている。あの店の常連たちは、たぶん「まずさも個性のひとつ」ととらえているのだろう。その思考は町中華探検隊のスピリッツと共通している。店屋物にうまさや安さを求めるのが人の常のはずなのに、あまりうまくなく、さほど安くもない代物を、わざわざ交通費をかけて食べに出かけているボクたち。けれども、そこに苦行感などはみじんもない。ボクらは様々なマイナス要素も含めて町中華探検を楽しんでいるのだ。(本書より/竜超)

これは私だけに限らないと思うのだけど、最近、行き当たりばったりで飲食店に入ることがめっぽう少なくなっている。事前にレビューサイトで確認しておいたり、雑誌に取り上げられていた店に行くなどの裏付けを取っておき、確認作業に出かけている自分がいる。

だけど、たまには偶然の出会いにかけてみるのもいいかもしれない。思いっきりハズレを引いたときは、本書のように「美味しくも安くもない店が、なぜ淘汰されずに残っているのか」なんて考えてみようと思う。

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