料理の味よりも大切なこと。書籍『「食」から考える発想のヒント』より

外国人シェフ最年少でミシュランガイドの星を獲得した松嶋啓介の近著がおもしろい。食を通した「発想のヒント」が散りばめられている。普段包丁を握らない人にこそ読んでもらいたい一冊だ。

以下、『「食」から考える発想のヒント』(実業之日本社)より、抜粋して紹介。立ち読み感覚でドーゾ!

必要なのはビタミンじゃない!?

ぼくは、知り合いと話しをしているときに「○○がうまくいかなんだけど、どうしたらいいかな?」なんて解決策を求められたりすることがよくあるんです。 それにはいつも「食」にまつわる知識を使って、相手に役立つと思う“発想のヒント”を伝えるようにしているんですね。

例えば、この間も久しぶりに会った友人が、「最近すごく疲れやすいんだけど、原因はなんだろう?」と聞いてきたので、「多分、家族や仲間と一緒に食事を楽しんでいないからだよ」と答えました。

すると、どうやらこれが図星だったらしく「年齢のせい」とか「運動不足」とか「必要なビタミン類」みたいな答えが返ってくるだろうと思っていた友人が、目を丸くしたんです。

彼の状況を聞いていると、普段から笑いの絶えない会話がなされていないようにぼくには感じて、それが日々のストレスを発散できずに、疲れやすくしている原因なんじゃないかって思ったんです。

そこで「家族や仲間と一緒に食事を楽しむこと」を、解決策のヒントにしたら、友人の「疲れやすい」体質は、少しずつでも改善するんじゃないかと。

前向きに生きるために
必要なもの

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ぼくにとって「食」とは、どんな内容にも通ずる、汎用性の高い「杖」のようなものになるんです。

相談相手に言えることは、「これが正解です」みたいなマニュアルめいた解答じゃなくて、「食」を杖にして得た、普通とは感じ方の違う“発想のヒント”なんです。

このヒントを手がかりに、自らが考えたら問題は解けるはず。発想力を身につけて未来を切り開いていくのは、現代に生きるひとりひとりの課題であり、ぼく自身の問題でもあるんですよね。このグローバル化した社会においてはこの“発想力”こそが、人生を前向きに生きる資源になるんじゃないかと考えているんです。

ぼくは、この「食」を杖にして得た“発想のヒント”から、発想力を豊かにし、閉塞して停滞した「今」を超えていけると信じています。

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Licensed material used with permission by 実業之日本社
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