人の住む土地ごとに「味覚」は異なる。書籍『「食」から考える発想のヒント』より
外国人シェフ最年少でミシュランガイドの星を獲得した松嶋啓介の近著がおもしろい。食を通した「発想のヒント」が散りばめられている。普段包丁を握らない人にこそ読んでもらいたい一冊。
以下、『「食」から考える発想のヒント』(実業之日本社)より、抜粋して紹介。立ち読み感覚でドーゾ!
暮らす土地によって
味覚が異なる
言うまでもなく味覚とは、人が味を感ずる身体的な感覚のことですよね。でも、実はこの味覚は世界共通ではないんです。
ヨーロッパでは「甘・酸・塩・苦」の四基味覚、中国では「甘・酸・塩・苦・辛」の五行味覚、インドでは「甘・酸・塩・苦・渋・辛」のアーユルヴェーダ味覚と、さまざまな違いがあります。
そして、100年以上前に、ダシに慣れ親しんだ日本人らしい発想で、日本の科学者がこれらの味覚に「旨」を加えたんです。
人の住む土地や文化によって味覚が異なるのは、なるほど当然のことなのですが……。
現在では「甘・酸・塩・苦」の四基味覚に「旨」を加えた五基本味が、科学的に妥当性をもった味覚の解釈とされるようになっています。
ちなみに、この「旨味」が国際的に認められ始めたのは、うま味成分のグルタミン酸を感知する、グルタミン酸受容体が舌の味蕾(みらい)にあることが証明された2000年以降。ごく最近のことだったりするんですよね。
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