練馬に引っ越す理由はコレかも。 石神井に毎日行きたい本格ナポリピッツァ屋があった

ナポリピッツァは、どことなく保守的なものだと思っていた。

ナポリは、イタリアのなかでもとびきり陽気な地方だけど、ピッツァを食べるならマルゲリータかマリナーラの2種類。原料の基準も決まってるっていうくらいだから、よっぽどだ。

ところが、東京・練馬区の名店「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」は違った。EUの条約で決まっている小麦粉を北海道の農家と作り上げ、旬の練馬の野菜まで散りばめている。

武蔵野台地から
“おいしさ” が集まる

©2018 inoue hiromu

実は練馬の野菜や果物などは、東京23区内にありながらも一線級のおいしさを誇っている。それは、風土に合っていることや、運送にかかる時間や加工が省略できること、そしてなにより豊穣な土地であり、実は農業に適した場所であることが主な理由だ。

「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」の代表であり、ピッツァイオーロ(ピッツァ職人)の岩澤正和さんは言う。

「僕自身も、都心で飲食店を切り盛りしていたのに練馬に来たのは、この街にピザ窯がなかったからというのと、練馬の野菜が魅力的だったからです。僕らは練馬より少し範囲を広げて、武蔵野台地の野菜を取り寄せていますが、色々なメニューに使っているので、どれを食べてもおいしい野菜が味わえると思いますよ」

もっとも宣伝効果があるのは
「農家のおばちゃん」の自慢話

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「ピッツァに使っている小麦粉は、北海道の江別製粉に依頼した『100%北海道』という品です。イタリアでも国外から持ってきた粉をミックスして規定を通しているようなのですが、僕は日本で作りたかった。輸出入するとなると時間もかかるし、加工段階でアレルゲンになることもある。自分に子どもが出来てからアレルギーに敏感になりましてね、国内産にこだわっています。毎年、規定に合致した日本産の小麦粉とトマトとチーズを持って、イタリアの大会にも行っているんですよ」

地産地消、と言葉で言うのは簡単だが、なぜ地産地消なのか。そこまでしっかり説明できる店は少ないし、「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」の場合は、もう当然のこととして捉えているようにも見える。

「うちは宣伝とかしてないんです。農家の口コミが一番大事。なによりも集客力がある。農家のおばちゃんが食べに来て『うちの野菜を使ってくれてるんだ』って、自慢してくれる。そこから人を伝って、人を集めてくれる」

と岩澤さん。

この店を広めてくれたのはお客さんだけでなく、もちろんメディアでもない、と。一過性ではない地元とのつながりを第一に心がけているからこそ、自信を持ってそう言えるのだと思う。

2006年世界1位と
2015年世界2位の共演

©2018 inoue hiromu

そんな「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」の名作ピッツァがこちら。

・2015年世界ナポリピッツァ選手権第二位受賞
練馬N.M.P(自家製ソーセージ、武州豚のロースト、練馬の菜っ葉ソテー、燻製モッツァレラ)

・2006年世界ナポリピッツァ選手権第1位受賞
マルゲリータ練馬S.T.G(S.T.Gトマト、バジリコ、カンパーニャ産水牛モッツァレラチーズ、24ヶ月熟成パルミジャーノレッジャーノ、EXバージンオリーブオイル)

のハーフ&ハーフ。ランチメニューで、人気の2枚を贅沢に1枚に閉じ込めたものだ。メニューには載っていない。

「食べればわかると思います。生地の “あたり” が優しいでしょう?」

と岩澤さん。これが北海道で育てた「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」仕立ての小麦粉の力。そして、武州(武蔵国のこと)豚のローストの濃厚な味に、超ジューシーなトマト。

この世の幸せとは、このことかもしれない。

©2018 inoue hiromu

ピッツァは400度以上の高温に熱せられた窯の中で、ピッツァイオーロが焼き上げる。

窯の中は部分的に温度が異なるように薪をくべられ、最適なタイミングで位置を移動しながら、わずか数分で焼き上がる。まさに職人技だ。

©2018 inoue hiromu

練馬産のものは、たとえばこんなところにも。東京の練馬区内でいちご農家を経営する「加藤農園」のいちごからできた生酵素を使用した「加藤スカッシュ」。

「いちごが旬の時期は、加藤農園さんのいちごでドルチェピッツァを出したりもしています。このスカッシュは商品になりづらい傷のあるいちごを使っていて、無駄なく生産物を消費しているものです」

と岩澤さん。ピッツァによく合う。

全員が、世界的職人

©2018 inoue hiromu

「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」は、日本が誇る名店だと言える。その理由はもちろんピッツァがスゴイ、ということもあるけれど、この店で働く全員が世界に誇れる職人であることだ。

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ピッツァイオーロは、岩澤さんだけではない。こちらは「ナポリピッツァ職人世界選手権」スタジィオーネ部門で第2位に輝いた野間さん。

©2018 inoue hiromu
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パティシエの野澤さんが作るドルチェには、固定ファンも多いそう。

©2018 inoue hiromu
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「都心のお店から練馬にやってきたスタッフが多いのですが、みんなここのライフスタイルに価値を見い出してくれました。子どもが生まれて都心を離れたりね。この石神井という街は、とてもポテンシャルが高いんですよ。

あと、職人ばかり注目されがちですけど、僕はサービスマンを重要視しています。職人は、なり手がいます。一方のサービスマンはなかなか育たないもので、夢もあまりない。業界としてその地位を底上げしたいんですね。いまは、高校生に来てもらって実体験してもらっています」

住んでみて良かった
「練馬」の本物の味

練馬は、残念ながら住みたい街ランキングには入らない。でも岩澤さんはこう言う。

「地主さんたちの言葉を聞くと、たとえば吉祥寺のように商店だらけにはしたくない、と言うんです。練馬は『住んでみて良かった』というランキングでは上位に入っていますが、これは住民たちが華やかなものを求めてなくて、本物を大事にしてくれることに紐づいていると思います」

そんな “本物” として、練馬で大事にされている「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」。練馬が自慢できる、名店だ。

「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」

住所:東京都練馬区石神井町2-13-5 グリーンハイム 1F
TEL:03-5923-9783
営業時間:12:00~15:00(LO 14:30)、18:00~22:00(LO 21:30)
定休日:毎週木曜と隔週不定
公式SNS:https://www.facebook.com/PizzeriaGtaliaDaFilippo/

Top image: © inoue hiromu
企画協力:ねりま観光センター
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