練馬産のフルーツや野菜が、東京の「食」を面白くする

最初にビルの屋上でマイクロファームを始めたのは、ニューヨークだっただろうか。

2010年代に入って、都心における農業が注目された。輸送費がかからないこと、先進国での都心の空気が浄化されつつあること、食品業界で言うところの「フードマイレージ」に乗っ取った考え方だ。

そこで、今後も世界的に注目を集めるであろう地域が、東京の「練馬区」である。

なぜ、東京23区内に
こんな農地があるんだ?

©2018 加藤農園

練馬の住宅街でいちごを中心に農業を営んでいる「加藤農園(加藤いちご園)」の加藤さんは言う。

「この加藤農園にも多くの国から視察の方が来ますが、みなさん一様に驚かれるんですよね。なんでこんなに広い農地が東京都内にあるのかって。世界のほとんどの都市は、中央の城などを中心に住宅が広がって、そのまわりに農地が開墾されたという歴史をたどってきましたよね。でも東京はどちらかというと農業と都市が近かった。江戸時代も、練馬の百姓が江戸に野菜を売りに行って、肥料として人糞をもらって帰ってくる、っていうエコシステムがあったくらいですから」

たとえばニューヨークのブルックリン周辺に、大きな畑は見当たらない。マイクロファームは根付いているが、歴史をもった農地は海外の都市中心部にはほとんど無いのだ。

「練馬は昔から農地でした。うちも200年の歴史があると銘打ってますが、じつは木簡の字が読めずに正確にさかのぼれないだけで、だいたい400年くらい前から加藤農園はあったんじゃないかなと思ってます」

それだけに、練馬にはいくつもの加藤農園があり、「他の加藤さんにいちごの質問がいってしまうこともあって……」と加藤さん。

でも、芋は手で掘る

海外の都市中心部にあるようなマイクロファームから見ると大きい練馬の農地も、東京以外の農業従事者から見れば、 “かなり小さい”。

「よく言われるのが、芋を手で掘っていること。北海道で芋を手で掘ってたら間に合わないでしょうが、ここに芋掘りの機械を入れたら費用対効果が合わないですから。今どき芋を手で掘ってるなんて! と驚かれるんですが、練馬の農業なら普通なんです」

練馬の「食」が
盛り上がりつつある理由

©2018 inagaki masanori

練馬で農業を営むことは、簡単ではない。

「地方の農家なら新しい作物に挑戦するときなどに設備投資費を借りて、作物を農協に納める。練馬にはそういったエコシステムがなく、むしろ納め先も個人で開拓していくような形です。だから練馬は、農家からワイナリー、ピザ屋や和食店まで、すべてが繋がっているんです」

と、まさに都産都消の土地なわけだ。

「シェフがランチタイムの前にイチゴを摘みにきて、その日に獲れた完熟イチゴで作ったドルチェが出せるなんてことはこの距離感じゃないとできないですし、それは都心のレストランでも出来ないはず。だから練馬は、農業で盛り上がるというか、食ですごく盛り上がりつつありますね。

ミシュランの星を獲っているお店も、練馬では増えてるんですよ。この前も、練馬産のソバで蕎麦屋をしている店が獲ったばかりです。ミシュランはその土地でしか食べられないものを重視してその価値を認めているのですが、練馬もその『食』の土地に入っています。こんなにおいしいものが食べられるなら、と言って練馬に引っ越してきた友人が、僕の周りにも2人いますよ」

と加藤さん。

「練馬のいちご」だからこそ
味が勝負

©2018 加藤農園

よく考えてみれば、練馬で育った農産物がおいしくないわけがない。とてもわかりやすい話だ。水が良く、日当たりがよく、気候に優れているからこそ今ある都心は成長してきたわけで、東京は実は農業に適している。

加藤さん曰く「100年くらい前の調査では、もっとも米が獲れた土地って、上野のアメ横あたりらしいですよ」とのこと。価値ある農産物を、適正な価値で買い上げてくれるシェフがいる地域。

大量生産ではなく、少量生産だからこそかけられる手間暇と、豊穣さ。いちごをメインで育てているが、大根、人参、さつまいも、トウモロコシなども少量生産している。

©2018 inagaki masanori

「おいしくなかったらやめると思います。このあたりの人たちはみんな繋がっていて、このイチゴは加藤農園のイチゴだって分かって使ってくれているので、やっぱり味が勝負。味を落としたら練馬の未来にも申し訳が立たない」

と言い切る。

そんな加藤農園のイチゴは、時期になると一切廃棄が出ないほど飛ぶように売れる。練馬近辺のマルシェや、直売所、またはレストランなどで味わってほしい。

「加藤農園(加藤いちご園)」

住所:東京都練馬区三原台3-7
公式HP:http://www.tokyo-ichigo.com/

Top image: © inagaki masanori
企画協力:ねりま観光センター
僕のなかのワインのイメージと言えばやっぱりまだ、高級で、ハレの日のもの。でも、今回訪れた「東京ワイナリー」は真逆。東京ワイナリーがあるのは、近隣にコインパ...
東京・練馬区にある「豊島園」に向かって歩いていると、おいしそうな昔ながらのかき氷屋さんを見つけた。店内に入ると「カレーとかき氷のセット」が目に入った。辛み...
「このピッツァのために、石神井に住める」。そう本気で思った。「ピッツェリア ジターリア ダ フィリッポ」は、東京都・練馬区にある名店だ。EUの条約で決まっ...
東京の下町風情が残る観光地として人気の「台東区・墨田区」。このエリアの「休憩スポット」としておすすめなのが、銭湯。台東区と墨田区を合わせると、50を超える...
2017年の「fake news(フェイクニュース)」につづき、イギリスのコリンズ英語辞典が選んだ2018年のワード・オブ・ザ・イヤーは「single-u...
仲の悪い関係が続いているラッパーの50セント(50 Cent)とジャ・ルール(Ja Rule)。彼らのビーフはアメリカのメディアで度々取り上げられるのです...
「銭湯特区」と呼ばれる、東京都南部に位置する大田区。ここは、東京23区内で最も銭湯が多い街です。40を超える銭湯の中から選んだ、東京・大田区の「天然温泉」...
ビジネス街であり、古き良き商店街もあり、洒落たベイエリアもあり、新幹線や飛行機で移動するときのハブでもあり、古くは東海道品川宿として旅の要地でもある「東京...
東京都内で最も銭湯が多い大田区と並んで、温泉が「掘ったら出る」と言われている「江戸川区」。特に荒川沿いで黒湯が湧いていて、天然温泉施設が船堀地区に集中して...
疲れや悩みを取り払って、リラックスしたい日もありますよね。そういう時は、温泉にザブーンと入ってみるのも良い方法のひとつだと思うんです。ここでは疲れも悩みも...
宿泊客同士のコミュニケーションを重視するソーシャルホテルのなかでも、アメリカ・マイアミに2ヵ所ある『Life House』のシステムはとくにおもしろいです。
日本一若いいちご農家こと、たいぴー夫妻。宮崎県の日南市へ移住して「くらうんふぁーむ」という農園を経営しているんですが、約2年前から、農家1年目にも関わらず...
関東地方にある「国立公園」の注目ポイントは、ずばり「山」です。美しい山々を前に景観を楽しむも良し、ハイキングで汗を流すも良し。東京近郊にありながら、「山の...
徳川家康をはじめ、歴代将軍たちに愛された城南五山のひとつ「品川・御殿山(ごてんやま)」。御殿山庭園に隣接する「東京マリオットホテル」では、四季折々の自然を...
甘みがあり、ご飯に乗せて食べるとおいしい「佃煮」ですが、だいたいメインのおかずは他にあります。佃煮は、あくまで引き立て役。とはいえ、東京の家庭の食卓には欠...
一流シェフ直伝の料理を提供してくれる『Moley Robotics』社が開発中の調理ロボット『Robotic Kitchen』。再現できるレシピ数は200...
戸越銀座商店街や青物横丁商店街などがあり、何かと街ブラが楽しめる街、東京・品川区。がっつりランチやディナーを楽しむのもいいけど、ここでは「TO GO」(テ...
仕事を頑張る場所として、もしくは子育てを頑張る場所として。「品川区」を生活の拠点にしている人にとっては、自分を元気にしてくれる「きっかけ」がとても大事。そ...
東京・品川での食事と聞くと、ビジネス街のイメージが強いので、ラーメンや働く人たちのサク飯を思い浮かべがち。でも、羽田空港や新幹線などの交通の要所なので、ち...
東京都品川区には、企業が運営する希少な商品や、ちょっと変わったものが並ぶミュージアムがあります。「建築倉庫ミュージアム」「自転車文化センター」「ソニー歴史...
「うなぎの聖地」と言われる浜松には、関東風と関西風のお店がちょうど半分ずつあるそうです。なかでも明治25年(1892年)に浜名湖産うなぎの行商から始まった...
同じ日本と言えども、関東と関西では食文化に大きな違いがあることはご存知のとおり。食を通して異文化体験ができてしまう。では、その違いってどこにあるかちゃんと...
どうやら10月6日〜8日の3日間は、台湾のほうから日本に来てくれるみたいです。しかも会場は東京タワーのお膝元。夜はライトアップされて夜市で食べ歩く気分なんて
ノスタルジックな空気と現代の洗練された雰囲気が溶け合う、東京・品川「西小山」。そんな街角に漂ってくるバターの豊かな香りのもとは、焼き菓子専門店「cuiss...