大泉学園駅から徒歩11分。東京にもマイクロなアーバンワイナリーがあった

広大なブドウ畑から作られる、一杯のワインを、極上のチーズと一緒に——。昔よりは日常的になったとはいえ、僕のなかのワインのイメージと言えばやっぱりまだ、高級で、ハレの日のもの。

でも、今回訪れた「東京ワイナリー」は真逆だった。東京ワイナリーがあるのは、近隣にコインパーキングすらないほど、ザ・住宅街とも言える練馬区の大泉学園。西武池袋線・大泉学園駅からは徒歩10分ほど。

そんなところで、ワイナリーだと?

練馬の野菜とのマリアージュを
楽しんでほしい

© 2018 inagaki masanori

「東京ワイナリー」がオープンしたのは、4年前の2014年のこと。この出来事はワイン業界を震撼させたのだけれど、それはズバリ東京(しかも23区内)にあるからだった。なんせそれまで、東京にはワイナリー自体が存在していなかったからだ。

「元々、大田市場で野菜の仲買人をしてました。だから練馬の農家とも仲が良くて、練馬の野菜がおいしいこともよく知っていたんです。どうしたらもっとおいしく食べてもらえるかな、と考えていたんですよね。ワインも農産物100%で出来ているものだから、野菜とのマリアージュを楽しんでもらえるかなと思って、練馬でワイナリーを開くことにしたんです」

と、醸造人であり、東京ワイナリー代表の越後屋美和さん。

よくできるね、って言われますが
本当に大変です(笑)

© 2018 inagaki masanori

「この場所は、元は新聞配達の拠点でした。よくこんな小さな作業場でワイナリーができるね、なんて言われますがホントに大変なんですよ。ワインは、法律で最低生産量が決まっているので、この小さなワイナリーから6000リットルを作らなくちゃいけないんです。8〜11月に醸造するんですが、その時期はとても忙しくて取材は全部お断りして、イベントにも出れず日夜ワインを作ってますね」

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クラフトビールのブームまっただ中、こういった小さな醸造所も珍しくはない。ただ、ワインの場合はそう簡単に6000リットルを醸造して売りさばくルートを作れない。そのハードルを乗り越えるには、ボランティアの方々の協力があった、と越後屋さんは言う。

「モノづくりの愉しさを地域で共有できています」

ちなみに取材日は、ボランティアの人とワインから澱(オリ)を抜く作業をしていた。

小さいからこそ
「旬のワイン」が出せる

© 2018 inagaki masanori

聞けば、そんな小さなワイナリーだからこそ、旬のワインが提供できるのだと言う。

「東京ワイナリーでは、いろんな種類のワインを作っています。早く出せるワインと、熟成させるワインを組み合わせて生産しているので、その季節ごとに良いワインを良い状態で出せるのが、うちのようなワイナリーの魅力かもしれません。たとえば夏ならスパークリングとか、さっぱりしたものがおいしい季節には白ワインだったりとかね」

「ワインは熟成させたものこそ至高」だと思っていた僕の素人考えを覆された。旬の時期にフレッシュな状態でいただくことも、ワインをおいしく飲む秘訣なのだと。

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そんな旬のワインは、東京ワイナリーなら量り売りで買うことができる。リターナブルの瓶でもいいし、ペットボトルに入れてもらうこともできる。

「日本のワインは、優しいんです。家庭の料理とよく合いますね。味噌とか醤油とか、おなじ発酵食品と相性がいいんです。ワインは、その土地の気候や風土に合うものになりますからね」

越後屋さんのひと言にあおられて、僕も700ミリリットルくらい詰めてもらい、自宅で野菜炒めと共に頂いた。酸化防止剤が入ってないからか渋みがまったくなく、いつもは「ワインの渋みが苦手」という妻も、ゴクゴク飲んでいたのには驚いた。

ハネムーンで訪れたイタリアではワインの量り売りが当たり前だったけれど、東京で探すとほとんど見つからない。イタリア人に嫉妬したことをふと思い出した。

じつはとてもレベルが高い
「都産都消モノ」

地方の農家は、そのほとんどが農協から資金を借り、設備投資や苗を揃えて、農協に青果をおろす。大変だが、ノウハウは成り立っている。しかし練馬で農家をする場合、土地も高く、農家を続けること自体が大変で、だからこそ東京の野菜は東京なりの工夫がされていて、おいしいのだそうだ。

「東京の農業は、隙間にあるんです。大都市のなかにあることで、農薬をあまり使わないようにできたり、少量生産だけに手をかける時間が増えたりと、おいしい野菜ができる環境にあります」

ここ東京ワイナリーにはカフェ「アトリエ シュクレ」も併設されていて、それこそ東京の「野菜とワイン」を一緒に楽しむことができる。

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こちらは、取材時のランチメニューにあったガレット。豆のスープに、トマト、アボガド、オクラ……どれもビックリするくらいおいしい。「田舎のおばあちゃんちの畑で採れたトマト」もいいけど、東京のトマトだって全然負けてなかった。

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「東京ワイナリー」代表の越後屋美和さん

この日はクルマで訪れたので、残念ながら一緒にワインをいただくことはできなかった。文字通り、ノドから手が出るほどワインを飲みたくなった。

野菜を食べに地方へ行こう、そんなコンセプトも分かるけれど、いや、一旦東京の練馬区もチェックしてみよう。おいしい野菜とおいしいワインがあるじゃないか。

「東京ワイナリー」

住所:東京都練馬区大泉学園町2-8-7
TEL:03-3867-5525
営業時間:
・ワイン販売:11:00〜16:00(不定休 ※見学や購入希望の場合は要連絡)
・野菜とワインの昼呑み:13:00〜17:00(土日のみ ※8〜11月の醸造繁忙期を除く)
・アトリエ シュクレ:11:00〜15:00[LO 14:30](火、水、金、第4土曜日営業 ※第4土曜日のみ17:00まで)
公式HP:http://www.wine.tokyo.jp/
公式SNS:Facebook/Twitter

Top image: © inagaki masanori
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