品川・原美術館の“必食”ケーキ。「カフェ ダール」の食べるアート

イメージケーキ、をご存知だろうか。

思わず写真を撮りたくなる独創的なビジュアルのそれは、東京・品川の原美術館にある「カフェ ダール」で提供されている。

イメージケーキって?

©2018 相原舜
ウィリアム J. オブライエン「無題」2007年 © William J. O’BRIEN

このカフェでは、美術館で開催されている展覧会の作品やその一部、また、展覧会そのもののイメージを、ケーキとして表現している。

取材時のイメージケーキは88作目のもので、そのときに開催されていた「現代美術に魅せられて — 原俊夫による原美術館コレクション展」に展示されていたウィリアム J. オブライエンの作品を模したものだ。

©2018 相原舜

チョコレートムースに、フランボワーズのソースが爽やかに絡む。ミニシューも口当たりが軽く、アプリコットの酸味とのバランスが絶妙。

イメージケーキは
謎解きのようでもある

イメージケーキの制作が始まったのは、90年代の初め頃。当時は定例化していたわけではなく、不定期に提供していたイメージケーキが好評を得て、現在のように展覧会ごとにケーキが作られるようになったという。今では、このケーキを楽しみに原美術館に通う人もいる。

現在のシェフは、もう20年近くもイメージケーキをはじめとするカフェのメニューを担当している。展覧会の前になると資料を読み込み、構想を練っている。モチーフがアート作品となると複雑な意匠のものも多く、時には型作りから行う。そんなアート作品を「スイーツ」という新たなアートのかたちに築き上げるシェフの技巧と手腕には、ため息が出る。

写真提供:原美術館

「ヘンリー・ダーガー —夢の楽園—」のイメージケーキは、世界観をそのままに、食用の花を使用して作られた。

写真提供:原美術館

「蜷川実花 :Self-image」のイメージケーキは、展覧会のフライヤーに掲載されていた薔薇の作品をモチーフにしたもの。シャーベットで作られた薔薇は溶けるとソースになる、という儚さにもぐっとくる。

写真提供:原美術館

驚いたのは「杉本博司 ハダカから被服へ」のイメージケーキ。

一見ふわっとしたヴェールのようなものが被せてあるのだが、「脱がせてみてもいいかもしれません」とヒントを与えてサーブするという、カフェスタッフの粋な計らいも。

写真提供:原美術館

これらのイメージケーキのように、どの作家の展覧会かどの作品がモチーフかわかりやすいものもあれば、まるで謎解きのようなイメージケーキもある。

写真提供:原美術館

たとえば、「ジム ランビー:アンノウン プレジャーズ」のケーキは、展示作品のディテールを切り取ったもので、天井からぶら下がるオブジェにコラージュされていた雑誌の切り抜きの目をイメージケーキとして採用したという。

カフェと展示の往復で
「答え合わせ」

©2018 相原舜

「カフェ ダール」は原美術館の中にあるため、展示会場への再入場の必要がない。だから、イメージケーキを食べたあとに、なにがモチーフだったのか答え合わせをしに改めて展示を見てみるのも面白い。

展示を見てすぐに帰るだけではなく、季節に合わせた味覚も視覚も美味しいスイーツから、いつもと違った視点を借りて作品を楽しんでみてほしい。

手入れの行き届いた中庭を眺め、イメージケーキに舌鼓を打ちながら、新たなアート体験ができるはずだ。

「カフェ ダール」

住所:東京都品川区北品川4-7-25(原美術館内 ※カフェのみ利用の場合も要入館料)
TEL:03-5423-1609
営業時間:11:00〜17:00(LO 16:30)、水曜のみ11:00〜20:00(LO 19:30 ※祝日を除く)
定休日:月曜日(祝日の場合は翌日)、原美術館の休館期間
公式HP:http://www.haramuseum.or.jp/

Top photo: © 2018 相原舜
取材協力:品川区
TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。