人間味を排除したトリップアドバイザー現る【動画あり】

科学技術の発展は近い将来、人間から“選択”の機会を完全に奪い去ってしまうのだろうか。

動画は今年6月、アメリカの旅行会社「Book Human」が公開したCM。当時、新規感染者数が2020年4月以来もっとも減少し、長い自粛期間からいよいよ解放されようかという気運が人々のあいだに生まれていた頃だろう。

そんなタイミングに打ち込むCMとあれば、本来ならばイケイケなテンションになりそうなものだが……内容はその真逆をいく、なんとも不気味なものだった。

旅行先やプランを決めるとき、ユーザーの趣向や属性、検索行動などのデータに基づいた旅先を提案するという業界のスタンダードに疑問符を投げかけた「Book Human」。あえて、トリップアドバイザーにアンドロイドを起用し、人間味を一切排除したカタチでの提案をCMとして打ち出した。

そこには、旅情もなければ旅するワクワク感のかけらさえない。

© Global Travel Collection / YouTube

「ワタシはあなたにとってあらゆる選択肢を検討しました。いかがです?完璧なホテルではありませんか? あなたのプロフィールはデータ解析の結果、過去の宿泊客とも完全に一致します。なぜなら、ワタシはあなたの行動をすべて見て、あなたの声をすべて聞いているのですから。あなたのことはなんでも知っています。あなたとそっくりな経歴をもつ1000人の人たちのことも。あなたにとって特別な場所になるはずです」

なお、動画に年齢制限が設けられている。

残虐なシーンが登場するわけでもお色気なイメージが流れるわけでもない。そこにいるのは、無機質で表情のないアンドロイド。ただ、それだけ。

いま、同じように旅行熱が高まる日本において、我々はなにを基準に旅の目的地を決めているんだろう。あるいは、すでに選ぶことすら“彼ら”に一任してしまっていたり?

AIの進化、Web行動データに基づくターゲティング……。パーソナライゼーションが必ずしも個々人にとって最適なものとは限らない。当たり前のことだけど、そこに人々の意識をいま一度向けさせる。そこにこの動画の意味があるのではないだろうか。

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TABI LABO この世界は、もっと広いはずだ。